借家権の補償はしてもらえないか

 店舗を借りるとき、五〇万円の権利金を支払って、借受けたました。五年目に、店の前の道路の拡幅工事が行なわれることになって、家屋が取り払われることになり、したがって立ち退かねばならぬことになりました。借家権の補償というものはあるものかどうか。もし借家権の補償がなかったとしたならば、権利金の補償だけはしてもらえるものなのでしょうか。

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 本来、借家権というのは、貸主に対して約束通り使用させろと主張する権利であって、他の第三者に対して、居住させろと主張することはできません。
 だから、道路という公共事業の遂行のためとはいえ、そこに立退き問題が起きたとしても、起業者(ここでは、道路事業を施行する役所)に対して、代わりの家を提供しろと請求はできません。また逆に、かりに提供されたとしても、果たして、それが被収用者にとって、役立つかどうかは保障できないことです。
 ところで、現行土地収用法上、借家権の収用ということが、あるかどうか、という基本問題だけれども、実はないのです。昭和三九年二一月、土地収用法を改正して、借家権と漁業権の収用を認めようと建設相に提案しました。その後の審議の結果、四二年の改正法で、漁業権の収用は採択されましたが、借家権の収用は断念しました。それは、借家の明渡しというのは、一般民事裁判でも容易に実現しないのに、傍系の収用法が、借家権の収用を規定しても、問題が紛糾するだけだという、事務当局の進言があったからだといいます。
 それでは、具体的には、借家人はなんの補償も受けられないのかということになります。収用法全体の構造としては土地収用というのは、土地が必要なのであって、建物や借家権は欲しくないという考え方なのです。だから建物もお移り願うと同時に、借家人も、その家と一緒におひき移りを願えば足りるという考え方なのです。そこで、借家人の移転料は家主の建物移転に含めて、一括支払いをすれば足りるという考え方で、家主に渡していたものです。
 ところが、家主の中に、ズルイのがいて、移転料の分け前を渡さないで、公権の発動からきたのだから、仕方がないではないかといってネコババをきめるので、その事実を調査した行政管理庁から、一括支払いはいけないと、関係各省に通達がされました。もともと、収用法は、個別払いを建前としているのだから、それが本当なのだが、収用法六九条に「各人別に見積ることが困難であるときは、この限りでない」とあるので、面倒な手数を省いて、この規定を利用して、一括払いをするわけです。
 権利金の問題ですが、借家権の中に、当然含まれるというわけでなく、また権利金にも立地条件的なもの、暖簾代的のもの、前家質的なものがあるので一概にはいえませんが、本来は家主、借主間のものであるから、いつでも起業者が補償するというわけにはいきません。ケースバイケースの問題です。

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