隣りの庭から雨水が流れこんだときは

 梅雨期に入ったある夜、大雨が降り続きました。その翌朝のこと、A君が庭先に出てみると、庭の一部に大きな水溜りができて、せっかく丹精して作った花や野菜が、滅茶滅茶になりそうなのを、発見しました。
 A君自身が雨の中を庭に降りて詞べて見ると、それは、隣家のB君との境界に当たるところに、コンクリートで一尺位の高さの塀が作られてあり、それが丁度A君の庭の排水を阻んでいるためでした。
 あとでわかったことですが、A君の庭より幾分低めになっているB君の庭は、大雨の降ろ度に、A君の庭から流れてくる雨水の奔流に洗われて何かと都合が悪いのです。
 悩んだB君は遂に意を決して、A君の庭から雨水が流れてくる通路を阻塞するためひそかにコンクリートの塀を作ったのですが、はからずも昨夜の大雨に際し、この塀がA君の庭からの流水を完全に阻む役目をB君のために果たしてくれたのです。
 自分の庭が水浸しになったのが、隣家のB君の塀のためだと知ったA君は、カンカンに怒ってB君に対し、その塀を即刻取り除くよう、要求しましたが、B君はこれに応じません。遂にA君は裁判所に持ち出しこれを訴訟で争うことになった。果たして、この訴訟はどちらが勝つでしょうか。

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 こういった場合の紛争解決の手懸りは民法です。民法には相隣関係といって、隣り合った土地の所有者が、お互いに土地をスムーズに利用し合えるようにという趣旨の規定があります。したがって、A君の場合も、この規定のなかから、自分に有利な条文を拾い出して、B君と話合いをすすめることが、問題解決の一歩です。
 民法二一四条に「土地の所有者は隣地より水の自然に流れくるを妨ぐることを得ず」とあり、この規定から結論すれば、特別の事情のないかぎり、A君の勝訴は確定的のようです。
 裁判官もB君に対し和解を勧める段取りになるだろうと想像されます。これだけはっきりとした解決方法が示されているから、当然ともいえます。
 また、A君はB君に対して、この雨水の流入のためにうけた損害、たとえば草花や、野菜がメチャメチャになってしまったことによってうけた損害、あるいは流水排除のために工事人に支払った手間賃、そのほか、これによってうけた損害を下田君に対して賠償させることができるわけです。
 しかも、この場合は、土地の工作物の設置または保存に瑕疵あることによって生じた損害だから、塀の持主のB君に過失がなくても、その賠償義務をまぬが れることはできないのです。
 B君としては、判決までいかずに。早く和解をして、ほんとうに雨降って地固まるという円満な解決をするのが得策でしょう。

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