毎日通勤する道を柵でふさがれたら

 A君は今朝出勤しようとして家を出た途端、完全に驚かされました。それは、いつも通る小路の入口に鉄条網が張られ、しかも通行禁止という立札さえ張られているのです。
 慌てたA君は、鉄条網を破って強引に通行しようとする勇気も時間もないので、一応家へ引き返し裏口から隣家の裏を通らせてもらいようやく往来へ出て、とにかく、会社の出勤時間には間にあいました。しかしA君の心中は穏かではありません。出入口をふさがれては、それこそ文字通り袋の鼠。何とかしなければならぬと考え、会社の休みを利用して最寄りの警察へ出かけて相談しました。
 警察の担当官から十分の指示を与えられたA君は、会社の帰途、例の小路に通行禁止の標札を張った人の家を訪ねて、自分はこの小路を通行する権利があると主張しました。
 この通行禁止の標札を張った人は、あの小路を含めてあの辺の土地一帯を前の地主から最近に買い受けたのですが、A君の主張を全く認めません。そこでA君はこれを調停に持ち込んみました。A君の主張は正当なのでしょうか。

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 これは民法二一〇条一項が規定している通り、A君の主張が正当なことは明瞭です。
 新しい地主も初めは、頑強にA君の通行を否認し続けたましたが、法律の明文が規定しているのだからかないません。結局のところ、つぎの条件で調停が成立するでしょう。
 一、従来の小路は、A君の家の者が公路へ通ずる唯一の、そして最も近い路であるから、A家および関連ある者の通行を地主は認めます。
 二、ただし、その小路は歩行するだけに必要な幅だけを使用し、周囲の土地に極力損害をかけない責任をA君が負うこと。
 三、この通行を認めたことにより地主のこうむる損害、たとえば通行のために農作物を栽培できないとか、他人に貸して地代を取ることができないとか、そうした損害に対してA君は、一定の償金を地主に払うこと。
 これでようやく鉄条網は取り払われ、勤勉なA君は毎日その小路を通って会社へ通って行くことができることになるわけです。
 また、こんな場合、急速に解決する手段として、裁判所に対し、通路の妨害排除ならびに将来の通行妨害の禁止を求める仮処分の申請をするのも一策でしょう。この処分を出してもらうためには、一定の保証金の供託を命じられますが、裁判所は迅速に通行のため工作物を撤去し、通行を妨害してはならないという仮処分命令を出してくれます。
 そして現に、一〇万円の保証金を立てさせて、幅三尺の通路に設けられたブロック塀の撤去を命じた仮処分も出されています。
 以上のような関係が「相隣関係」であり、これは大局的見地から認められる所有権の内在的制約といえます。

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