賃料不払いでも契約解除にならないとき

 AはBに長い間賃貸している家の家賃が相場にてらして安いと思っていました。家賃の値上げを請求してもいい返事を貰えません。そこで不動産鑑定士に依頼して家賃の鑑定をしたところ、現行家賃は、評価にもとづく相場より三割も低いことがわりました。
 そこでAは、弁護士に依頼して内容証明郵便で家賃を現行より三割アップする、交渉期間中未納の家賃三か月分を持参すること、持参しないときは契約を解除する旨通告しました。
 ところがBは、交渉期間中の未納家賃の持参もしないで、逆にAが取りに来ないのが悪いといって、いきなり供託してしまいました。
 Aとしては、裁判をしても長くかかるので、従来便宜的に取りに行っていたものであるし、供託したものを取り戻して家賃を持参するよう、その代わり値上げはとりやめるが賃貸期間を二年間とするという内容証明を出しました。それでもBは供託をくり返しているので裁判をせざるを得ないのです。このような家賃滞納がある場合、Aは契約を解除して、Bを追い出すことはできないのでしょうか。

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 借地借家法の建前からして、一度賃貸してしまうと、明渡しを求めることはむずかしい。それというのも、借地人、借家人は、地主、家主にくらべて弱い立場にあるところから、これを保護し、明渡しを求めるには、みずから使用するかその他正当な事由がなければならないのです。
 しかし、地代家賃の滞納があるときは形ができているので比較的明渡しを求めやすい。しかし裁判は生きものであるので、形式がととのっていても、絶対勝訴判決を受けるとは限りません。Aの場合も、家賃の滞納と催告の期間内の家賃を持参しないという形式は具備されたけれども、解除権の行使が信義公平の原則に反するものとして敗訴になったケースです。
 理由は、Bが家賃を滞納したのはAが家賃の値上げの交渉をしていた期間であること、二十数年間Bは一度も家賃を怠ったことがないこと、持参しなかったのも長い間Aの方で取りに来ていたので、専門家に相談したところ取立債務であると指示されたことからBの誤信はやむを得ないところがあること、な どです。
 このように信義則、権利の乱用などを理由に解除権の行使を制限されることがあります。これらの場合は、法文上の形式がととのっていても、解除される側に気の毒な事情があるとき、解除する側にも我慢すべき事情があるときにしばしばみられます。
 近時は解除の有効無効を「信義関係の破壊」があるかどうかで判断する考え方も有力です。
 なおAのように持参債務の約束があっても何十年も家賃を取立てに行っているときは、取立債務になるという相反する裁判例もあるし、裁判は条文上の形だけではないということを教訓としたいものです。

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