値上げに対抗する供託家賃の額はいくらがよいか

 Aさんは、四年前に店舗を一ヵ月六万五〇〇〇円の家賃で借りていましたが、今年になって家主は、家賃を八万五〇〇〇円に値上げしてくれと内容証明郵便でいってきました。
 あまり値上げがひどいので、まったく値上げに応ぜず六万五〇〇〇円だけ供託していたら、今度は、家主から、八万五〇〇〇円の家賃を払わないから契約を解除するという通知がきた。

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 家賃の増額請求は、家主の一方的な意思表示によって増額の効果が発生すると考えられています。
 したがって、値上げの通知が栗山さんに着いたときに値上げになったことになるのです。だからAさんは値上げされた金額を家賃として支払わねばならないことになります。
 しかし、その値上げは適正でなければなりません。家主とAさんの意見が一致しなければ、家主は裁判所に訴えて、自分の値上げ請求額が正しいという判決をもらわねばなりません。
 裁判というものは時間のかかるものです。裁判の間は家賃の適正額はAさんにもわかりません。裁判所も証拠を調べ、鑑定人の意見を聞き、時間をかけて結論をだします。だから家賃の適正額というものは、訴訟のはじまった頃はわからないものです。
 Aさんとしては、値上げが不当で、従前の家賃が相当であると信じたから、その金額を供託したのでしょう。
 この点について借家法では、家主側からの家賃増額請求に対しては、借家人は相当と思う家賃を支払っていればよいということになっています。
 支払うといっても、家主は自分の請求額より低い額を持って来られても受け取るわけにはいかないというでしょう。そのときは、いわゆる「相当額」を供託すればよいのです。
 この弁済供託をする供託所は、債務の履行地にある法務局、地方法務局およびその支局、出張所で、家賃を持参して払っていれば家主の住所地が基準となります。
 Aさんが、従来の家賃額が相当であると信じている以上、その額を供託していれば、家賃の不払いにもならず、文句をいわれることはありません。
 もし、Aさんが五〇〇〇円ぐらいの値上げが相当だと思えば、従前の額に五〇〇〇円をプラスして供託するのがよいでしょう。
 ただし、供託してあっても家主の請求する八万五〇〇〇円が適正であるという裁判が確定したときは、Aさんは、供託額との差額二万円について、その支払期(月末払いならばその月の月末)から年一割の割合による利息を余計に払わねばなりません。
 だから裁判確定後、ただちに不足額と一割の利子を家主に払えば、家賃の不払いを理由に契約を解除される心配はまったくありません。
 したがって、家主のAさんに対する契約解除の通告は効力がないことは明白です。

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