家主の交代で新契約をしなければならないか

 Aさんは、Bさんから、三年前に敷金を三〇万円入れて、五年の期間の約束で店舗を借りて住んでいました。ところが、最近Cという人がきて「この店舗をBさんから買って、私が家主となったから、あらためて契約を結んでくれ、ついては、その際、権利金を二〇万円払ってくれ」といってきました。Aさんとしては、敷金をちゃんといれてあるし、あと二年も期間が残っていることなのにあまり突然のことでびっくりしてしまいました。

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 このように家主が突然変わってしまって、やれ明け渡せとか、権利金をよこせとかいうケースが多いようです。
 このようなときは、まず登記所にいって、この建物の所有名義が誰になっているかを調べるべきです。というのは、建物を借りている人に対して、自分が家主なのだと主張するためには、登記簿上その建物の所有者となっていなければいけないからです。
 そこでもし、まだ登記簿上の所有名義がBさんになっているようであれば、Cさんのいうことに応じる必要はないばかりか、むしろ従前通りBさんを家主として、家賃などもBさんに払わなければいけません。
 登記名義が移転していないのに、丙村さんに家賃を払っても、法律上は家賃を払ったことにはならないからです。
 ではCさんが、登記簿上所有者となっていた場合にはどうでしょうか。
 だが心配はいりません。借家法の第一条により、建物の賃借権は、そこに居住していることによって、直接契約をした家主以外の人に対してでも、その賃借権を主張して対抗できることになっているからです。
 つまり、Aさんからみれば、BさんもCさんもまったく同一人の家主と考えてもよいということになっており、したがってCさんは、BさんとAさんとの契約をそのまま引きつがなければならないからです。
 こんなわけで法律上は、AさんがCさんと新たに契約を結ばなければならないという必要もないし、AさんがBさんに差し入れた三〇万円の敷金もCさんに引きつがれることになり、Cさんが、敷金のはいっていることなんか知らなかったといっても、裁判所は、こんな弁解は聞き入れなく、Cさんに直接敷金の返還請求をできます。
 ともかく、借家人の居ぬきの家を買ったCさんは、まことにワリの悪い立場であり、たとえ甲野さんから家賃をうけとらず、これを拒否してみても、Aさんが、従前どおりの家賃をCさん宛に供託すれば、万事休すというわけです。
 Aさんは臆する必要はなく、困るのはCさんです。
 もっとも、あまり理屈ばかりいっていても、これから長い間関係を持つようになるCさんとの間が、とかく円満にいかなくなるおそれもあります。したがって、場合によっては、Cさんにあらためて、契約書を差し入れるくらいの配慮が必要な場合もあります。

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