移転登記前に売主が死亡したときは

 Aさんは、Bさんと土地売買契約を結び手付金五〇万円を支払いました。登記は、一か月役に残金支払いと引換えにするとの約束であったので、約束の日に残金をもってBさんの家にいってみると、おどろいたことに、Bさんは、Aさんと契約を結んだ数日後に交通事故で死亡されたとのことで、応対にでたBさんの奥さんは「Bがどんな約束をしたのか私には全然わからないので、私と改めて契約をしてくれるならばともかく、このままでは、登記はできない」といっています。どうなのでしょうか。

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 契約の相手方が突然に死亡してしまい、その相続人が、本人から何も聞いていないからと契約の履行をしてくれないで困っているという、きわめて不運なAさんのような人も少なくありません。しかしながら、Bさんの妻や息子さんなどの相続人が、Bさんから何も聞いていないし、契約書もないからといって、Aさんとの約束を履行しないということはなんの理由もないことです。
 というのは、Bさんの相続人は、法律上当然にBさんの売主としての地位を承継し、Bさんとまったく同様に、Aさんに対して契約履行の責任があるからです。
 ところで、この所有権移転登記をするためには、まずBさん名前のものをその相続人名義にし、その後、相続人からAさんが買い受けたという手順を経るか、被相続人の地位を承継した相続人全員を登記義務者として、売買による移転登記をすることになります。
 したがって、Bさんの相続人と話合って以上の手続きをとってもらわなければなりませんい。ところでもし、Bさんの相続人が多数おり、しかもそのうちの何人かは遠方にいるので、相続登記に必要な書類を集めるのが困難だというような場合であっても、どうしても相続人全員から必要書類をだしてもらわなければなりません。
 このような点から、相手方が死亡したときは、できるだけ早く相続人と話をつけ、移転登記をしてもらっておかないと、時がたつにしたがって、相続人の一人がまた死亡し、さらにその人にも何人かの相続人ができたといったように、話合わなければならない相手の数がふえて、手続的にきわめて困難となるということにもなりかねません。
 もし、Bさんの相続人が、どうしても登記に応じてくれないときは、裁判所に相続人たちを被告として、土地所有権移転登記請求訴訟を起こし、判決によって登記する以外に方法はありません。もっとも、この訴訟は、被告の数が多いというだけで、Bさんとの契約書、手付金の領収書さえあれば、それほどむずかしいものではありません。
 また、場合によっては、訴訟提起の前に、Bさんの相続人たちが、他の人にこの土地を二重に売ってしまうことを防ぐために処分禁止の仮処分命令を裁判所からもらって執行しておくことも必要です。

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