引渡前に建物が焼失したときは

 A氏は、長年ののぞみが叶って自分の住宅を買うこととなり、登記と同時に、売主B氏に代金半額を支払いました。
 残る半額は、それから一〇日後の明渡しと同時に支払うこととなっていましたが、三日過ぎないうちに、隣家から出た火事で目的の住宅は全焼してしまいました。
 そこで支払った半額を返還してもらいたいとB氏に交渉したところ、返還どころか、未済金も全部支払えという、おまけに悪いことには、火災の二日前に火災保険も切れて、そのままになっていました。

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 民法は、売買の目的物が特定物である場合、または不特定物の場合でも、目的物が特定した後で発生した損失は、買主がこれを負担しなければならないと定めています。
 A氏の場合、B氏との間にすでに売買契約がすんだ後なので損害をこうむったのはA氏ということになります。
 だから買主は、売主の責任になるような原因で目的物が焼けたり壊れたりしたのでない限り、代金だけは約束通り全額を支払わなければなりません。
 したがって、買主は契約の成立とともに保険をつけるような方法で自分の利益をまもらなければなりません。
 また、買主が代金全部を支払った場合なら、売主がその目的物についてもっていた権利を代わって行使できます。だから売主のつけていた保険金を受領できるし、また、隣家の出火が重大な過失にもとづくものなら、買主は登記なくとも隣家に損害賠償を請求できます。
 しかし、保険をつけてない時はどうしようもないから、売買契約書を作るときに、不可抗力や隣家からの火事のように 売主買主双方の責任に帰することのできない理由で、家屋が滅失したときは、双方で損害を折半するという条項を入れておくよりほかに仕方がありません。

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