不動産の権利など

 不動産に関する権利は、動産にくらべると、種類が豊富で、しかも、一定の権利変動については、登記簿により一般に公示される仕組みになっており、この点が著しい特色になっています。
 不動産に関する権利は、所有権、用益権および担保権に大別することができます。その概要はつぎのとおりです。
 所有権 - 相続人のいない不動産所有者が、遺言なしに死亡した場合ですら、相続財産法人という所有者がつくれるくらいで、国有、公有、私有の別はあれ、現代では、無主の不動産を考える余地はありません。もしあったとしても、それは国の所有になってしまいます。他の権利者はいなくとも所有者はいます。この意味で、所有権は、あらゆる権利の起点です。
 所有権は、法令の制限内で、物を全面的に支配する権利です。経済の発達、都市の膨張、農村の解体は、一方で、不動産の商品化(私有性)を助長すると同時に、他方では、不動産の効率的利用を全社会的な規模で考えてゆこうという傾向(社会性)を促進しており、これに伴い、法令の制限は複雑多様なものとなっています。私有の対象となる不動産の種類に応じ、その一端をみてゆくことにしましょう。

スポンサーリンク

 土地 - 一筆の土地ごとに一つの所有権が成り立ち、土地所有者は、その上下を利用することができます。しかし、地中の鉱物採掘権は留保され、温泉の掘さく、一定地域における建築物用地下水の採取、農地の転用などについては都道府県知事の許可が、また、建物の建築については、建築主事の確認を必要とするし、知事の許可のない農地の譲渡、用益権設定行為などは、いずれも無効です。
 このほか、民法は、土地相隣者間の利害を調整するための種々の権利、義務を定めています。比較的重要なのは、袋地所有者の隣地通行権、境界標・石垣・塀などを相隣者が費用を分損して設置する権利、境界から五〇センチを距てないで建築する者に対し、工事の廃止、変更、損害賠償を請求する権利などです。
 しかし、鉱工業や各種の工事は、騒音、振動、煤煙、臭気、汚れなどにより、広範囲の近隣者をなやませ、いわゆる公害の問題をひき起こしていることは周知のところです。このため「公害対策基本法」「大気汚染防止法」「水質汚濁防止法」「振動規整法」など種々の法令が作られているが、程度がはなはだしく、近隣者が損害を受けたときは、その賠償なり、公害の除去を求めうる。
 以上の諸点は、土地所有者ばかりでなく、地上権者、永小作権者、賃借権者などについてもいえることです。
 建物 - ふつうは一棟の建物ごとに一つの所有権が成立します。しかし、分譲アパートの買主のように、一棟の建物の区分された一画について所有権が成立することもあります。
 このような区分所有者相互の利害を調整するために、昭和三八年四月から、建物の「区分所有等に関する法律」が施行されました。
 これによると、共用部分につき、各区分所有者は、専用部分の割合に応じ持分を有し、その多数決をもって、共用部分の管理をするのを原則とするが、共用部分の管理につき、総会を開き、規約を定め、決議をし、管理者をおくこともでき、規約は、その作成に加わらなかった区分所有権をも拘束するものとされています。
 立木 - 立木登記簿に登記された立木集団は、土地とは別に所有権が認められます。
 判例は、登記されない立木についても、各地の取引慣行にしたがい、立札その他の標識により誰が権利者かをわかるようにしたとき、土地とは別に所有権が成立するものとしています。立木から分離していない桑葉・みかんなどについても同様です。
 なお、森林の伐採については知事への届出を、保安林の伐採については知事の許可が必要です。
 その他 - 工場、それに備えつけられた機械、機具、敷地などの所有者は、これを一括して工場財団登記簿に登記をすることができ、これをすると、工場財団は、一つの不動産とみなされます。
 このように、登記により不動産とみなされ、あるいは、不動産と同じに扱われるものは、鉱業財団、鉄道財団、商法上の船舶など少なくありません。
 なお、立木を含め、各種の財団登記簿に登記しうるのは、所有権と抵当に関する事項にかぎられます。
 用益権 - 他人の不動産の利用を主目的とする権利は、さまざまです。ここでは、比較的重要と思われるもののみを掲げるにとどめることにします。
 地上権・永小作権・地役権 - これらは、いずれも他人の土地の利用を目的とする物権です。そのうち、地上権は、建物その他の工作物や竹木を所有する目的で他人の土地を利用する権利、永小作権は、耕作または牧畜の目的で他人の土地を利用する権利、地役権は、通行・引水などの目的など他人の土地を利用する権利です。土地を借りて建物を建築所有したり耕作している人は数多くいますが、その大部分は、地上権者や永小作権者ではなく、つぎにのべる賃借権です。
 賃借権 - 賃料を払って他人の物を利用する権利が賃借権ですが、民法は、これを 賃借人に対する債権と構成しています。そう構成したのは、用益物権よりあれこれの面で弱くするためで、かっては、大きな開きがありました。たとえば、用益物権の設定事項と違い、不動産の賃貸借契約を結んでいる所有者には、登記義務がなく、実際にも、賃借権の登記はほとんどされていません。かかる賃借権は、目的物が譲渡されると、新地主、新家主に対抗できず、賃借人は返還請求に応じなければなりませんでした。また、賃借権は、用益物権と違い、譲渡性がなく、賃貸人の許しをえないで賃借権を譲渡したり賃借物を転貸すると、賃貸人は、契約を解除し、目的不動産の返還を求めることができました。
 しかし、不動産賃借権の価値、機能は、時の推移とともに重要なものとなり、その過程で、賃借権の強化を目ざす法律が作られ、現在では、用益物権との差は著しく少なくなりました。たとえば、建物所有を目的とする土地の賃借権は、その建物の所有権登記をしておけば、新地主に対抗できるし、建物や農地の賃借権は、引渡しを受けていれば新家主、新地主に対抗できます。また、建物所有を目的とする土地の賃借権の譲渡、転貸につき賃貸人が承諾しないときは、賃借人は、承諾に代わる裁判を求めうる。小作賃借人の無権譲渡、転貸を理由に賃貸人が契約を解除するには知事の許可がなければなりません。これに対し、借家人の無権譲渡、転貸の場合については、かかる立法はされていません。
 なお、建物所有を目的とする地上権と賃借権は一括して借地権とよばれています。
 入会権・流水利用権・温泉利用権 - 入会権は、一定地域の住民が集団または他人の所有する土地を独占的に利用する慣行上の権利です。農業上の水利や温泉利用についても、各地に、種々の慣行があり、入会と同様、しばしば独占的利用権が認められることがあります。
 特種の用益物権 - 採石法による採石権、鉱業法による鉱業権、粗鉱権、漁業法による漁業権、入漁権、特定多目的ダム法によるダム使用権など。
 担保権 - 債権の担保を目的とする不動産の権利には、つぎの三種があります。
 留置権・先取特権 - 債権者が、債務者らの所有物を占有、留置することで、間接的に債務の弁済を促すのが留置権、債務の弁済がない場合に、裁判所に申し立て目的不動産を競売してもらい、その代金から他の債権者に優先して配当を受けることで債権の回収をはかるのが先取特権です。どちらの権利も、取得集団が法定されており、法定担保物権とよばれています。
 質権・抵当権 - どちらも、契約をとおして設定されるのを常としており、約定担保物権とよばれています。このうち質権は、留置権と先取特権をミックスしたような権利で、債務の弁済があるまで目的不動産を留置し、弁済がないときは、裁判所をとおして競売し優先弁済を受けることができます。他方、抵当権は、先取特権と同様、優先弁済を内容とする権利です。銀行、会社などの債権者が、不動産を占有、管理するのは不便なので、不動産の債権設定契約は、あまり行われていません。
 仮登記担保権・譲渡担保権 - 弁済期を徒過したときは、債務の弁済に代えて不動産を譲渡するとか、債権相当額で不動産を売り渡すなどの契約をし、債権者のため に仮登記をする例が少なくありません。この種の契約は、長いこと、その外部に即し代物弁済予約、売買予約などとよばれてきましたが、昭和四〇年代に入ると、一括して仮登記担保契約とよぶようになりました。
 その主なねらいは、債権担保の権利なのだから、不動産の価額が債権額を上まわるときは、その差額を清算せよという点にあり、以後、債権者が営利をむさぼることは許されなくなりました。
 他方、譲渡担保は、債権担保のために不動産を譲渡し、弁済があると所有権がもとに戻る契約で、ここでも、昭和四〇年代以降差額の清算が義務づけられています。前の四つの権利は、法律の予定していろもので、典型担保とよばれるのに対し、仮登記担保と譲渡担保は、取引界の必要が生み判例が認めたもので、非典型担保とか変態担保とよんできましたが、前者については昭和五三年「仮登記担保契約に関する法律」が制定されました。

土地
不動産の権利など/ 住宅ローンの種類にはどのようなものがあるか/ 住宅ローンの返済ができないときはどうするか/ 住宅ローンの内容が広告と違うときは/ 建売住宅の代金三割を払ったのに登記に応じない/ 売買の支払後に二重売買されたときの処置/ 代理人が勝手に売ったような場合には/ 無権利者から買い受けたときはどうするか/ 一度定めた値段は変えられないか/ 誇大広告で損害を受けたときの賠償請求は/ 頼んだ仲介業者を抜きにしてした取引は/ 引渡前に建物が焼失したときは/ 移転登記前に売主が死亡したときは/ 移転の本登記前に仮登記があるときは/ 売主が登記を拒絶するときの処置は/ 借地権の存続期間は何年まで有効か/ 家屋買取の請求をされたときは/ 借地権の譲渡を地主が承諾しないとき/ 借地上の建物の増改築は無断でできるか/ 借地契約の法定更新で更新料の支払は/ 家が焼けると借地権は消滅するか/ 地上権と賃借権の違い/ 間貸しにも借家法が適用されるか/ 家主の交代で新契約をしなければならないか/ 値上げに対抗する供託家賃の額はいくらがよいか/ 即決和解による借家契約の更新は許されるか/ 賃料不払いでも契約解除にならないとき/ 訴訟中の家屋の転貸を禁止するには/ アパートの更新料を要求されたが/ 借家権や居住権は相続で引き継がれるか/ 立ち退くときには必ず立退料が貰えるか/ 近隣や居住者に迷惑をかけた賃借人はどうなるか/ ビル賃借保証金の返還債務者は誰か/ 境界に無断で打たれた杭を勝手に抜くと/ 隣家から公図と境界が違うといわれたとき/ 毎日通勤する道を柵でふさがれたら/ 境界に作った塀の代金は誰が負担するか/ 隣りの庭から雨水が流れこんだときは/ 不動産を抵当にとるときの注意/ 家屋や敷地の抵当権はどこまで及ぶか/ 担保にとった土地にある木を切られた時は/ 権利証を紛失したときの担保差入は/ 代物弁済の仮登記をして金を借りると/ 借地権の補償価格はどのくらいか/ 借家権の補償はしてもらえないか/ 補償金に代え替地を要求できないか/ 収用の際の移転料はいくらもらえるか/ 残地の価値が減少した場合の補償請求/ 得意先が減った場合の営業補償/ 景観が悪くなった迷惑料は/ 裁決されても立退かないとどうなるか/ 収用裁決に不服のときの救済方法/ 区画整理中の土地売買と登記請求は/

       copyrght(c).土地の買い方ガイド.all rights reserved

スポンサーリンク

プライバシーポリシー