夫の土地を担保に借金したい妻が印鑑を押すと

 Aさんのところへ知人のB子が訪れ「主人が病気で入院したので治療費に困っている。この土地を抵当にしてお金を貸してほしい」といって、夫名義の土地の権利証と夫の実印を見せました。Aさんとしては、抵当権設定契約書に印鑑を押させて金を貸してもよいのでしょうか。

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 まず、Aさんが、このままB子との間に抵当権設定契約をした場合の効力について、考えてみましょう。
 B子の行為は、妻が夫を代理して、夫の土地に抵当権を設定したものと見ることができます。この場合、たとえB子が夫の名前を代筆し、夫の実印を押したとしても同じことです。そして夫がB子のそのような代理行為にあらかじめ同意していたり、事後的にせよ承認してくれるのであれば、B子の行為は完全に有効な代理行為となりますので、問題はありません。ところが、実は、夫が入院したという話は嘘だったとか、他にお金を工面する容易な方法がいくつもあるなどの事情があって、夫が抵当権設定を承知しないというケースも考えられます。そういう場合でも、はたしてB子の行為は、有効に抵当権を設定する効力をもつのでしょうか。
 一般の代理人の場合は、本人がある行為を依頼したことによって代理権限が生じているのですから、原則として、本人が承認している行為だけが有効な代理行為となります。ところが「法定代理」といって、いちいち本人が依頼しあるいは同意しなくとも、法律によって、ある範囲内で当然に代理権限が認められている場合があります(親権者が未成年の子を代理する場合が、その典型例です)。
 夫婦間でも、食料品や衣類を買うなどの日常家事の範囲内の行為にかぎり、当然に相互に代理権があるとされています。
 そこで、本問のような抵当権設定行為が日常家事に属する行為といえるならば、問題なく有効となるのですが、いくら夫の入院費を捻出するためとはいえ、土地を抵当に入れる行為は、とても日常家事とはいえません。やはり夫の同意がないかぎり、B子の行為は無権限になされたものということになります。
 無権限な代理行為が、例外的に有効とされる場合が法律上で認められており、これを表見代理といいます。そして、そのひとつに、ある代理権を有する者が権限外の行為をしてしまったのに、行為の相手方は、そこまで代理権限があるものと信じていたというような場合があります。本問のケースでも、もしAさんが、B子は夫の同意を得ているものと信じ切って契約したのなら、ある程度の代理権はあるわけですか ら、形式的には表見代理となりそうにも思われます。ところが、無限定にそういう表見代理を認めていたのでは、夫婦間では、一方がどんなかってなことをしても、有効な代理行為ということになってしまいます。
 そこで判例は、夫婦間の代理行為については「夫婦間の事情を知らない第三者から見ると日常家事の範囲内の行為だと思われる」ような場合にかぎって、表見代理になりうるとしています。したがって本問では、表見代理も成立する余地がないことになるでしょう。
 結局、AさんはこのままB子に印鑑を押してもらっても、抵当権を取得できないことが考えられます。したがって、直接B子の夫に会うなどして確認のうえ、夫本人との間で抵当権設定の契約をするべきです。

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