賃貸借当事者間の売買と賃貸借

土地や建物の賃借権者と、所有者である賃貸人との間で、後者から前者へのその不動産の売買契約が成立したときには、従前の賃貸借契約は当然に消滅して売買契約だけが存在し、代金の支払が残っていても不動産は買主へ引き渡された状態であるという場合と、代金の完済か登記かが済むまでは従来の賃貸借契約はなお存続する という場合とが考えられます。どちらであるかは、売買契約で自由にきめることができます。
売買契約でどちらともきめておかなかったときは、ふつうは前者の場合、つまり、売買契約とともに賃貸借契約は消滅し、賃料は支払わなくてもよくなった、とみるのが妥当でしょう。理由としては、その不動産とは何の関係もなかった人が買って、代金の支払の全部または一部が未済のままで売主が不動産を買主に引き渡したという場合で考えてみましても、両当事者の気持としては、賃料やそれに相当する金額を別に受け渡しするつもりではないというのが普通であって、その辺のところの経済的計算は後払代金の額や支払時期をきめるにあたって当然考慮に入れてある、とみるのが自然だからです。また、民法五七五条が、未だ引渡さざる売買の目的物が果実を生じたるときは其果実は売主に属す。と規定していますので、その反対解釈として、引渡のあった時以降の果実は買主が取得しうる、つまり、買主が自分から賃料を取ったと考えても、結局のところ売主へ賃料を払う必要はない、ということになると思われるからです。

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土地

借家人がその家屋を買う契約を家主との問で締結したにもかかわらず、家主が同じ家屋を第三者に二重売りしたという場合は、不動産についての権利変動と対抗力の問題になります。結論的には、すでに所有権移転登記を得ている第三者が背信的悪意者であるなど特殊な揚合を除けば、登記のないあなたは所有権をこの第三者に主張することができず、逆に、登記を得ている第三者の方はその所有権をあなた にも主張できますので、第三者の所有権はゆるがないものになっている、と思われます。
ただし、第三者つまり家屋の新所有者はあなたにむかって家屋の明渡を請求できるという結論が当然に出てくるわけではありません。
まず、旧家主とあなたとが売買契約を締結しながらも借家契約の方は消滅させないで続けていたという場合であれば、家屋所有権が旧家主から第三者へ移転したことはあなたとしても認めざるをえないとしても、あなたはずっと家屋を使用してきたのですから、あなたの借家権はこの新家主にも対抗することができます。つまり、従来と同じ借家条件でもって借りる権利を新家主にも主張するとができ、明渡請求に応ずる義務はありません。
ところが、売買契約と同時に従来の借家契約関係は混同によって自動的に消滅してしまったとみられる場合だとしますとことは少し厄介になります。というのは、形式論理を押し進めてゆきますと、あなたはもはや借家権者ではなく、ただ家屋の売買契約を結んでその引渡だけを受け移転登記はまだ得ていない状態の人ということになりますから、所有権移転背記を受けてしまった第三者(新家主)に対しては、所有権取得という点て負けるだけでなくて、家屋の利用権をも主張することはできず、家屋を新家主へ明け渡さなくてはならない、とも考えられそうだからです。
しかしながら、ことを実質的に考えてみますと、あなたとしては、従来保有してきた借家人という地位から家屋所有者の地位へいわば昇格しようとして昇格しそこなっただけで、どんなにヘマをやっても元の地位より悪くなってはおかしい、というのが常識にかなった考え方でしょう。法律的には、さきの借家権の混同による消滅は、買取りのほうがうまくゆかない場合には自動的に初めに遡って失効するという、一種の条件付のもの、あるいは一種相対的なものである、と説明することも可能でしょう。そうだとしますと、貸家の家主が交替しただけという、先の場合と実質的には同じことになり、あなたに借家権としての対抗要件が備わっているかぎりは、従来どおりの借家権を新家主にも対抗できる、といって よいと思います。現に、このような結論を示した最高裁の判例があります。
なお、家賃についていいますと、新家主への所有権移転登記の時を境にそれ以後の分は新家主へ支払わなければなりません。
借家人に家屋を売ると約束したにもかかわらず、第三者に譲渡した場合に、家屋を明け渡す必要はないにしても、かつての家主の二重譲渡行為によって、家屋所有権取得の期待が裏切られたわけです。そこで、この旧家主の責任を追及することができるかどうかですが、これは、旧家主とあなたとの間の売買契約の内容によってきまります。
もし、売買契約のなかで、月賦代金の支払を延滞したら売買契約は自動的に解除になるという特約がついていた場合でしたら、売買契約はすでに消滅していたはずですから、旧家主が第三者へ売却したことは、あなたに対する関係でも、別段違法な行為ではなかったことになります。もちろん、あなたは既払分の代金の返還を請求できますが、一方では、解除をもたらした責任者として旧家主(売主)へ損害賠償をする義務があり、さらに、売買契約解除によって前述のように復活したはずの借家契約上の家賃を支払わなければなりません。そして、現実には、この請求分と支払分とで相殺をして差額だけの請求権または支払義務が残ることになります。次に、月賦金の延滞があれば当然に解除、という失権約款がついていなかった場合だとしますと、売主である旧家主とあなたとの間の売買契約は、旧家主が適法な手続を経ての契約解除の意思表示をしていないかぎりは、法律上まだ有効に存在しているわけです。つまり、あなたのほうに月賦代金の延滞があっても、売主(旧家主)は、相当の期間を定めて履行を請求し、それでもあなたが支払わないという場合でなければ、契約を一方的に解除することはできないからです。したがって、この手続を経ての売買契約解除をしないでおいて、家屋を第三者に売却してしまったというのでしたら、売主(旧家主)は、家屋所有権を確実に買主のものにするという、売主側の債務について、故意に債務の履行不能という事態を招来したことになりますから、買主であるあなたは、これに対して、金銭での損害賠償を請求することができます。

土地
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