買戻の特約と再売買の予約

不動産を売却するとき、売主が将来一定の代金を支払ってその不動産を取り戻すことができる方法を講じておくことは、実際上しばしばみられます。例えば、都合によって家屋敷を処分しなければならなくなりましたが、将来資力が回復したら、何としても再び取り戻したいというような場合のように、この種の不動産取引の目的は、不動産の譲渡そのものではなく、不動産の一時的な譲渡という形式で金融を受けることにあります。
借金をするにあたって、その担保として不動産を譲渡し、借金の返済期限までに返済すれば不動産を取り戻し、返済できない場合には、当該不動産によって借金の返済のかわりにする、という仕組になっておりますが、貸金の授受およびその返済は、不動産の売買代金およびその買戻代金という名目でなされます。買戻特約付の譲渡担保契約がなされる場合には、この金融の方法としての性格が顕著にあらわれます。このような売買形式による不物産金融の方法として、買戻の特約と再売買の予約との二つがあります。

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買戻については、民法は、不動産についてのみ定めています。民法によれば、将来買い戻すという取決めは、当初の売買契約と同時にその特約という形でおこなわれます。売買契約がいったん成立したあとで、改めて買戻の特約を結ぶことは、認められません。この買戻の特約は、将来一定期間内に売主が売買代金と契約費用を返還して売買契約を解除することができる、という売主側の解除権の留保を内容とします。したがって、この特約に基づき、将来のある時点で売主が定められた金額を提供して解除権を行使すると、売買契約は遡って消滅し、原状回復が行われて、不動産が売主の手に戻るのです。
買戻の際に支払う代金は、前述のように売買代金プラス契約費用に限定され、代金の利息は、特別の合意がないかぎり買主が不動産から得る収入と相殺したものとみなされるので、あらためて支払う必要はないとされています。買戻代金を自由に定めることができないことに注意して下さい。
買戻権を行使する期間も厳格に制限されています。10年を超えることは許されず、のちに延長することもできません。期間を定めなかったときは、5年以内に買い戻すべきものとされています。買戻権は、登記することによって第三者に対抗することができます。
第二の再売買の予約については、実際上、買戻と類似の目的を果たすものであるにもかかわらず、民法上厳格な規定がないので、比較的自由にこの制度を利用することができます。法律上の取扱が買戻の特約と異なる第一の点は、売買契約の解除権の留保を内容としていないことです。再売買の予約は、あくまでも当事者間で新たな逆方向の売買をおこなうことの予約ですから、予約完結権者の意思表示によってそのときから将来にむけて売買がなされるに留まります。買戻の特約が解除権の留保であるのに対し、再売買の予約は、再売買予約完結の意思表示がなされるまで売買の効果が停止されているので、停止条件付売買であるということもできるでしょう。予約を完結する権利は、売主がもつ場合もあれば、買主がもつ場合もあります。
再売買の予約は、必ずしも当初の売買契約と同時に行う必要がありません。また、再売買代金も、当事者の合意によって定められます。買戻の特約と異なり、再売買の予約を完結するためには、代金支払の用意があることを相手方に知らせることも必要ではありません。ただ、特約によって代金の提供を必要としたり、それ以外の条件を付与したりすることも、自由です。
再売買の予約が買戻と異なるもう一つの重要な点は、法律によって期間が制限されていないことです。当事者は、自由に期間を定めることができます。期間を定めなかったときはどうかというと、予約の相手方は、相当の期間を定めてその期間内に予約完結権を行使するか否かの返答を求めることができます。返答がないときは、予約完結権は消滅することになります。もっとも、再売買の予約は買戻と類似の目的で用いられるのだから、期間については買戻と同じ取扱をせよ、という考え方もあります。
買戻の特約と再売買の予約は、ともに不動産金融のための方法として用いられるにもかかわらず、法律上の性質や規制の内容はここにみたようにかなりことなります。そのため、再売買の予約を広くみとめることは、民法が買戻の特約について厳格な要件を定めたことを無意味にすることにならないか、という疑問が生じます。実際の不動産金融においても、買戻の特約よりも再売買の予約の方がはるかに多くおこなわれます。したがって、取引の実際にあわせるのであれば、民法の買戻の特約の制度とは別に、同じ経済的目的を果たす再売買の予約を特約の自由の原則に基づいて広くみとめることが望ましいともいえます。
次に、これらの特約が第三者に対してどのような効力を有するかという点が問題となります。両者いずれも、所有権の移転という形式で不動産金融の目的を果たす制度ですから、所有権の移転をうけた買主からさらに不動産について権利を取得した者と買戻権者または予約完結権者である売主との関係で、これらの特約の効力が問われるからです。
買戻の特約は、登記することによって、 第三者に対する対抗力を与えられます。ただ、登記手続は厳格に定められています。まず買戻の特約は、それだけ切離して登記することはできず、売買による所有権移転登記に付記してそれと同時に登記されなければなりません。したがって、所有権移転の登記申請書と買戻特約の付記登記申請書との二通を作成し、後者には、売買代金、契約費用、買戻期間を記載して、同時に提出します。登記がなされると対抗力を生じ、買主から所有権を取得した者に対しても、買戻に基づく目的物の返還を請求することができます。この場合、誰に対して買戻権を行使すべきかという問題がありますが、今日の判例、学説は、現に所有権を有する第三者に対し直接に代金等を提供して買戻権を行使すべきであるとしています。それでは、買主から不動産を賃借した者についてはどうでしょうか。買戻によって遡及的に買主の権利が消滅するので賃借権は成立の根拠を失うことになりますが、民法は、不動産の利用か妨げないようにという趣旨から例外を設け、登記した賃借権は、その残期一年間にかぎり買い戻した売主に対抗することができるとしています。
買戻権そのものが譲渡されるという場合もあります。買戻権は、当初の売買代金等分提供して不動産を取得する権能ですから、それ自体財産的価値を有します。譲渡によって譲受人は売主の地位を承継しますが、買主の承諾は必要でなく、ただ第三者に対抗するためには、登記を必要とします。
再売買の予約においても、予約完結権は財産的価値を有します。そのため、権利の保全方法として仮登記をすることが認められます。買主が第三者に不動産を譲渡しても、仮登記がなされているかぎり、予約を完結して所定の代金を支払うことによって仮登記を本登記にあらため、第三者から不動産を取り戻すことができるのです。予約完結権の行使は、予約の相手方に対してなされるべきだとするのが判例の立場です。買戻とことなりますが、反対の学説もあります。
予約完結権も、買戻権と同様に譲渡することができます。ただ、予約完結権は債権的権利ですから、予約の相手方との関係では、譲渡に承諾を要しませんが、第三者との関係では、債権譲渡の対抗要件を必要とします。もっとも、仮登記のある予約については、仮登記への付記登記をもって対抗要件とするのが最近の判例です。

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