手付放棄による解除

土地を買う契約をし、代金の一割ほどの金額を手付として支払い、残金支払と登記とはニカ月先と取り決めましたが、契約後一ヵ月径ったところで、売主が手付金の倍額を持参してきて、これで解除にしてほしいと言います。当方はこの土地がほしいので、代金はすぐにでも準備しようと思っています。売買契約書には「買主本契約を不履行のときは手付金は売主に於て没収し、返却の義務なきものとす。売主不履行のときは買主へ既収手付金を返還すると同時に手付金と同額を違約金として別に賠償し、以て各損害賠償に供するものとす」という条項があるだけですが、売主には前記のように自由に解約する権利があるものなのでしょうか。
手付の性質には三つの型があると考えられます。第一は、証約手付と称されるものです。契約が成立した証拠としての働きをするものです。第二は、違約手付と称されるものです。これは、契約を一方的に破棄したり、債務を履行しなかったりした場合は、その交付した金銭を相手方に没収されるか、その倍額を先方に返さなければいけない、という趣旨のものです。損害賠信順を予定違約金したものと考えていいでしょう。第三は、解約手付と称されるものです。これは、手付金を放棄するかまたは倍 額にして返すことによって、いつでも契約を解除することができる、というものです。ここに見てきた三つの型は、特約でどの型かを定めてあればそれに従います。もし、当事者の間で何の特約もしていないときは、第三の型の解約手付をしたことになると説明されております。

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本問にある条項は明らかに第二の型の違約手付だと解されます。問題は、このように、表示上、違約手付であることが明らかな場合に、解約手付の働きをもするものかどうか、ということです。これについて、最高裁は極めて注目すべき判決をしました。つまり、このような条項があることだけでは、民法五五七条の適用を排除する意思表示があったとはいえないとして、両者の併存を認めたのです。この見解によると、本問では解約することができます。
しかし、この問題はそう簡単に割り切れないようです。不動産の取引が、例えば市販されている契約書のようなものでなされている場合には、こういう条項があっても、それを強く意識してなされることはそうないでしょうから、何の特約もない場合は解約手付だという推定を、この場合にあてはめて、そういう働きもあるのだとしても、不合理ではないと思われます。不動産取引社会ではむしろそれが一般だという人もいます。しかし、売主も買主も、契約の拘束力を強く望み、将来契約をやめにするというような不安定な契約を望まないとい う意図でこの条項がなされたとしますと、解約手付の働きは排除されているのだと解するのが妥当です。そうでなければ、どの手付にするか当事者が定められるとい う趣旨が無意味になってしまうからです。したがって、本問もここに述べたような態度で解決できるかと思われます。
手付をおいたからといって、いつでも契約を解除できるものではありません。民法五五七条は、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、契約を解除することを得。と規定しております。このような制限があるのです。
履行に着手するには、通常、費用がかかります。そのような段階で解除したのでは、費用をかけた者に損失を与えることになります。また、履行に着手するということは、契約に強い期待を有していることになり、その段階で契約を解除できるとしたのでは、その期待を裏切ることになります。そのような理由のもとで、最高裁は、まだ履行に着手していない相手方に対して契約を解除することを認めました。これは、契約を解除しようとする者がたとえ履行に着手しても、相手方さえ履行に着手していなければ契約を解除することができる、ということを意味します。

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