契約解除と損害賠償

契約を解除すると損害賠償を請求することができなくなるでしょうか。債務不履行を理由として契約を解除した場合契約は遡って消滅し、債務も成立しなかったことになるので、履行にかわる損害賠償の請求もできなくなるという主張は、一見正しいようにみえます。しかし、損害賠償請求権は、債務不履行の効果として発生するのですから、解除の結果、債務が消滅しても、債務不履行の効果も共に消滅すると考える必要はありません。なぜならば、この考え方は、結局、責務不履行に基づいて解除すると債務不履行まで完全に消滅すると主張するのと同じことになるからです。
債務不履行の主要な効果は、損害賠償請求権と契約解除権の発生であり、後者によって契約が消滅しても、前者による損害賠償責任は残存します。民法は、このことを解除権の行使は損害賠償の請求を妨げず。といっています。ただし、 この規定は、解除権を行使しても損害賠償の請求をすることができるという意味であって、契約の履行にかわる損害賠償を請求するためには契約の解除をせよという意味は含んでいません。

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土地

債務不履行の一種である履行不能の揚合は、解除権を行使しなくても直ちに填補賠償を請求することが できます。例えば、AがCに当該土地を売却し、登記まで移転した場合は、それだけで直ちに履行不能が生ずると解されていますから、解除をしなくても損害賠償の請求をすることができます。
履行遅滞の場合には、やや事情が異なります。解除しないで直ちに填補賠償を請求することかできるのは、債務者が遅滞に陥ったのち履行不能が生ずるか、または遅滞後の履行が債権者にとって利益とならない場合に限られるからです。例えば売主の遅滞によって転売が遅れているうちに価格が暴落して転売そのものができなくなったケースでは、契約を解除せずに履行にかわる損害賠償を請求することもできます。ただその場合は、契約そのものは消滅しませんから、債権者の側の債務は影響をうけず存続します。
いずれの場合も、契約を解除して損害賠償を請求することも契約を解除しないで履行にかわる損害賠償 を請求することもできます。
契約を解除して損害賠償を求める場合、その額はどのようにしてきめられるのでしょうか。まず、損害賠償額をどの時点を基準と して算定するかという問題があります。考えられる時期として、履行期、解除の時点、損害賠償の請求の時点の三つがあります。
履行期については、次のような難点があります。それは、履行期後に目的物の価格が債権者に有利に変動したときも、債権者は、債務者が履行期に履行をしなかったという一事によって、この利益にあずかることができなくなる、ということです。
解除の時点を算定時期とする方法によれば、この難点をなくすことができます。ただ、履行遅滞の場合、催告だけしておいて解除権を直ちには行使せず価格が債権者に最も有利になったときに解除することを認めると、損害賠償額が債務者にとって不当に増大するおそれはあります。これを妨げるには、債務者は相手方の催告権によって、解除するか否かを確定する必要があります。
損害賠償の請求時期を算定時期とすることは、この弊害を一層大きくする危険がありますから、解除の時点の考え方より優れているということはできません。
このように考えると、解除の時点の価格を基礎にして損害賠償額を算定するという考え方が妥当ということになります。今日の判例や学説も、原則として解除時点を基準としています。ただ、過去の判例には、履行期以降損害賠償を請求する時までの間の最高価格を標準としたものがありました。目的物の価格がさまざまに変動した場合、もし債務者が履行期に履行していたならばその後最も価格が高かったときに債権者はその物を他に転売して利益を得ることができたはずだから、その価格で損害賠償額を算定してよい、というのがその理由でした。
しかし、この考え方には問題がありました。債権者は、現在の価格が将来を含めて最高価格であるということをつねに確知できるわけではないので、ある時期の価格が最高であったことが後に明らかになっても必ずその時期に転売して最大の利益をあげたにちがいないということはいえないからです。判例が態度を改めたのは正当であり、最も土地価格の高騰していたときの価額を算定基準とするという主張はみとめられません。
解除による損害賠償の請求において、原則として解除時点を算定の時期とすることは、以上の説明からおわかりのことと思います。ここで原則としてといったのは、他により適切な基準がない場合には、という意味であることに注意して下さい。まず、当事者があらかじめ損害賠償の額について予定していた場合は、その額が基準となることはいうまでもありません。
次の場合にも、より適切な基準を見出すことができます。それは、買主が転売することを目的として契約を結び、転売の相手方と価格がきまったような場合です。もし売主が履行期に履行したならば買主はこの価格で転売して相応の利益を得ただろうということがはっきりしています。初めは転売を目的としなかったが後に転売の約束ができたというときも同じように考えてよいでしょう。これらの場合には、転売(予定)価格をもって損害賠償額の算定基準とすることが適切です。ただし、転売価格は、債務者と無関係に買主と転買人の合意できめられるものですから、その価格が非常に高い場合は、転売時の時価によると考える余地があります。なお、判例は、このような場合は解除の時の時価によると考えています。
次に損害賠償の範囲が問題となります。解除による損害賠償は、債務不履行に基づく損害賠償にほか なりませんから、債務不履行を原因として生じたすべての損害のうち当該事件に特有の損害を除いた損害が賠償請求の対象となります。このような範囲の損害を、相当因果関係に立つ損害といいます。
転売の場合を例にとれば、まず、目的物を転売したら得られたであろう金額が目的物の価格とされますから、それに相当する 填補賠償を請求することができます。次に、転売の契約が履行されなかったことによって転買人に支払うべき違約金などがあれば、それも損害賠償額に加えることができます。
他方、解除によって買主の代金支払債務も消滅しますから、まだ代金を支払っていない買主は、その額だけ利益をうけることになります。その結果、相手方に請求できる具体的な損害賠償額は、自己の債務を免れることによって得る利益を引いた残額ということになります。この方法は、損益相殺とよばれます。この残余金額について、損害賠償の支払の催告が相手方に到達した翌日から遅延利息が生ずることも、注意しておきましょう。

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