契約解除の方法

債務の履行をすることが不可能ではないのに、債務者の責めに帰すべき事情によって、定められた時期に履行をしないでいる、という状態を、履行遅滞といいます。債務不履行の一つの類型です。債務者の責めに帰すべき事情によるのかどうかという点は、必ずしも容易に断定できないかもしれません。しかし、契約に基づいて債務を負った以上、その履行こそが債務者のなすべきことですから、履行しない以上、自己の責めに帰すべき事由によって履行しないのではないということを債務者の側で証明しないかぎり、債務不履行とされるのです。その結果、相手方に解除権が発生します。
民法は、履行遅滞を理由として解除権を行使する場合は、一定の前提手続を踏むことを要求しています。それは、相当の期間を定めて債務の履行を催告し、その期間内になお履行がなされない場合に解除権を行使する、という手順です。契約の解除は、契約関係を遡って消滅させるので、債務者に必要以上の損失を与えることがありますから、債務者が一旦遅滞に陥っても、直ちに履行に応ずるという場合には解除権の行使を許さない、という趣旨なのてせす。ただし、この催告という前提手続は、特約によって省略することができます。また、催告期間内に履行がなされない場合にあらためて解除の意思表示をするというのが本来の建前なのですが、催告と解除の意思表示をあわせて行うこともできます。
これに対して、特定の日時または期間内に履行をしなければ契約の目的を達しえないような債務の履行遅滞の場合は、催告の手続なしに、契約を解除することができます。履行不能の場合も同様に催告の手続をふまずに解除することができます。催告をしてみても、すでに債務の履行をすることが無意味または不可能であることがわかっているからです。
債務不履行の類型としては、このほか、不完全履行がありますが、この場合は、あらためて完全な履行をすることができるかどうかによって、催告の要否がきめられます。追完が不可能の場合は、履行不能と同様に、催告をしないで契約を解除することができます。
また、事情の変更を理由とする解除かみとめられる場合には、催告を必要としないことはいうまでもありません。売主の担保責任に基づく買主の解除権の行使についても同じです。買主に契約どおりの目的物を移転しえなかったことが明らかになった場合の契約解除だからです。

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土地

Aに土地を売却する契約をしましたが、約束の代金支払期日 がきてもAは代金の都合がつかず支払ってくれません。三ヵ月くらい待ってくれれば必ず支払うからというのですが、最近この土地はずいぶん値上りしているので、この機会にこの契約を解消してしまいたいのですがどうすればよいでしょうか。
これは、買主Aが約束の代金支払期日に支払をしなかったのですから、履行遅滞を理由として契約を解除することができます。その場合、前述のように、相当の期間を定めて催告する必要がありますが、この催告期間は、特別の事情がないかぎり一週間程度でよいでしょう。Aが三カ月持ってくれれば支払うといっていても、催告期間を三ヵ月にする必要は全くありません。催告期間内に履行がない場合は契約 を解除する、という条件付解除の意思表示をすることができることは、のちに述べるとおりです。
なお、本問の文言からは必ずしも明らかではありませんが、代金支払期日を定める場合には同期日に代金とひきかえに土地の引渡または登記の移転をおこなう旨の約定がなされることも多いですから、その場合は、おそくとも催告期間の末日までに、土地の引渡または登記の移転をする用意があることを買主に知らせなければ、解除権を行使することができません。条件付解除の意思表示も効力を生じません。判例は、登記と引き換えに代金を支払う旨の約定がある場合、催告期間の末日に買主が代金を持参して登記所に赴いたにもかかわらず売主が同日登記所へ出向かなかったときは、売主の解除は効力を有しないとして、この同時履行義務をかなり厳格に解釈しています。

Bから土地を買う契約をし手付金も入れましたが、Bはこの土地を私に無断でCに売却して登記をしてしまいました。私としてもその土地はだんだん気に入らなくなってきていましたのでこの機会にBから手付金を取り戻してこの契約を解除してしまいたいと思っていますが、どうしたらよいでしょうか。
これは、履行不能の事例とみることができます。Bは、 この土地を売る契約をしたのちに無断でCに売却し登記をしてしまったので、Bとの売買契約によってこの土地を取得したということをいくらCに対して主張しても この土地をCからとりかえす方法はありません。B、C間の売買契約が契約として有効なものであるかぎり、Cが同意しない以上BがCからこの土地の登記をとり戻してあなたに移転することも不可能です。この場合、Bは、自己の責めに帰すべき事由によってあなたにこの土地を移転しえなくなったことになりますから、履行不能による解除権を直ちに行使することができます。
ところで、この事例では、手付金が授受されています。手付の交付にあたって、当事者の一方が契約上の債務を履行しないときは、損害賠償として、手付を交付した者は手付を没収され、手付をうけとった者は倍額を償還する、という趣旨の約定がなされている場合もあります。その場合は、あなたはBに対して倍額の支払を請求することができますが、このような約定がなされることは、実際上はそう多くありません。これに対して、特別の定めをしないで手付を交付したときは、解約手付として交付されたものと推定されます。本問の場合には、明らかにBに債務不履行があるのですから、交付した手付が解約手付であったとしても、解約手付に基づく解除権ではなく、Bの履行不能に基づく解除権を行使することができます。
この場合、売買契約は遡って存在しなかったことになりますから、売買契約にともなって授受された手付金も法律上の根拠を失うことになります。したがって、Bは、あなたの損失において手付金相当額を不当に利得しているわけですから、あなたは、契約の解除と共に、Bに支払った手付金を返還するよう請求することができます。なお、BがCにこの土地を勝手に売ったことによってあなたが損害をうけた場合は、手付金の返還とは別に損害賠償の請求をすることができます。

土地
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