不当に抹消された登記の回復

場所が気に入り、登記簿を調べてくれた司法書士の話では抵当権などは一切付いていないとのことなのでAから購入した土地ですが、ある人がやってきて、Aに融資をしてこの土地の上に抵当権を持っている。債務の弁済はまだなのに、あなたが買った部分をAが分筆した際に、登記所のミスで私の抵当権登記を書き写すことを忘れたらしい。抵当権の抹消回復登記をするから承諾の印をほしいといいだしました。このような場合にどのような救済措置があるのでしょうか。
これは、一筆の土地が分割され分筆登記がなされた際に、その土地に付いていた抵当権登記を書き写すことを登記所が忘れたため、その土地には抵当権が付いていないと思って買った者が、抵当権者から抵当権の抹消回復登記について必要な承諾を要求された、という場合の問題です。このような登記所のミスで書き写されなかった登記は第三者に対して効力をもつかどうかについて、現在では一般に効力があると考えられています。ところで、このような不当に抹消された抵当権登記を回復する方法ですが、不動産登記法六三条以下の更正登記によるとする見解と抹消回復登記によるとする見解がみられます。しかし、更正登記は、登記事項の一部についての錯誤又は遺漏がある場合、いいかえると、不完全ながらも一応所定の登記がある場合に問題となるのであって、本問のような場合は抵当権登記の全部がなされなかった場合ですから、抹消回復登記をなすべきであろうといわれています。本問でも、抹消回復登記の申請のために承諾の印が欲しいといっています。抹消回復登記は、抹消された登記の回復を目的とし、回復された登記は抹消された登記と同一の順位を有することとなりますので、何ら制限なくこれを許すと、本問のように抵当権が付いていることを知らずに土地を買った人の利益を不当に害するおそれがあります。そこで、不動産登記法六七条は、登記申請者は申請する揚合に登記上利害関係のある第三者の承諾書または裁判の謄本をそえることが必要であると定めています。これが本問で要求された承諾の印の意味です。そして、承諾すれば問題ありませんが、承諾しない場合には、請求者は自分の抵当権を主張することができるということで訴訟をおこし、その裁判の謄本で抹消回復登記をすることになります。

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土地

このように買主が知らなかった抵当権の登記が回復されると、その抵当権は買主の取得した所有権に優先し、抵当権の実行 によって買主は所有権を失うおそれがあります。このような結果が生ずる原因は、売主が抵当権の付いた土地を売ったことにあり、したがって売主はその責任を負わなければならないわけですが、民法五六七条はこのような場合の売主の責任について定めております。それによりますと、まず、売買の目的となった不動産の上にあった先取特権または抵当権の行使によって買主がその所有権を失ったときは、買主は契約を解除することができます。先取特権や抵当権はその目的物の占有を必要としない権利ですので、ただこれらの権利が付いているだけでは、買主が買った物を用益する妨げとはなりませんし、また、これらの権利によって担保された債権が売買の後に弁済されれば、買主の取得した所有権は完全なものとなりますので、これらの権利が付いているということだけでは売主に責任を負わせる必要はないわけです。したがって、抵当権の行使によって実際に買主が所有権を失ったときに責任を負わせることとしています。また、抵当権のついた土地の買主は、所定の手続に従って一定金額を抵当権者に払い、抵当権を消してもらうことを要求できますが、これを抵当権の滌除といい、この方法で自ら出捐して目的物の所有権を保存したときは、売主に対してその支出した費用の償還を請求できます。先の契約解除の場合も、後の費用償還の場合も、買主になお損害があれば損害賠償の請求ができます。このような売主の責任は、売主の過失を必要としない無過失責任と考えられ、解除や損害賠償の請求ができるためには売主の過失が必要だと考えられている債務不履行責任とは別の担保責任であるといわれています。
なお、この担保責任には責任追及期間の制限はありません。
土地などを買う際には登記など素人とでは難しい手続をとらねばなりませんので、司法書士に依頼するのが普通です。本問でも司法書士に依頼し、売買の目的である土地に抵当権などが付いていないか調べてもらったというのですが、もし司法書士が土地の分筆前の旧登記簿まで調べていたならば、この土地に抵当権が付いていることを確かめることができたと思われます。そして、買主は抵当権が付いていることを知っていたならば、本問のような問題は起こらなかったはずです。そこで、確実に調査しなかった司法書士の責任を問うことができるかどうかが問題となります。司法書士と買主との関係は委任契約の関係とみることができるでしょうが、委任を受けた者は、委任の本旨に従い善良なる管理者の注意をもって委任事務を処理しなければなりません。この善良なる管理者の注意義務は、委任の内容、委任を受けた者の職業などを考慮して通常要求される程度の注意義務といわれていますが、司法書士は分筆前の旧登記簿まで調査する義務があるかどうかということが問題です。司法書士は、他人の嘱託を受けて、その者が法務局などに提出する書類を作成し、また登記などに関する手続を代わってする者であるということからすると、通常このような調査義務は負わないといえます。
これに対して、登記官吏は公務員で、分筆登記の際に書き写すべき抵当権の登記をミスで忘れたのですから、当然その責任を問われることとなります。特に、国家賠償法一条は、公務員がその職務を行なうに当たって故意または過失により違法に他人に損害を加えたときは、国または公共団体が責任を負う、と定めています。したがって、本問の場合、国に対して損害賠償の請求ができるわけです。

土地
買った土地の坪数の不足/ 買った土地の地目が農地の場合/ 緑地帯、風致地区/ 買った土地が区画整理による分散する場合/ 土地分譲と道路負担/ 買った土地の一部が他人の敷地の場合/ 買った土地の通路が他人のものの場合/ 不完全な建売住宅/ 違反建築の建物と売買/ 共有不動産の売却/ 不当に抹消された登記の回復/ 抵当権付不動産の売買/ 買った土地の使用処分に対する制限/ 不動産の時効取得/ 契約の解除/ 契約解除の方法/ 契約解除の時期/ 契約解除権の時効/ 契約解除と損害賠償/ 解除と第三者の権利/ 手付放棄による解除/ 売り戻しの特約/ 買戻の特約と再売買の予約/ 事情変更による解除と契約条件の変更/ 他人が使用中の不動産の売買/ 借地人が立ち退かない場合/ 他人の使用中の不動産の売買と賃料/ 買った土地に借地権者がいる場合/ 借地上の建物の売買/ 借地権者の借地買取/ 借家人の借家と敷地の買取/ 賃貸借当事者間の売買と賃貸借/ 土地の分譲と営業免許/ 建売住宅の売買/ 土地の一部分の売買/ マンションの分譲/ 建築途上の建物の売買/ 道路予定地の売買/ 仮換地の売買/ 割賦払中の売買/ 担保権付不動産の売買/ 係争中の不動産の売買/

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