企業の分散と地価

現代の大都市問題は、集積の利益を求める資本の大都市への集中の結果であるといわれます。そこで、これらの資本の大都市への集中を抑制し、あるいは積極的に分散をすすめることができれば、現代の大都市問題はすべて解決されるかのようにもみえます。住宅限界地内についてみる限り、工業の集中は、印刷などの特殊な業種を除き、地価の上昇によってすでに阻止されています。部分的にではありますが、都心部の既存の工場の分散の傾向さえ見えはじめています。しかし、これを首都圏と全国との対比でみれば、依然として首都圏への集中傾向は強く、ますます強まりつつあるとの感さえ受けます。各種の統計を使うまでもなく、首都圏の各種需要量は他の経済圏に比べて圧倒的に大きいことは明らかで、需要の拡大を見越して行なわれる設備投資が首都圏に集中するのは当然であり、この設備投資が首都圏での需要をますます強めることになります。集積の便とは、各種産業が近接して立地することによる輸送費や規模の経済による生産費の相対的低さのことではなく、需要の絶対量と地域内における投資の乗数効果の大きさのことなのです。

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土地

この工業の首都圏への集中は、現在のところ地価の上昇によって抑制されてはおらず、今後も抑制される見通しはありません。この工場の首都圏への集中が管理部門の都心への集中の原因になるのだがら、工場の首都圏への集中を抑制することが、問題の根本解決への前提になるのですが、企業の自発をまつ政策は新産業都市の見事な失敗からみてもはとんど絶望的です。また、もしなんらかの方法によって、工場の地方分散を強行し、工業用地の地価上昇がとまるようなことが起れば、土地担保金融による設備投資が行なわれなくなります。そのような政策の採用を、資本を代表する現政府に期侍できないことは明白です。
工場の首都圏への集中を認めてしまえば、その管理営業部門の東京都心への集中は不可避であり、さらにその結果として商業、サービス業の東京都心への集中も不可避である。いくら情報処埋の機械化がすすむといっても、金融、取引といった企業の営業活動では人間と人間との接触は不可欠であり、この人間同士の接触を媒介するサーピス業の集中もまた不可避だからです。
住宅限界地の外に企業が全従業員を引きつれて移転することは今後も小規模には続くであろうし、それを促進する政策を積極的にとることも意味のあることですが、このような管理営業部門の分散が普遍化し、都市への集中が大勢として抑制されるような事態を想定することは難しい。それは、このような分散に際しては、全従業員の住宅を企業が事前に確保しなければなりません。保守的な土地所有者が需要の発生を見越して貸家を企業の進出前に建てる可能性はありません。また、特定少数企業の従業員のみが入居することが明白な住宅を、公的機関が建設するはずもありません。したがって、企業は膨大な資金量を必要とするのであって、その資金は企業が都心に持っていた土地の売却、あるいは担保金融によって調達せざるをえません。都心部の地価上昇なしには、大規模な管理営業部門が住宅限界地外に転出することはありえず、大規模な管理営業部門の転出なしに、中小の商業、サービス業が住宅限界地外に立地するはずもありません。企業の分散は、大勢としての工業の首都圏への集中とその管理中枢部門の都心への集中を前提とした副次的な現象なのです。

土地
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