土地の保有と税

土地所有者が土地の売却を延期しようとするのは、地価上昇が今後も続くと判断するからですが、どのような理由からにせよ、土地の供給が制限されれば、持家需要者は需要の対象を外に移さなければならず、持家限界地の外への移動が起れば、内側の地価は自動的に上昇し、土地所有者の地価上昇の期待は実現されます。もちろん、持家の需要量は一定であるため、地価上昇が無限に続くわけではなく、内側から次第にその上昇率は低下し、低下したところから次第に貸家、アパートの建築が進むのですが、この間もスプロールを伴う持家限界地の外への移動は続きます。持家限界地が通勤時間から決まる物理的な限界にぶつかったとしても、より高い支払能力を持つ需要者が持家限界地を求めることによって地価の上昇は続きます。宅地価格に対する租税の影響を考える場合には、証券市場の場合などとは異る市場価格機構の存在を忘れてはならないのです。譲渡所得税率の引き上げは、その引き上げ幅のいかんにかかわらず、土地資産の供給制限を起し、スプロールと地価上昇を加速するのです。

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土地

この場合、売却の延期を困難にするなんらかの事情、例えば地価値下がりの見通し、売却延期期間中の所得減に土地所有者が耐えられないこと、持越し費用の増大などがあれば土地資産の供給制限は緩和されますが、大都市の周辺においては、土地所有者の大多数は農家で、土地値上がりに関しては経験に支えられた極めて強気の見通しを持っており、その上、農業所得があるため延期期間中の生活が著しく困難になることもなく、しかも、農地の固定資産税を現状のままとすれば、すでにみたように持越費用の心配もありません。
消費的動機を考慮にいれても以上の結論に大きな変更を加える必要は認められません。農家は現在住む家を持っていないわけではないため、税率が上がったからといって、土地の売却を急ぐ必要はなく、税額増分だけ余分の土地を売るよりも、売却の時期をのばそうと考えるはずです。税率の引き上げは土地所有者の消費的土地売却動機に対しては抑制的に作用し、土地の供給を制限します。
以上の考察から明らかなように、地価上昇率が利子率水準を越えている案件下では譲渡所得税税率の引き上げは、引き上げ決定から引き上げ実施の間については、土地供給促進の効果をほとんど持たず、引き上げ実施後には土地供給を抑制し、スプロールと地価上昇を加速する可能性が大きい。このマイナスの効果をなくす唯一の方法は、地価上昇の期待を完全に奪うために税率を100パーセントとすることですが、これは実質的に土地売買の禁止措置であり、問題になりません。
土地保有税の強化は、高率の譲渡所得税を課する場合に比べれば実行が容易で、しかも、その効果は、持越し費用を課することによって土地所有者の土地売却動機に直接作用するものです。
固定資産税、都市計画税の課税を強化し、逆に譲渡所得税を引き下げることによって、土地の流動性を高めるべき必要があります。固定資産税、都市計画税の強化と貸家建設資金の融資とによって、土地所有者が自分の土地の上に貸家、アパートを建て、それによって家賃が低落傾向に向かうとしても、それだけではなお残る持家需要によって地価の上昇が維持される可能性があるため、譲渡所得税を引き下げることにょって、土地所有者による土地の売却を提進し、地個上昇を抑制すると同時に、土地利用の効率化をはかるべきです。
譲渡所得税は、土地所有者が外部経済を内部化することをチェックする唯一の手段であり、重課税とするのが望ましいという説があります。この説はいかにも社会正義に合致しているようにみえますが、実際には、土地所有者の土地売却意欲を滅殺し、逆に地価上昇を加速させ、スプロールを激化する危険があります。地価高騰の原因を放置し、その結果の不労所得に八つ当りをするよりも、地価高騰の原因自体に働きかける方が政策としては、より賢明です。

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