公的住宅の機能と供給

国や自治体の補助を受けて行なわれる公営住宅の機能は、公的住宅一般の中でさらに小さく、公営住宅は、低所得者層に低家賃住宅を供給するものとして、その社会政策的意義を特に革新政党から高く評価されているものですが、公営住宅の意義について考えようとするならば、まず、その入居競争率に注目しなければなりません。しかも申込者の数倍の住宅困窮者は、はじめから公営住宅の入居を諦め、応募さえしていないようです。僅かな確率で安い家賃の住宅に入居できる制度が公営住宅政策の現状です。しかも、公営住宅の供給は地価上昇を加速する悪効果さえ果たしているのです。

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公営住宅の供給量を大幅に増加させることができたと仮定したとすると、それによって問題は解決するでしょうが、大量の公営住宅が供給され、しかも、その家賃が民間貸家の家賃の例えば半分以下に抑えられるとすれば、民間貸家の家賃ももちろん低落することとなります。ところが、民間貸家の家賃が低落する結果として、新しい民間貸家の供給は止まることになります。その家賃では償却を除けば満足な金利さえ得られないからです。大都市圏への人口の集中は、この政策によって加速されることはあっても、抑制されることはありえないため、民間の貸家供給がとまれば、現在の民間貸家供給の全量を公営住宅が肩代りしなければならなくなります。しかも、それに必要な用地を買取しながらです。ところが、地価の方は、持家需要者の動向によってきまり、持家需要者は公営住宅の入居の対象とならない中以上の所得階層に属しているため、地価上昇のメカニズムは基本的に現在と変わりません。それどころか、現在貸家、アパートの建設資金をつくるために行なわれている農地の売却がとまり、さらに大量の公営住宅用地の需要が加わるために地価の上昇は、現在よりはるかに加速されることになります。
現在の大都市圏において、公営住宅の供給増だけを行なえば、所得の低い若年労働人口の大都市集中をますます強めて大都市問題の解決をますます困難にし、地価の上昇をますます加速して土地所有者をますます肥らせるだけです。
さらに大切なことは、公営住宅政策が本質的に勤労者の低賃金を与件とした政策であることです。すでに明らかにしてきたように、現在の大都市における限界地の貸家の家賃は、建物の償却費と利子相当分、それに維持管理費によって構成されています。その家賃の支払いさえ困難だというのは、賃金の水準が労働力の再生産に必要な経費よりさらに低いということにほかなりません。そのように低い賃金の水準を与件として、低家賃住宅の供給によって住宅問題が解決できると考えるのは、本質的に無理なのです。かつての低米価政策と同様に、低家賃政策は低賃金を維持するための資本の要求に基づくものであり、その低賃金が資本の蓄積を可能とし、高度経済成長と資本の大都市への集中をもたらした最も基本的な要因であることを知るべきです。
終戦直後の一時期において、民間の住宅供給がまったく途絶し、しかも、戦災、引揚げなどによって家のない人々が巷にあふれたとき、公的機関がとにかく住むべき家を供給しようとしたことには、それなりの意味がありました。しかし、民間に貸家を供給する資金的な余裕ができ、しかも、その家賃は競争によって供給コストまで下がっている現在では依然として公的資金だけで住宅間題を解決しょうとするのは、あまりに非現実的だと思われます。むしろ、より本質的な要求である所得の再配分要求の一環として、住宅供給コストに見合う賃金の要求がなされるべきです。

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