持家政策から貸家政策

誰しも自分の家をいつかは持ちたいと考えています。しかし、現在の持家選好の異常な強さは、地価の異常な上昇に強く依拠したものであって、もしこの条件がとり除かれるならば、ライフサイクルにあわせて、その時々に最も通した貸家に住むことの方が、便利さという点でははるかに優れています。しかも、現在の利子率を越える地価上昇率は持家需要を原因として意起されており、地価上昇率を利子率水準以下に抑えるという我々の政策目標に向かってまず第一になされなければならないのは、持家需要を抑制し、貸家の供給を増大させることです。この場合の貸家の供給は、現在の土地所有者自身によってなされなければなりません。現在の土地所有者から、例えば不動産業者や住宅公団などの公共団体が土地を買って、その上に貸家を建てたのでは、土地需要の強化という点で個人持家の需要と本質的な違いがないからです。持家政策から貸家政策への転換をさらに具体的にみるならば、融資や公的住宅供給などが間題になります。これらのうち最も重要なのが融資です。

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土地

大都市周辺部の農家は、その経常所得を増大させるために、自分の土地の上に貸家やアパートを建てたいと考えています。現に大都市周辺の農地を転用してつくられる貸家、アパートの大部分は農家のものです。また、中間地帯や都心部分でも、停年退職したサラリーマンなどで自己の所有地にアパートを建てたいと考えている者がかなりいます。社会保障制度が不十分な日本では、退職者が老後の収入を得ようとすればアパート経営が最も安定した仕事だからです。これらの人々に低利長期の資金が提供され、しかも、後述の土地保有税の厳しい課税が行なわれるならば、喜んで資金を借り入れて貸家、アパートを建設するはずです。その収入は必ずしも非常に高いものとは限りません。しかし、一家の生活を支えるに十分な水準が維持されないようなことはありません。この方法の最大の特徴は、土地に対する需要をまったく増大させることなしに、住宅の大量供給を可能にする点です。融資された資金量はその全量が住宅建設それ自体に使われて、現在の公的住宅建設のように資金の半分近くが用地費に食われるようなことがありません。住宅建設のために支出する公的資金量が一定だとすれば、二倍に近い大量の住宅の供給が可能になるのです。
新しい大量の貸家、アパートが供給されるようになると、都心の老朽アパートの家賃は低下し、アパート経営者は建て替えを考えざるをえなくなります。その建て替えに対しても長期低利の融資を行なうものとします。
一般に長期融資は低利でなければ借手がつかないために、民間資金は利率の高い短期に集中する傾向があります。これが日本のように利子率水準の高い国で、民間の住宅金融が例えばアメリカなどに比べて普及しなかった理由ですが、それでも日本では地価上昇率が高いために土地の担保能力が重視され、住宅金融が普及するようになりました。ところが、農家の方は土地に抵当権が設定されることをきらうために、民間資金を大量に住宅建設に誘導するためには、単なる利子補給だけでは十分とはいえず、元金についても政府がこれを保障しなければなりません。
金融技術的に最も容易な方法は、公的な貸家建設融資機関、例えば住宅金融公庫が住宅債を発行して民間資金の集中をはかり、攻府はこの公的融資機関に対して利子補給を行なうことです。賃貸住宅に対する資金援助は当面は家主を援けるように見えますが、このことによって家主間の競争は激化し、結局は貸家、アパートの借手が良好な居住条件のところを安く借りることができるようになるのです。また、間接にはこれによって持家需要を滅退させ、スプロールの防止にも役立つわけです。これまでにずいぶん甘い汁を吸ってきた大都市近郊地主に、さらに大量の長期低利資金を融資するという主張は、困民感情に合わないと思う人もいますが。しかし、以上のように考えてみると、きわめて大きな効果がある上に、終局的には地主家主の収入源たる家賃間代を圧縮することになり、かつ、持家需要を滅退させることによって地主の期待利益の源泉をも断つことになるのです。
民間金融機関の住宅ローンについては、これを積極的に抑制する手段がありませんが、貸家建設融資に対する利子補給制度によって、住宅建設資金の流れを持家建設から貸家建設の方向に切りかえることは可能です。さらに、地価上昇率が利子率水準以下に下がるようになれば、宅地の担保能力は大幅に滅殺されるために、現在の住宅ローンはおそらく自然に消滅の方向にむかうこととなります。企業あるいは組合による持家建設資金の融資についても、利子補給制度を活用することによって、持家建設資金を貸家建設資金にふりむけるよう誘導すべきです。このような資金の流れの変更を実現するためには、貸家建設資金をあつめるために発行する公債の条件を、現在の公債発行条件の中で最高のものにしなければなりません。

土地
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