大都市政策

大都市圏への投資が自償的であるべきだという点について、受益者負担の原則それ自体に異議を唱える者ははとんどいません。しかし、この原則を現実の政策に適用しようとすると、多くの問題が発生してきます。まず、真の受益者が誰であるかを明らかにする必要があります。例えば新しい通勤鉄道がひかれるとき、その最大の受益者は、周辺の土地所有者であり、ターミナルに立地するデパート資本です。その他の企業も鉄道のない場合に比べて労働力の確保が容易になるという意味で受益者ですが、鉄道の利用者たる通勤者は受益者ではありません。また、例えば公害防止事業などで、被害の救済と受益とが混同されるようなことがあってはなりません。その費用は公害の発生源者が支払うべきであって、救済されるべき被害者や第三者が費用を負担する必要はありません。受益者負担の原則の実行は実は所得再配分政策であり、したがって強い抵抗を受けることになります。

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土地

受益者負担の原則を現実に通用する場合には細心の注意が必要であることを十分に認めるとしても、負担を企業にのみ負わせて、勤労者は一切の負担を免かれるべきであるとの主張には認めることはできません。問題は地域的な比較だからです。租税にしろ各種公共料金にしろ、大都市圏での住民の公共サービスに対 する負担、生活費の水準が、地方での生活費の水準に比べて現状よりもさらに高くなる必要があると考えられます。なぜならば、巨大都市の住民の受ける公共的なサービスは、地方の住民の受ける公共的なサービスにくらべて、同じ質のサービスを新たに供給するに要する限界費用が著しく高いからです。例えば義務教育施設、公園などでは、同じ機能の施設を新しく供給するに必要な費用は、少なくとも地価の差だけ、大都市圏において大きくなります。
大都市圏と地方との勤労者の生活費の水準格差が拡大すれば賃金水準の格差もまた拡大せざるをえません。生活費の格差のどれだけの部分が賃金格差によって補填されるかは、経済的には地方から都市への労働力の流入、政治的には労働者階級と資本家階級との闘争に規定されるわけですが、その補填の程度にかかわらず、生活費についても賃金についても、巨大都市と地方との間に確然とした格差ができることによって、はじめて、現在強い大都市集中傾向をもつ大企業の管理中枢部門とその従業員が大都市への集中をためらうようになり、そうなってはじめて零細な商業、サービス業とその労働力源である地方出身者が大都市への集中を思いとどまるようになるのです。
工業については、すでに大都市通勤圏内からの分散の傾向がみられますが、分散といっても、それは首都圏内、近畿圏内あるいは中京圏内のことであり、全国的にはこれらの工業地域への集中傾向が依然として強く、この工業の集中が、管理中枢部分の大都市への集中を促すのです。企業の分散なしに人口の分散はありえませんが、同様に人口の分散なしに企業の分散もありえないのであって、大都市圏と地方との間で住民の生活費に確然とした格差を、しかも短期のうちにつくることが、現代の都市問題を現状以上に悪化させない唯一の方法であり、その上で物的機能の充実を考えるべきではないかと思われます。
現在の都市問題、特に住宅問題の解決には、勤労者の賃金水準の上昇が不可欠です。賃金水準が、快適な住宅の建設費の償却と利子相当分の支払いに耐えられないほど低い状態にあるとき、賃金水準の上昇なしにすべての勤労者に快通な住宅を供給しようと考えることは本質的に無理です。勤労者の賃金水準の上昇を与件としており、その意味でも、現体制内での解決を志向したものということができます。しかし、たとえ賃金水準が上昇したとしても、現在の地価上昇のメカニズムが放置される限り、持家を持とうとすれば勤労者の賃金水準の上昇は地価上昇に吸収され、いたずらに土地所有者の所得を増やすばかりで、動労者の住宅条件の改良には役立ちません。現在の都市政策の最も重要な目的の一つは、所得配分の適正化であり、賃金水準上昇を与件とするといっても、現体制の枠内で実現可能な限りの政策転換を追求したいと考えるのです。

土地
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