地価の賃金への影響

企業が大都市圏に集中する傾向が強いと、人口も大都市圏に集まってきます。そして人口の自然増、世帯の核家族化傾向も加わって、その人口に新たに住居を供給せざるをえなくなります。したがって、人口滅があって新たに供給する必要のない地方と比較して、大都市圏の賃金水準は総じて新居住費だけ高まる必然性があります。他の案件を無視すれば、新居住費だけの差をもって賃金水準は地方と均衡する傾向を示さざるをえません。では、大都市圏での居住費と地価との関係はどうなるのでしょうか。企業が借入金をもって社宅や寮を建てたとして、用地費をどう取扱うかは、付近の地価上昇の用地の潜在的資産価値の増大を意味するので、地価上昇率が借入金の利子率より大きい場合には、地価の要素はコスト、この場合には労働費に加える必要はなく、激しい企業間競争の下では労働費に含めることができません。企業としては、資金を社宅や寮に固定するより、直接企業活動の分野に投じたいと考えるでしょうが、そのことは必要資金量の多少にのみ関係することであって、用地費の金利が労働費に含まれるか否かの問題とは関係がありません。一見、社宅の家賃や寮費が安いことは企業の犠牲によるもののように見えますが、建築費の償却と金利さえとれれば実際は損はないという計算が背景に存在するのです。もっとも、家賃が建築費の償却と金利以下ならば犠牲をはらっていることはもちろんです。

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寮や社宅に入れない労働者、サラリーマン中の低所得層、特に中小企業の労働者たちはアパートや貸家によって住居を得ています。通勤限界地のアパートと貸家については、家賃は建築費の償却と金利の水準を均衡条件としており、敷地の地代部分を含みえない水準にあります。家主たる農家は建築資金をつくるために所有地の一部を売るのが普通のやり方ですが、その地価の高低は決して家賃に反映する性質のものではありません。むしろ、地価の絶対額が高い場合は、建築資金をつくるために売らなければならない土地面積が少なくてよいことを意味するため、アパートと貸家の供給を促進し、家賃の水準を早く建築費の償却と金利の水準に収束させる条件となります。アパートや貸家の住人は居住費について高地価の影響を受けていないのです。
この限界地より内側では差額地代的に家賃の上昇が見られますが、この地代は限界地のアパート、貸家に対する相対的有利性によって定まるのであって、アパート、貸家限界地において地代が地価と無関係だったと同様、そこの地個とはなんの関係もないのです。
また、アパートや貸家は持家のように広範な分布を示しません。相対的地理的優劣といっても要するに通勤の多少の便不便のことであるため、限界地と都心との間の家賃には大差は生じえないし、その差のなかには通勤費の差も含められているわけだから、純地代部分はきわめて少ないわけです。この地代部分による家賃格差が所得格差を発生させる要因になっているとは考えにくく、労働者を雇備する企業群の側に、どうしても家賃の高い地域に住む人を雇傭しなければならない事情が広範に存在するならば、限界地との家賃の差、すなわち地代は両地域住人に所得格差を発生させる要因となることとなります。しかし、現実には、それほど遠くない地域が限界地になっているのであるため、そこからの通勤者によっても労働需要が満たされ、都心地域住人に限定して雇備するようなことを必要としない場合が一般であると想定しなければなりません。所得の比較的高い層や、特殊な事情にあるものが、家賃の高い都心地域に住むというだけのことで、その家賃によって所得水準が高まるのではありません。
次には、持家の場合ですが、持家建築費のうち用地費が圧倒的な大きさになり、居住費の大きさに決定的な影響を与えています。問題は、この居住費の上昇が持家を需要するような比較的高所得者層の所得水準をさらに高めるように作用しているか否かです。
もし、貸家、アパートや社宅のような地価の影響を受けない住居の供給方法が存在せず、かつ、地価が安く持家を建てるとしても用地費が少ない地域すなわち地方に企業立地が不可能であると仮定できるならば、労働者、サラリーマンのすべては持家を建てるために高い用地費を支出しなければなりません。そのような場合に賃金水準を一定に保つならば、用地費の上昇とともに、彼らの生活水準はいわば反比例して低下することになります。こういう条件下では、地価上昇に伴って賃金を上げざるをえません。しかし、現実には、持家を持てない者は貸家、アパートを借りることができます。また、住宅事情のために特に賃金水準を高くしなければならないようになれば、社宅を建てて対抗することもできます。工場などは地方に立地することもできます。サラリーマンの住居が社宅形式一辺倒にならないのは、一方では、低所得層のために普通の貸家やアパートの供給があり、家賃が建築費の償却と金利の水準に保たれているためですが、他方、比較的高所得層が持家を建てても、そのことによっては賃金水準が特に高くなる傾向が存在しないためです。
持家需要者の所持資金額が上昇すると、その資金額に見合って地価は上昇しました。このことは、借入金を含む所持資金額を規定するのはその人の所得水準であり、その所得水準によって地価が規定されることを示し、地価によってその人達の所得水準が上がるのではないことを意味します。持家の場合には地価は居住費を大幅に左右しますが、賃金水準には影響しないとしなければなりません。

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