地価の物価への影響

埋立など特殊なものを除き、土地自体はコストを要しないのに価格があります。おおまかにいって、この価格は実体を伴った経済活動の結果ではありますが、影のような存在です。しかし、現在の日本の大都市圏のように激しい地価の上昇が続き、それによって経済ばかりでなく社会の総活動が歪められるようになると、樹木の影が、その中にある若木の成長を阻害するように、結果である地価が、原因である経済活動に反作用して決定的な悪影響を及ぼすのではないかと思われてきます。なかでもその影響の解明が不問にされているものに物価への影響の問題があります。この問題はきわめて重要な意味を持っています。地価が物価に大幅に影響するものならば、現在のような激しい地価上昇を示している大都市圏に経済活動の一切が集中するような傾向は、きわめて危険な傾向であるといわなくてはなりません。逆に、そうでないとすれば、この集中傾向を認めた上で、経済活動や社会活動に支障の生じないように大都市圏の範囲内あるいは大都市圏と大都市圏の関連を整備してゆけばよいことになります。

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土地

農業を含む土地生産は、理の当然として優良地から劣等地へ向って進みます。劣等地の借地資本家がその劣等地で生産を行なう場合、その生産物で工業に等しい利潤率の確保が不可能であるならば、資本をその土地に投じる意味がありません。劣等地の利潤率でも工業の利潤率に均衡せざるをえません。そうすると、優良地では工業の対潤率を超える特別利潤がえられるはずです。この特別利潤はその土地が優良地であるがゆえに生じるものとして現われるため、土地の果実として土地を貸す地主のものとなります。これが地代です。需要の増大に伴って生産範囲が劣等地へ移行することにより土地生産物価格は上昇し、それと交換される工業生産物量は増大し、その増大部分が地代に相当する土地生産物と価格において等価となります。この部分は地主の取分となるわけだから、総生産物のうちの資本の利潤に充当すべき部分はそれだけ滅少します。利潤の総額と地代の総額は一方が増えれば他方が滅る関係にあります。そして、地価は地代の資本還元額であるため、優良地における地価の上昇は利潤率の低下を反映したものである、ということになります。
マルクスになると社会の基本的対抗関係を資本と労働の関係に求めたので、地代を利潤率の高さを規定する唯一の要因とは考えなくなりました。利潤率を決定する第一要因は、労働の搾取率つまり余剰価値率であり、余剰価値率に規定される搾取労働量=余剰価値と投下資本との割合を利潤率としました。そして、結局には平均の利潤率が競争の結果として支配します。利潤率の一般的低下は、投下資本のうち労働力の購買に支払われる可変資本に対し、工場や機械、原料など不変資本の割合が増大すること、つまり価値で表示した資本の有機的構成の高度化に求めました。利潤率を構成する分子たる剰余価値に対し、分母をなす投下資本は不変資本が増大するにしたがって増大するからです。
しかし、土地生産物価格の上昇が利潤率に影響しないといったのではありません。利潤率の決定には穀物価格も参加しますが、単独でそれを決定するのとは雲壌の相違であるといって、単独で決定するという考え方を否定したのでした。マルクスは差額地代だけではなく、その上にさらに附加される地代として絶対地代なる概念さえも考えました。この地代も当然利潤率に影響し、地価を決定する要因にも加えられるものとしました。
その後の経済学の進歩の過程を見てみると、地代や地価、あるいは土地生産の経済の仕組に対する位置は次第に低下しました。価格で表示した国民総生産にしめる土地生産物価格の相対的低下傾向、利潤の総量に対する地代の総量の相対的低下を反映しているといえます。現代の経済思想に決定的影響を及ばしたケインズの一般理論では土地生産の特殊性の、資本の運動に対する影響という観点はまったく見られなくなっています。現代の経済は地代や地価との関連なく説明されるものとされているのです。

土地
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