地価形成の下限

現在の公共施設用地の買取りの考え方は、公共施設の影響の存在しない状態における時価で買収するという考え方を基本とするものですが、現実には公共施設の計画のない場合の時価と比較すれば、相当高く買取せざるをえません。法律に定める事業認定時といっても認定時にはすでに、計画がない場合に推移すると考えられる時価に比較すれば、はるかに高くなります。また、公共用地の大部分は取用法によらず任意契約によって取得され、認定時の現実の時価よりもある程度高く買っているのが普通です。下限を押し上げる要因について考えて見ると、第一は、道路や鉄道が設置されると、施設の周辺の地価が用地の買収価格を越えてはるかに高くなり、用地を売った者は後で周辺を売る者より損をすることです。用地提供者はこのことを理由にして抵抗します。では、どうして後で売る者が高く売ることができるのかというと、いうまでもなく、道路や鉄道が開通すれば、商業地、工業地、住宅地としても発展し、農地もこれら用地に転換するからです。

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土地

地価が商業地、工業地、住宅地としての期待の変化を反映するということは、道路や鉄道の設置によって商業、工業、住宅地として発展すると期待されるということであるため、この発展が道路や鉄道そのものの利益を意味し、地価は公共施設の利益に対する期待を反映していることになります。用地提供者が周辺を後で売る者と同額と考えられるまでの支払いを要求するのは、公平の原用を主張しているのであり、上述の第二の考え方を意味します。この場合、彼らは、ただ無やみに地価を上げろといって独占に基づく主張をしているわけではありません。下限として公平の原則を主張しているにすぎません。公共施設の起業者がこの主張を抑制することに困難を感じるのには理由があります。
要因の第二は、地価上昇率の影響です。設置される道路や鉄道によって商業地、工業地、住宅地としての発展が期待され、地価上昇率が利子率を越える場合には、換金は地価の絶対額のいかんにかかわらず、売る者にとって必ず損失を意味します。周辺の期待地価に等しく買われたとしてさえ、強制的に買われることは損失を意味するのであって生活上の、あるいは投資上の必要な資金を得るために、売りたい時に売ろうと思うだけ売るのとはわけが違います。そこに抵抗が生じます。
第三は、物価上昇率の影響です。物価上昇率が利子率に近い現状においては、売る者が農家であって売却代金を活用する方法にうとい場合には、売ることはなんの意味もないことになります。道路や鉄道が周辺に期待の変化を呼び起さないょうな、高速道路の沿線や新幹線の沿線のような場合にも、この要因は作用します。
第四は、農業の限界取益に対する影響です。用地買取に最も強く抵抗するのは専業農家で、なかでも経営規模が大きい人ほど抵抗します。所有地の一部を用地に買収されることによって、経営採算上最も大きい影響を受けるのは彼らです。この要因は、周辺が他用途に転換する第一と第二の理由のある土地の場合には作用しませんが、第三の要因と結びついて、期待の変化が予想されない場合でも抵抗を呼び起し、最も売りたくない大規模の専業農家の限界取益まで買収価格を高めざるをえなくします。その上、これに地主の公平の原則の主張や、土地独占による抵抗が加わる時、限界取益価格以上に釣上げられる可能性があります。起業者の強権を背景にした施設の影響を受けない時価によって買収するという立場は、水田は水田の価格で、畑は畑の価格で、山林は山林の価格で買うということです。第四の理由による限界取益価格も水田と畑と山林の順で抵くります。
住宅地、商業地、工業地とも、農地の地価とはまったく無関係に形成される理由がありました。そのために、これら用地に比較的適さない水田が安かった。ところが、道路や鉄道用地を買収する場合、農地の中では水田を最も高く買収することは、それまでの用途を前提として買収が行なわれていることを意味し、買収者の強権の立場が貫徹していると同時に、時価より高く買収する場合でさえ、第三、第四の理由しか認めていないことをも意味します。周辺が他用途に転用されることが期待される場合には、買収価格は、現実の商業地、工業地、住宅地の地価形成と矛盾しているのです。
第五は、市街地のなかに道路や鉄道を設置したり拡幅するために、企業の立退きや用地、建物の一部縮小を余儀なくする場合で、この理由も限界取益の滅少補償といえます。一部を縮小する場合でも取益は大幅に滅少すると期待されます。立退く場合には将来の期待は不定となる場合が多くなります。その上、商業地の地価は収益の全体を反映する高さに達していません。用地を時価で買収され、建物の再建築費を補償されても、取益の全体が補償されたことにはなりません。
第六は、住宅地の一部が買収される場合です。鉄道の場合はもちろん、道路の場合でも自動車のために近接住宅地の生活環境は悪化します。それに加えて買収にかからない残存地の地価も低下します。被買収者が建物を含む全用地の買取を要求することがあるのは、単に生活環境が破壊されるばかりでなく、残存地の地価が下がるからです。もし残存地の地価が下がるのでなく、建物の補償が得られるならば、残存地を他の者に売却して、生活環境の良い土地を買って移転することができるはずです。残存地の地価が下がることになると、同等な立地条件の住宅を前の土地の売却代金で買い替えることはできません。

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