地主が借地人のために私道を売ってしまった

私の土地一帯は、戦前は借地だったのですが、戦後借地人が地主からこれを譲り受けて現在にいたっています。この土地の中央には公道に通じる幅三mの私道があり、借地人全員がこの私道を通行していたのですが、戦後の売却のときに、地主がこの私道部分を一番奥のAに売ってしまいました。最近Aが私達に私道の通行料を払えといってきました。この私道は建築基準法上の道路として指定されています。通行料を払わなければならないのでしょうか。
この問題は、その私道を通行する権利があるかどうかということと、通行する権利があっても通行料を払わなければならないかどうかということの二つの問題を含んでいます。
一口に私道といっても、法律的にみると、様々な場合があります。私道とは公道と異なり、通行の用に供されている場所であっても、その土地の所有権が私人に属しているものの総称です。私有地であっても土地の種類(地目)が「公衆用道路」として一般人の通行の用に供すべき土地となっている場合もあり、あるいは地目は宅地等であっても、事実上一般人の通行の用に供されている場合、地役権という物権が設定されている場合、所有者と利用者との間に契約による通行権が存している場合、通行のための賃借権あるいは土地賃借権の一部として通行の許諾がある場合、民法の相隣関係の規定によって囲繞地通行権(袋地通行権)が認められている場合等があります。
このように、一口に私道といってもいろいろの法律関係があるので、私道に関する問題はその私道についてどのような法律関係があるか具体的な事実に即して解決を考えなければならないのが現状です。最近のように宅地が細分化され、私道の数が多くなって来た社会事情のもとでは、私道一般についてなんらかの法規制が急務であると思われます。

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土地

本問では、当初この私道は地主が全借地人のための通路として開設し、借地人に道路として提供していたものと思われますので、その私道の所有者であった地主は、借地人に対しその私道を通行させる義務を負っており借地人はこれを通行する権利をもっていたことになります。この権利義務の関係は地主が借地人にその借地を売却しても当然に消滅するものではなく、ただ、それまでは借地人がその借地を利用するためにもっていた通行権が、今度は借地人がその借地の所有権を取得したので土地所有者としてその所有地を使用するための通行権をもつようになったに過ぎません。このように、従来私道として開設されていた通路や、土地の分譲に際し分請地のために開設された通路につきこの通路を利用すべき土地を分譲したときは、明示されなくとも通行地役権が設定されたものとみるべきだという考え方もあり、この考え方にたてば、あなたの場合は、各借地人に借地が売却されたとき問題の私道には各借地人のため通行地役権が設定されたとみるべきことになります。しかしこの考え方をとると、地役権という物権の設定を私道の譲受人に対抗(主張)するためには登記が必要となり、登記がない場合には第三者から地役権の存在を否定されるおそれがあります。また特に地役権の設定があったと考えなくても、長年にわたり継続して通行の用に供していれば地役権を時効取得するということもありますが、あなたの場合のように当初からなんらかの通行権があるときは地役権の時効取得を考えるまでもありません。
以上のように、各土地所有者(旧借地人)は私道を通行する権利はあるとみるべきですが、その通行権の法律上の根拠は必ずし今明確ではありません。そこで多くの場合考えられるのは囲繞地通行権という権利です。囲繞地通行権というのは公道に通じることのできない土地(袋地)の所有者は、その袋地を囲繞している土地(囲繞地)を通行する権利があり、この権利のことをいいます。本問の場合、当初地主が借地人のため土地の中央に私道を開設する必要があったことや建築基準法の道路位置指定をうけていることなどからみれば、各借地人の土地は袋地であると考えられますから、その場合は当然に囲繞地通行権が生じます。そして囲繞地通行権による通行の場所、方法は通行者にとって必要であり、囲繞地にとっても最も損害の少ないものであることが要求されていますので、あなたの場合には、当初から通路として開設されている私道部分を通行することが、民法の要求するところといえましょう。
囲繞地通行権の場合、原則として通行権者は被通行地の所有者に償金を支払うべきこととされています。ただ、土地の所有者が土地の一部を譲渡して袋地が生じたときは、袋地所有者は無償で、もっとも、その袋地が属していた土地のみを通行することができるとされており、あなたの場合は、旧地主が旧借地人にその所有地を売却した際、この無償通行権が生じたことになります。もっとも、無償通行権は囲繞地の処分を所有者が留保した場合であって、囲繞地も他に譲渡されたときは譲受人には無償通行権を主張できないという有力な見解もありますが、判例は少なくとも袋地と囲繞地が同時に他へ譲渡されたときは無償通行権を適用することを認めており、その後これを変更する最高裁の判例もないので、学説の上からはともかく、実務上は本問のような場合は、通行料を払う必要はないといえましょう。

土地
昔から境界が不明/ 境界の目印/ 境界標が無くなり隣が侵入してきた/ 河川との境界/ 登記所の地図は必ずしも現実の境界とは一致しない/ 買った土地の境界が違っていて家が建てられない/ 同じ買主から買ったのに隣りが登記面積より広い/ 分譲地の私道負担が多すぎて家が建たない/ 越境している隣家をそのままにしておくと時効で隣人の所有になる/ 隣りが境界線をこえて増築している/ 隣りのエアコン室外機が越境している/ 隣りの庭木が越境しているとき/ 借地の境界がはっきりしないとき/ 隣りとの塀は共同の費用でつくることができる/ 塀について隣人と意見があわないとき/ 共同の塀の修繕費用は平等に負担する/ 高い塀のために日当りが悪くなった/ 塀が壊れて通行人がケガをしたとき/ 土留めの石垣費用は崖の斜面の所有者が負担する/ 道路位置指定を受けるには/ 道路位置指定を受ける前に分譲業者が倒産したとき/ 道路にはり出して建物を建てているとき/ 私道確保の方法/ 通行地役権の時効取得/ 袋地の通行権を妨害されたとき/ 土地の一部を買って袋地となったとき/ 建築基準法に適合する道路分だけの袋地通行権/ 地主が借地人の私道を借地人の一人に貸してしまった/ 地主が借地人のために私道を売ってしまった/ 分譲によって袋地となった者の通行権/ 私道負担付の土地の譲受人の通行権/ 私道を勝手に閉鎖することはできない/ 私道への駐車は許されない/ 借地人のための私道への車の通行禁止/ 道路位置指定のある私道は権利者だけの同意だけでは廃止できない/ 整然とした道路を造るには/

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