土地・建物の一方の抵当権の実行

同一人の所有に属する土地とその上の建物に抵当権が設定され、抵当権が実行されて、競売の結果、土地と建物が異なる者の所有に属するようになった場合には、抵当権設定者は建物のために地上権を設定したものとみなされますが、この法律によって設定したものとみなされる地上権を法定地上権といいます。民法では、土地と建物とは別個の不動産とされており、一方で土地と建物が同一人の所有に属する場合には自己の土地に自己のために土地利用権を設定することは認められないのが建前であるため、抵当権設定時に同一人の所有に属した土地と建物が競売によって所有者が異なるようになると、建物は土地利用権を伴わないものとなって建物の所有者は建物を収去しなければならなくなります。このような社会経済的な損失が生じないようにしようとするのが法定地上権制度の目的です。

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抵当権設定時に土地と建物が異なる所有者に属した場合には法定地上権は成立しません。この場合には、建物のために土地利用権が設定されているはずであって、建物に抵当権が設定された場合には土地利用権は従たる権利として抵当権の目的となり土地に抵当権が設定された場合にはいわゆる地震売買として、いずれの場合も土地利用権の対抗関係となるのであって、民法一七七条、六〇五条、建物保護に関する法律一条が適用されます。抵当権設定時に土地と建物が異なる者の所有に属していた場合には、たとえ抵当権実行時に同一人の所有に属するようになっても法定地上権は成立しないと解されています。建物に抵当権が設定された場合には、約定利用権は混同によって消滅し、法定地上権が成立すると解する説もありますが、利用権が賃借権である場合には本来借地法九条ノ三によって土地利用権を取得できるにすぎない競落人が、なんらの反対給付もなく地上権を取得できるというのは妥当ではありません。抵当権の目的となった利用権は混同によって消滅することはなく建物の競落人はこの利用権を取得すると解すべきです。土地に抵当権が設定された場合については、判例はありませんが、法定地上権の成立を否定するのが通説です。
抵当権設定後に土地と建物が異なる者の所有に属するにいたった場合には法定地上権が成立します。土地に抵当権が設定された後に建物が譲渡された事案について、判例は当初、建物のために土地利用権が設定されていることを理由に法定地上権の成立を否定しましたが、これは抵当権設定後に設定された利用権が短期賃貸借の場合を除いて競落によって効力を失うことを無視したものであるので、後に法定地上権の成立を認めるにいたった建物に抵当権が設定され土地が譲渡された場合にも法定地上権が成立します。いずれの場合でも法定地上権の成立を前提として担保価値を評価しているからです。
建物の存しない土地に抵当権が設定された後に建物が建てられた場合には法定地上権は成立しないと解されています。法定地上権の成立を認めると、土地の抵当権者は抵当権取得の際何等地上権の負担あるべき事由を有せざる完全なる土地所有権なりと為し之に着眼し、之を以て抵当権の目的と為すことを甘受したもものなるに拘あらず其後に至り其意に反して所有者一己の行為に因り抵当権の目的物か物権負担を受くるの結果を来たし遂に意外の損失を被るからです。この場合に、抵当権設定者と抵当権者の間に、建物を建築したときは地上権を設定したものとみなすとの合意があっても、その合意は土地競落人に対抗できないとされています。
このように解すると、抵当権を設定した土地に建物を建築することは事実上不可能となり、抵当権設定者に抵当目的物の取益を認める抵当権の利点が失われるので、抵当権者が土地のみを競売した場合には建物のために法定地上権が成立し、抵当権者が法定地上権の成立を欲しないならば土地と建物を一括して競売すべきであるとする説もあります。最高裁も、土地に抵当権が設定された当時、基礎コンクリート上に土台がすえつけられ、建材の一部が運び込まれていたという事案について法定地上権の成立を否定しましたが、これは抵当権が本件土地を更地として評価したことが明らかであるということを理由としたものです。このことから考えれば、抵当権設定当事に建物が存在していなくとも、抵当権者が建物の存在を前提として土地の担保価値を評価した場合には法定地上権の成立が肯定される可能性があるといえます。
抵当権設定当時に建物が存すればよいとされています。つまり土地のみに抵当権が設定された後、建物が朽廃によらずに滅失しても抵当権設定者が建物を再築し土地の利用を継続していた場合に法定地上権の成立が認められ、さらに、抵当権設定者の配偶者に建物を再築させて土地の利用を許し、自身も配偶者とともにその建物に居住していたという場合も同様とされました。抵当権設定時に存在した建物が土地の担保価値を評価する基礎となっているために、法定地上権が成立しても抵当権者は害されないからです。なお、建物は抵当権設定当時に存在すればよく、保存登記がなくともよいとされています。
競売の結果土地と建物が異なる人の所有に帰したこと、民法三八八条は土地又は建物のみを抵当と為したるときはと規定していますが、土地と建物の双方に抵当権が設定され、競売の結果別々の者が両者を所有するようになった場合でも、建物の収去を強制することが妥当でないのは土地または建物の一方のみに設定された抵当権が実行された場合と同様であるため、法定地上権の成立が肯定されます。
法定地上権は土地または建物が競売されたときに認められるものであるため、土地または建物が任意に譲渡された場合には成立しないことはいうまでもありません。これに対して、強制競売が行なわれた場合であっても、強制競売の目的物に抵当権が設定されていた場合には法定地上権が成立することには争いがありません。抵当権が設定されていない場合に法定地上権の成立を否定した判決がありますが昭和三四年の国税徴収法の改正によって公売処分の場合にも法定地上権が成立するとされたのでその先例としての価値には疑問があります。
法定地上権は契約によらず法律の規定によって成立したというだけで、その内容は通常の地上権と異なりません。つまり建物として利用するのに必要な範囲に及び地代および存続期間はまず当事者の協議によって定まり協議が調わないときは裁判所が定めますが存続期間については借地法二条二項の期間より短期でないことを要します。なお、法定地上権は第三者に対しては対抗要件を具備しなければなりませんが法定地上権発生時の建物所有者と土地所有者の間ではいわゆる物権変動の当事者であるから登記を要しません。

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