借地上の建物の保護

日本の工業が発展し大都市における住宅需要の増大などが地価を上昇させることになると、それほどの需要がなかったため権利金など要求できる条件のなかった頃に賃貸してしまっていた土地の所有者たちは、地震売買をするようになりました。この地震売買から建物を護るために、建物保護に関する法律が制定されました。同法一条によって、借地上の建物について借地人が登記をしておけば、未登記の地上権や土地賃借権について、対抗力を取得できることになり、賃貸中の土地を買い受けても建物収去土地明渡を求めることができなくなるため、賃貸中の土地を更地価格で売却すること、つまり地震売買をする余地がほとんどなくなりました。そうなると、地代請求権にすぎなくなった土地所有権を安価で譲り受ける者さえもいなくなるため、所有者がどうしてもその土地を売りたいときは、借地人に底地価格で買い取ってもらうか、あるいは借地権価格分を借地人に支払うことで、借地人から土地明渡の了解をとりつけた後に売るしかありません。

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土地

ここで借地権というのは、借地法一条に定義された建物の所有を目的とする地上権及賃借権のことですが、同法九条によって一時使用のものが除かれ、さらに、民法六○四条と借地法二条の予定する通常の賃貸に対して例外規定にあたる民法六○二条、つまり処分の能力または権限をもたない者が賃貸する場合も除外されます。注意すべき点は、一時使用でなければならない実質的事情がないのに、土地所有者が土地賃借の必要に追られている相手方の弱味につげ込んで、賃貸後に身勝手な土地取戻でもできるようにしておくために、一時使用という文言を契約書に押し込むことがあるから、一時使用として扱うかどうかは、実質的に賃借人に不利な特約にあたらないかどうかも倹討して決めることになります。一時使用かどうかを認定する基準は、まず賃借人の側に一時使用でなければならない事情があるかどうか、次に、一時使用でしか賃貸できないような賃貸人の具体的使用計画が契約時に存在し、そのことを賃借人が了解して賃借していたかどうか、など客観的に判定します。
借地期間の満了の際に使用に耐える建物が残存する場合に、賃貸人が自ら土地を使用することを必要とする場合、其の他正当の事由ある場合に於て遅帯なく異議を述べなければ、借地関係が徒前どおりの案件で更新されたものとみなされます。しかも、そこでいう自ら使用する必要という文言の解釈も、賃貸人の必要性が賃借人のほうより大きくなければならないものとされており、賃貸人の方から更新を拒絶する余地が狭くなっています。たとえそこで、賃貸人の方に正当事由が認められた場合でも、借地人のほうから賃貸人に対して建物等の買取を請求でぎることになっており、借地人が借地上に投下した資本を回収できるようにしてあります。その買取請求の時価に借地権の価格を含めるかどうかについて、判例は一応それを否定しておきながら、建物の場所的利益を評価するという名目で、実質的に借地権価格の相当部分を加算しているため、その買取価格を負担できない賃貸人が更新拒絶の主張を引っ込めることもあります。
増改築によって借地上の建物が増価し寿命も延び、それが法定更新あるいは建物買取価格の増額につながることから、無断で増改築や修繕をすることを禁ずる特約をしておくことが多く、そういう特約あるときに借地人が増改築をするには、相当多額の増改築承諾料を賃貸人に支払ってでも、賃貸人の承諾をもらうようにしなければなりませんでした。昭和四一年の借地法改正によって、賃貸人の承諾に代わる増改築許可の裁判の制度が新設されました。この規定の特徴は、増改築制限の特約自体が借地契約の本質上妥当性を有するかどうかを問題にすることなく、そのような特約を自由にやれる法的条件の下で生まれた賃貸人に有利な承諾料授受の慣習を法文化し、しかも、増改築によって賃貸人が具体的損失を被ったことの立証を条件とすることもなく、賃貸人の身勝手な承諾拒否についても財産上の給付によって利害調整することです。
借地人が借地上に建物を初めて建設するときは、どれだけ高価な銘木を用いて寿命の長い建築をしようと、それに賃貸人が干渉でぎるような特約をすることもほとんどなく、建物の規模なども建築基準法と借地人の都合にまかされているために、小作地扱いでない借地において借地目的の範囲内の増改築をすることは、借地上の建物における借地人の安全快適な生活を確保する借地契約の基本的な目的を達成するためのものであり、土地の賃貸人において干渉できる筋合ではありません。したがって、承諾料の授受の慣習を法文化したことも不合理です。新規定の存在価値としては、裁判所によって賃貸人の途方もない高額の承諾料要求が抑えられるであろうことと、承諾料算定のより合理的な基準を迫求する作業を通じ、土地所有権者の横暴さをのりこえて増改築の権利化が志向される客観的条件ができたことです。
賃借権の譲渡、転貸を承諾しない自由を賃貸人に認めている民法六一二条と、それを承諾しない賃貸人に対し譲受人が建物買取請求できるとしている借地法一〇条とを前提にすれば、前述のとおり判例は建物買取価格に借地権価格を含ませないだけに、賃貸人は第三者の譲受価格より廉価で買い取れることになるため、建物買取請求権制度が借地権に譲渡性をもたらす効果はそれほど期待できません。このような法的条件の下で、借地権価格と建物の場所的利益分との差額だけ賃貸人の買取価格は安くなり、その差額程度は譲渡を認める場合の名義書換料として賃貸人が享受するならわしになっています。
賃貸人が借地権譲渡を承諾しなくとも自由であるという建前であるかぎり、煩雑な訴訟による紛争解決を避けたい借地人や、特にある特定の人に借地権つきの建物を譲渡したい者にとって、賃貸人の高額の名義書換料要求に応ずることもしかたのないことであるため、譲渡する法的手段の不充分な借地権は、借地権者にとっても、また借地上の建物に担保権を有する金融資本にとっても、不安定な存在でした。昭和四一年の借地法改正によって、借地権の譲渡、転貸についての賃貸人の承諾に代わる許可の裁判が制度化されたことは、その諾否の選択がまったく賃貸人の事由であったときよりも、借地権の安定化にとって一歩前進でした。しかし、条文に賃貸人に不利となる虞なきに拘らずという限定文句があることは、許可の裁判に持ち込まれる前段階の交渉において、賃貸人がむやみやたらと不利になるおそれがあると主張する口実を与えて、示談を困難にします。
借地法一一条によって、同法二条、四条ないし八条ノ二、九条ノ二および一○条の規定に反する借地人に不利な特約は無効です。借地人にとって不利な特約であるか否かの認定方法についての判例は、個々の契約条項のみから判断することを改め、他の条件等と総合して判定しています。例えば不利な特約部分にみあうだけの有利な条件もあるかどうかも考慮されます。
不利な特約と認定された事例としては、建物焼失により借地権が当然消滅するもの、公用買収後の残地部分が賃借目的を達成しうる場合にも消滅させるもの、期間満了後は新規に契約を締結すべき特約、借地権譲渡が契約を当然消滅させるもの、一定の猶予期間をおけば賃貸人の都合で解約できるとしたもの、更新と建物買取についての請求権を事前に放棄させたもの、残存期間をこえて存続するような建物の築造の禁止、賃料不減額の特約、などがあります。それに対し不利な特約でないとされたものとしては、借地人の義務違反を理由として解除権が発生する旨の特約、信頼関係を破壊する無断転貸によって解除されるとするもの、合意によって解約する特約がある。賃貸人は契約全般にわたって借地人に不利な特約を強いる傾向にあるため、前述の一時使用の文言も法定最短期間を潜脱するものでないかどうかを検討することになっています。適用除外の多いものながら地代家賃統制令も、借地人に不利な過大対価の約定を規制するものです。

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土地所有権の変動/ 登記名義人と所有者の不一致/ 第三者が占有している土地の明渡/ 地下埋蔵物の所有権/ 分譲宅地の守るべき法律上の義務/ 袋地所有者の通行権/ 土地取引の安全と公示制度/ 土地登記簿/ 土地登記簿の記載の信頼性/ 土地所有権の仮登記と本登記/ 土地の買主と相続人の関係/ 地上権と借地権の関係/ 空中と地下の地上権/ 地役権の意義/ 無償で貸した土地の取戻し/ 借地上の建物の保護/ 借地権価格と底値価格/ 土地を目的とする担保/ 土地の権利移転型担保/ 土地売買契約における買戻特約/ 譲渡担保と売渡担保/ 土地・建物の一方の抵当権の実行/ 抵当権の土地に対する拘束力/

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