分譲宅地の守るべき法律上の義務

隣接する宅地の所有者がそれぞれ自己の所有権を無制限に主張したのでは、相互になんらかの被害を及ぼしあって、結果的にいずれの所有者もそれぞれの宅地を完全には利用することができないことになってしまいます。そこで、民法では隣接する不動産の所有者の権利をある程度まで制限し、また各所有者に協力義務を負わせることによって、隣接不動産相互の利用を調整することにしています。これを相隣関係といいます。したがって、相隣関係の規定は、一面では隣地との関係での所有権の制限であるとともに、その反面では隣地に対する所有権の拡張であるということができます。相隣関係については、民法に規定されている事柄以外にも、数多くの問題が存在しています。なかでも、騒音、振動、ばい煙、臭気、日照妨害などの生活妨害ないし近隣妨害に関する事件が増大しています。また、分譲宅地については、その他に、売買契約に際して特別の約束がされたり、建築協定や環境協定などが結ばれることがあり、それから生じる特別の義務が課されることもあります。

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土地

境界またはその近傍で塀や建物などを築造し、または修繕したりするために必要がある場合には、隣地の所有者または借地権者に、その使用を請求でます。隣人がこれを承諾をしないときは、裁判所に訴えて承諾に代る判決を求めることができます。ただし隣人は、土地の使用は受忍しなければなりませんが、家のなかに立ち入ることだけは拒絶する自由をもっています。判決をもってしてもこれを強制することはできません。土地の使用または家屋への立入りによって損害をうけた隣人は、償金を請求できます。
分譲宅地においてしばしば問題とされる私道の法律関係は、(1)囲繞地通行権による場合、(2)通行地役権その他の通行権が設定されている場合、(3)道路部分の土地が分譲地購入者全員の共有になっている場合など、私道の利用者に通行のための権利が認められている場合と、(4)分譲地の売主と個々の買主との間でのみ道路の用に供すべき旨の約束がかわされている場合、(5)特定の所有者の専用通路であって、他の者の通行は単に黙認されているにすぎない場合など、道路部分の所有者と通路として利用する者との間に特別の権利義務関係の存しない場合とがあり、(4)(5)の場合には、道路部分の土地所有者が当該道路を廃止したり、他人の通行を制限したりすることは自由であると解され、紛争を惹き起こすことが多くあります。ただし、これらの私道も、建築基準法四二条の規定に従って道路位置指定をうけている場合には、その廃止または変更が禁止され、または制限されることがあります。
土地の所有者は、隣地から水が自然に流れてくるのを妨げてはなりません。自然の排水についてのみ承水義務が生じ、隣地の地盛等のために水が流れてくるようになったときは、承水義務はありません。水流が出崩れなどの事変によって低地において阻塞したときは、高地の所有者は、自分の費用でその疏通に必要な工事をすることができます。ただし、費用の負担につき別段の慣習があるときは、その慣習に従います。
人工的排水のためには、原則として隣地を使用することはできません。つまり土地の所有者は、雨水をただちに隣地に注瀉させるような屋根その他の工作物を設けてはならず、甲地において、貯水・排水または引水のために設けた工作物の破潰または阻塞によって乙地に損害を及ぼし、または及ぼすおそれがあるときは、乙地の所有者は、甲地の所有者に、その負担で修繕もしくは疏通をさせ、必要があれば予防工事をさせることができます。なお、工事費用の負担について別段の慣習があればそれに従います。例外として人工的排水が認められるのは、高地の所有者が浸水地を乾かすためまたは家用・農工業用の余水を排泄するために、公路・公流または下水道にいたるまで低地に水を通過させる場合ですが、その場所および方法は、低地にもっとも損害の少ない方法を選ぶべぎです。さらに、土地の所有者は、その所有地の水を通過させるため高地または低地の所有者が設けた工作物を使用することができますが、その場合には、利益をうける割合に応じて工作物の設置および保有の費用を分担しなければなりません。
土地の所有者は、隣地の所有者と共同の費用をもって境界を標示すべき物を設けることができます。界標の設置および保存の費用は相隣者が平等に負担し、測量の費用はその土地の面積に応して負担します。
所有者の異なる二棟の建物の間に空地があるときは、各建物所有者は、他の建物所有者と共同の費用をもってその境界に囲障を設けることができます。その設置、保存の費用は相隣者が平等に負担します。囲障の林料および高さについて当事者の協議が整わないときは、板屏または竹垣にして高さ2メートルとしますが、相隣者の一人が費用の増加分を負担するならば、より良好な材料を用い、高さを増すこともできます。これらの規定と異なる慣習があるときは、それに従います。
境界線上に設けられた界標、囲障、障壁および溝渠は、相隣者の共有に属するものと推定されます。この共有は、各共有者が単独に分割請求できない互有といわれるものです。共有の推定の例外として、一棟の建物の部分をなす境界線上の障壁および高さの不同な二棟の建物を隔てる障壁の、低い建物をこえる部分があります。前者は建物所有者に、後者は高い建物の所有者に専属すると推定されます。なお、相隣者の一人は共有の障壁の高さを増すことができますが、障壁がその工事に耐えないときは、自費をもって工作を加えまたは改築をしなければなりません。それによって高さを増した部分は、工事をした者の単独所有となります。この場合に隣人が損害をうけたときは、賠償しなければなりません。
隣地の竹木の枝が境界線をこえるときは、その竹木の所有者に枝の伐採を請求できるだけですが、竹木の根が境界線をこえて侵入してきたときは、自分でこれを截取することができます。
建物を築造するには、境界線から50cm以上の距離をおかなければなりません。これと異なる慣習があるときは、それに従います。これに対し建築基準法六五条は、防火地域または準防火地域内にある建築物で、外壁が耐火構造のものについては、その外壁を燐地境界線に接して設けることができると定めており、面者の関係が問題となります。とくに、近年では、中高層建築物の建築をめぐる日照問題の一環として、境界線からの距離を保持すべきか否かが争われることが多くなっています。この間題について下級審の裁判例は、建基法六五条を民法二三四条一項の特則と解するものと、私法上の権利関係はもっぱら民法の規定によるとするものとに分かれています。建基法六五条は、火災の危険の防止あるいは延焼の防止という公共的な見地から、同条の定める条件をみたさない場合には、民法二三四条の規定と異なる慣習があるとき、または隣地所有者との合意のあるときであっても、その外壁を隣地境界線に接して設けることはできない旨を規定したものであって、燐地との利用上の調整をはかり、相隣者相互の生活利益を保護しようとする民法二三四条とは次元を異にすると解すべきです。また、民法二三四条の規定と異なる慣習の有無については、公路と直行する境界線か平行する境界線かの別、問題となっている建物が低層のそれか中高層建築物かの別、周辺住民の多数が当該建築に反対の意向を有しているか否か等の諸要素を検討することが必要です。なお、50cmの距離をおかないで建築しようとする者があるときは、隣地の所有者は、その建築を廃止し、または変更させることができますが、建築着手の時から一年を経過し、またはその建物が完成した後は、損害賠償を請求できるだけで、建築の廃止または変更を請求することはできません。ただし、これらの期間内に廃止または変更の請求があったのにあえて建築を続行した者については、本条による保護は与えられません。

土地
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