第三者が占有している土地の明渡

所有権は私法上の権利です。封建社会では、所有権は純粋に物に対する権利として成立せず、その物支配関係に身分的支配従属の関係を含むものでした。これに対して近代私法の体系の中核をしめる所有権は、純粋に物に対する排他的支配権能であり、また完全な個人的絶対的権利であることを特色とします。近代私法における所有権は、かくて一切の人的関係また協同体的関係から分離されたところの物質的支配それ自体を目的とする自己完結的存在となるのであり、そしてその反面において一切の人的関係は、人々の自由意思を媒介とする契約関係そのものとなります。近代私法における物権法と債権法の分裂対立も、したがって特殊に近代的な歴史現象であり、非歴史的、観念論的に考察されるべきものではありません。所有権の絶対性、自由性は、所有権の保護が、一切の私的権力の手から離れて、ただ特殊に近代的な国家の政治権力の手に委ねられることになった歴史的事実の反映であり、その結果であるものにほかなりません。かくて所有権は、現実的な支配の事実と離れて独立に所有権という権原にもとづいて保護されるところの純粋に法的存在となるのであり、またこのような保護は、特定人との関係として限定的に与えられるものではなく、いわゆる対世的効力を持つものとしてあらゆる人に対する関係で与えられるべきとされることになります。所有権がこのように観念的存在となり、またそれ故に絶対的性格をもつことは、次に述べる物権的請求権をとおして貫徹されているといえます。所有権者が現実に物を支配しているか否かにかかわらず、ただ観念的な題名を保有することにもとづいて所有権者は、この請求権をあらゆる妨害者に対して対世的、絶対的に行使しうるものとされているからです。

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土地

物権的請求権とは、物権の内容の完全かつ円満な実現が妨害ないし妨害されるおそれのある場合に、物権者が妨害者の妨害を除去することを請求する権利です。物権者がこのような請求権を有することについて民法には一般的規定がありませんが、占有権について規定があること、また民法が本権の訴を前提としていることを根拠とし、さらに物の支配を目的とする物権の通有性にかんがみて、解釈論上このような物権的請求権が認められるべきとされることについて、判例、学説上異論をみません。所有権にもとづく物権的請求権としては、所有物の占有侵奪がある場合に占有を失った者が現に占有している者に対してその物を返還すべぎことを請求する権利、つまり所有物返還請求権のほか、所有物妨害排除請求権、所有物妨害予防請求権が占有権の場合に対応して認められるとされています。この点にも異論はありません。この所有権における物権的請求権について特に問題となるのは、相手方の故意、過失を必要とするか否かの点と、所有物返還、妨害排除、予防の費用負担を誰がなすかの点です。物権的請求権は物権のあるべき支配力が現在の客観的違法状態によって妨害されているときに、その原因を除去し真のあるべき支配力を回復するための請求権と解することができるから、妨害者の故意、過失にかかわりなく発生するものといえます。通説、判例もこのことを認めていますが、費用負担について常に相手方の負担とすることを、物権的請求権の内容と考えているようです。
物権的請求権と費用負担の問題は別個の原理にもとづくと解され、後者は法的にあるべき状態を回復するために必然的に生じる損害を何人に帰せしめるべきかの、不法行為、契約法その他の責任の原理によって別個に処理すぺき問題であると考えられます。学説またその修正説が説得的と考えられるからです。所有物返還請求権の相手方が、その権限なき占拠を解き所有地を返還すべきことは当然ですが、仮にこの所有地上に建物を建てていた場合にはこれを収去するための費用負担の問題が生じます。通説、判例とこの学説は、結果においてこの事例について結論を異にしないでしょうが、前者によれば物権的請求権の内容としてその負担は相手方に帰せられるのであり、後者によれは、占拠者の責任を理由として相手方負担とされることになります。
民法は物権的請求権についての一般的規定をもちませんが、占有権については特別の規定があります。民法はこれを占有訴権と総称しています。そして占有訴権とは、物の事実的状態を支配する者が、その事実的支配に対する他人の侵害もしくはその可能性を、事前もしくは事後に排除もしくは阻止するために認められる権利です。したがって、一種の物上請求権です。民法は占有の侵害にもとづく損害賠償をも、占有訴権の内容としていますが、しかし損害賠償の請求権は純粋の債権であって、物権的請求権ではありません。占有訴権の目的としては、占有権におけるところの事実的支配の侵害を回復することができれば必要にして十分と考えられるぺきであり、したがって損害賠償請求の問題は、占有の章の特別の規定のほかは、不法行為の規定に従うべきものです。
占有訴権が認められるそ理由は第一に自力救済を禁じるとにあります。そして第二に、占有訴権の行使によって本権の保護がはかられるからであるとされます。占有訴権の本質は、権利に関する証明を省略することによって結果において所有権の保護を強めることにあり、それ故にこそこの訴権の発展がもたらされたと考えられます。これとは逆に今日では、占有に伴う権利推定および、登記の推定力という法律構成が確立しているために、占有訴権が本権である所有権の保護につかえる余地は少なくなってきています。そのため占有訴権の現代的意義として、本権が債権とされるために物権と対比して弱い効力しかもたないと考えられています。不動産賃借権の保護のために、この訴権を利用することを主として考える有力な学説が登場しています。
占有訴権の一つとして、占有者がその意思にもとづかずに所持を奪われたとき、その物の返還を求める訴えについて、民法は規定しています。この占有回収の訴えを設間の場合にも提起できます。しかし、占有回取の訴えの場合には、請求者は過去において自己がその土地を占有していたこと、それを相手方に奪われたことを主張、立証すれば足りるのですが、この占有回収の訴えは、善意の特定承継人つまり、土地を不法占拠者から善意で譲り受け、または賃借した者などには行使することができません。また占有を侵害された時から一年以上経過したときはもはや行使できません。所有物返還請求権は、所有権それ自体と同様に消滅時効にかからないとともに、この善意の特定承継者に対しても行使しうるので、二つの請求権が競合して存在する意義はあるといえます。
土地所有者は不法占拠者に対して、所有物返還請求の訴えと、占有回収の訴えの両方を同時に提起してもよく、また一方の訴えで敗訴しても他方の訴えを提起する権利を失いません。いわゆる既判力は及びません。しかしこの二つの訴えのうち結局本権の訴えたる所有物返還請求の訴えが決定的意義をもつため、ことが両方の訴えの重なり合う原状回復の請求に関するかぎり、本権の訴えが先に勝訴で確定された後、それと矛盾もしくは重復する占有回収の訴えを提起する必要、ならびに意義が認められるべきかは疑問とされる余地があります。この点についての見解は、いわゆる新訴訟物理論の立場から、占有訴権も本来的には物権的請求権にほかならないことに着目し、所有物返還請求の訴えと占有回収の訴えとは、目的物の返還を目的とし、ただ、理由づけを異にする二つの主張方式にすぎないが故に、一方を主張しただけで敗訴した場合の敗訴判決の既判力は他方にも及び、その結果、他方を主張して再度の訴えを起こすことはできないとしています。

土地
土地所有権の変動/ 登記名義人と所有者の不一致/ 第三者が占有している土地の明渡/ 地下埋蔵物の所有権/ 分譲宅地の守るべき法律上の義務/ 袋地所有者の通行権/ 土地取引の安全と公示制度/ 土地登記簿/ 土地登記簿の記載の信頼性/ 土地所有権の仮登記と本登記/ 土地の買主と相続人の関係/ 地上権と借地権の関係/ 空中と地下の地上権/ 地役権の意義/ 無償で貸した土地の取戻し/ 借地上の建物の保護/ 借地権価格と底値価格/ 土地を目的とする担保/ 土地の権利移転型担保/ 土地売買契約における買戻特約/ 譲渡担保と売渡担保/ 土地・建物の一方の抵当権の実行/ 抵当権の土地に対する拘束力/

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