土地所有権の変動

物権変動とは、物権の発生、消滅およびその内容の変更をいいます。その原因として最も重要なのは法律行為ですが、その他、民法に規定される物権変動の原因として、取得時効、消滅時効、混同、無主物先占、遺失物拾得、埋蔵物発見、附合・混和・加工、相続などがあります。これらのうち、土地所有権変動の原因となりうるのは、法律行為、取得時効、相続のみです。民法以外の法今による物権変動の原因としては、公用徴収、没収などもあります。

スポンサーリンク
土地

まず問題となるのは、所有権が移転するためには、当事者間の単なる合意で足りるのか、それともなんらかの方式を順守することが要求されるのかということになります。この点について、ローマ法では、握手行為または法廷譲渡という厳格な方式を経ることを要求しており、当事者間の合意のみで所有権が移転することはありませんでした。さらに、ゲルマン古い法においても、不動産物権の移転について、物権移転の契約と証人の面前での厳格な方式を伴った現実の移転行為が必要とされていました。このように、物権の変動について一定の方式を要求するシステムを形式主義といいます。近代においては、ドイツ民法が形式主義を採用しています。そこでは、物権変動を生じさせる契約を物権的合意とよんで、債権のみを生じさせる一般の契約と区別し、特に土地所有権譲渡については、当事者双方が登記所に出頭してという特別の方式を経ることを要求しています。さらに、不動産物権については登記、動産物権については引渡が、物権変動の効力が発生するための要件とされています。
形式主義では、歴史的には、一定の法律上の保護を与えるには外形的な表象の変化を要求した前近代法の考え方を起源としていますが、近代社会においては、物権取引の安全に寄与しています。これに対して、物権変動になんの形式も要求せず、当事者間の合意だけで足りる、とするシステムを意思主義といいます。フランス民法がこの主義を採用し、日本の民法もこれにならいました。つまり、ここでは、物権変動は当事者の意思表示のみに困りて其効力を生ずとされます。この主義をとる場合には、なんの外形の変化もなく所有権移転などが行なわれることになるために、物権取引の安全を保護するために、なんらかの法律上の仕組みを採用することが特に要請されます。民法は、そのために物権変動を第三者に対抗するために、不動産については登記動産については引渡を要求しています。
次に、所有権の変動が当事者間の合意のみによって生じるとしても、その合意とは、所有権移転のみを目的とする物権的合意にかぎられ、その合意は、当事者間に債権的な権利義務関係を発生させる債権的合意とは別個独立に行なわれなければならないのか。これは物権行為の独自性の問題です。売買や贈与のように終局的には物権の変動が目的とされている法律行為を例にとると、当事者が後日登記または代金支払いとともに所有権を移転させる合意をあらためて行なう旨の特約があれば、問題はありません。債権行為にもとづく物権行為によって物権変動の効果が生じるわけです。物権行為の独自性を認めるかは、そのような特約がないときでも、常に当初の契約とは別個独立の物権行為が必要か、それとも初めの契約だけで物権変動が生じるのかをめぐって争われます。判例では、ほぼ一貫して、売買など物権変動を終局の目的とする契約においては、物権変動を生じさせるための特別な独立した意思表示を必要とせず、原則として契約の成立と同時に物権の変動が生じる、とする態度をとっており、学説も多くはこれに賛成しています。これに対して、独自性を認める見解は、判例の態度を日常取引の現実に合致しないと批判しており、日常取引においては、売買契約の成立によって所有権が当然に買主に移転するとは意識されておらず、むしろ物の引渡、登記、代金支払いなどの外部的徴表を伴う行為があることによってはじめて移転すると考えられています。このように、物権行為の独自性の問題の実質的な意味は、物権変動が契約成立と同時に生じるのを原用とみるか否かに存するとみられますが、独自性を否認する見解のなかにも、所有権の移転時期を目的物の引渡、登記または代金支払い時とするものもあり、独自性の問題と物権変動の時期とに関連はないことに注意すべきです。さらに、この問題は、当事者間で特約が存在しない場合における法律行為の原則的把握にかかわるものであって、現実にはかなり限定的な問題であることになります。
取得時効および相続の場合には、一定の事実関係の発生によって、取引関係を媒介することなく土地所有権の変動が生じます。そのため、物権取引上の大原則である公示の原則との調整がとりわけ問題となります。
占有の始めに善意無過失である場合には一○年間、そうでない場合には二○年間、所有の意思をもって他人の物を占有すると、占有者は、その物の所有権を時効によって取得します。この反面として物の所有者は、その所有権を失います。時効による取得は、原始取得すなわち物権の絶対的発生原因とされますが、所有権の時効取得の場合には、実質的には承継取得つまり相対的発生原因です。原始取得とされるのは、時効取得によって、前主の権利に付着した負担や暇疵が除去されることを説明するためにほかなりません。それでは、時効による土地所有権の取得を主張するためには、登記が必要か。判例と学説との間に顕著な対立が存在する問題です。
判例では、この問題について、時効完成時の登記名義人に対しては登記なくして時効取得を対抗しうりますが、時効完成後に物権を取得した第三者に対しては、時効による権利取得を登記しておかなければ、対抗しえないとする法理を確立しています。この法理の論理的帰結として、取得時効の起算点を任意に選択することは許されないことになります。これを認めると、時効完成を遅らせることが可能となり、原権利者からの譲受人すべてを時効完成前の譲受人にすることが可能になるからです。以上の判例法理によれば、時効取得者は、可能なかぎり早期に原所有者に対して移転登記を請求しておかないと、第三者によって自己の所有権取得を脅かされることがあります。判例は、このようにして、実体的権利の帰属者と登記との一致を図るという物権取引上の要請に応えようとするわけです。
学説上は、判例の立場を批判する見解が多く、大別すると取得時効の要件として占有しか要求されていない以上、占有が継続しているかぎり、時効取得者は登記なくして時効による所有権取得を主張しうるとする登記不要説。時効期間の起算点のくり下げを認める説。反対に登記を重視して、登記に時効中断の効力を認める説などがあります。
相続によって、土地所有権は、被相続人から相続人に承継されます。土地に付着する諸負担も同様です。共同相続が原則である現行法のもとで、相続と登記との関係がとくに問題となるのは、相続人の一人が勝手に単独名義で相続登記を行ない、これを第三者に譲り渡したときに、他の共同相続人が、登記なくして第三者に対して相続土地に対する自己の持分を対抗することができるかということです。一般には登記に公信力が認められていない以上、処分した共同相続人が有する持分以上の権利を第三者が取得することはないことを理由に、他の共同相続人は登記なくして自己の持分を主張しうると考えられていますが取引安全保護の視点から問題を肯定する見解も有力です。

土地
土地所有権の変動/ 登記名義人と所有者の不一致/ 第三者が占有している土地の明渡/ 地下埋蔵物の所有権/ 分譲宅地の守るべき法律上の義務/ 袋地所有者の通行権/ 土地取引の安全と公示制度/ 土地登記簿/ 土地登記簿の記載の信頼性/ 土地所有権の仮登記と本登記/ 土地の買主と相続人の関係/ 地上権と借地権の関係/ 空中と地下の地上権/ 地役権の意義/ 無償で貸した土地の取戻し/ 借地上の建物の保護/ 借地権価格と底値価格/ 土地を目的とする担保/ 土地の権利移転型担保/ 土地売買契約における買戻特約/ 譲渡担保と売渡担保/ 土地・建物の一方の抵当権の実行/ 抵当権の土地に対する拘束力/

       copyrght(c).土地の買い方ガイド.all rights reserved

スポンサーリンク

プライバシーポリシー