不動産市場の客体

不動産は、土地およびその定着物であり、定着物の主たるものは建物です。定着物は土地に固着している状態によって不動産となり、または動産になります。立木は、立木に関する法律の規定にしたがって登記されると独立の不動産になりますが、その他の立木は土地と一体化した定着物です。その外に工場抵当法、鉱業抵当法などの規定で不動産とみなされるものがあります。このような種々雑多の不動産が、不動産市場の客体として流通過程に登場してくると、その様相は複雑多岐を極めてきます。目的別にそれを列挙すると次のとおりです。
売買目的の場合
完全所有権の客体。土地、建物、その他。
用益権の客体。借地権(宅地)小作権(農地)地上権(主として山林)地役権(要役地の所有権とともに)借家権(建物)
用益権が設定されている不動産。借地権が設定されている宅地(底地)小作権が設定されている農地(小作地)借家権が存立している建物とその敷地(貸家)地上権・地役権が設定されている土地。
貸借目的の場合
地代。借地料(宅地)小作料(農地)
家賃。住宅家賃、その他の家賃(事務所・店舗・倉庫等)
使用料(借地・借家法の適用以外のもの)
賃料の補助的なもの。権利金、保証金(助成金)敷金
金融目的の場合。不動産自体の担保価値、企業用資産としての担保価値。また、不動産自体の様相による分類をすると次のとおりです。
地上物件の有無による分類。地上物件のない土地。更地宅地の素地としての農地・山林地上物件があってもないと仮定する土地
地上物件のある土地。建物とその敷地、立木・果樹などのある土地
収益状態による分類。収益目的の不動産、山林収益を目的とする土地、農業取益を目的とする農地、地代収益を目的とする貸地、家賃収益を目的とする不動産(建物とその敷地)企業収益を目的とする固定資産(商業用・工業用等)
収益を目的としない不動産。自家用住宅(建物とその敷地)公共または公益の用に供されている不動産・道路等の公共用地
このように各種多様に分類される不動産の数量を種類別にみる資料はありませんが、不動産市場の主たる客体である宅地と建物について数量的な観察をしてみます。

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土地

国連食料農業機関(FAO)の調査資料によると、日本の国土の総面積は36,966千haで、それを地目別に分けると、農地6,952千ha、森林25,402千ha、未利用地・宅地・道路・荒地などの合計が4,612千haになっています。この数字は日本の国土の広さを示すものです。しかし、農地は、農地法の規定に制約され、樹木を対象とする山林は不動産市場の外で取引されます。不動産市場の客体になるのは既成の宅地と、宅地の素地としての農地および山林が主たるものです。現在、実際に最も近い宅地面積を把握する資料は、固定資産税法における課税客体としての宅地ですが、それが、どれだけ不動産市場の客体として流通過程に登場してくるかは、宅地需要が旺盛な地方ほど多いはずです。宅地面積が増加した地方は、都市人口の増加が著しい関東、関西および中部地方です。したがってそれは、不動産市場の客体としての土地の増加であるため、不動産取引が活発な地方だということができます。それらの地方は、地価問題や都市の過密化に伴う公害問題などがやかましくいわれている地域になっています。不動産市場の主体の問題や、動態的な地価問題と併せて研究すべき資料です。また、土地は生産されるものではないため、以上のように宅地需要が増大すれば、他の用途に利用されている宅地以外の土地が宅地に転用されているはずです。
素地としてのそれらの土地が宅地化するまでの流通過程が正常かどうかは重要ですが、実情は野放しの状態といっても過言ではありません。そして、造成後の宅地価格が素地の価格をつりあげ、つりあげられた素地の価格が土台になって造成後の宅地価格が決定するという悪循環を繰返しています。
工業用地の需要に対応して転用される宅地の素地の供給予想面積をみると、どれだけの面積の田畑・山林などが工業用地として転用されたかを、通産省調査統計部編集の工業用地統計表にみると、農地(田・畑)がその首位を占めています。そこで、農地が住宅用地や工業用地に転用された面積を,農林省農地局農地課調べの農地転用許可実績でみると、5,000坪以上の大臣許可による大口転用や、国または都道府県が買収する農地法第5条1項1号の農地があるため、実際上の転用面積ははるかに 増加します。なお、住宅および工、鉱業等の用地に転用された農地について、地方別の人口一世帯当り面積を計算してみると、地域的なブロック圏によって異なる不動産市場の動向を知ることができます。これでみると、宅地需要は全国的な規模で増加していることが判ります。住宅団地の規模が縮小するのは、地価高を反映して地主が土地を売り惜しみすることに最大の原因があるというので、土地の譲渡益を一般所得税と分離して比例課税にするなどの税制措置によって、宅地の素地の取得を容易にする試みが進められています。

土地
土地の利用面積と宅地/ 住宅需要の増大/ 悪性スプロール/ 宅地基準/ 宅地政策/ 諸外国の宅地政策/ 土地贈課税制度/ 開発負担金/ 先買権と土地収用/ 市街地の地価/ 都市の人口規模と地価/ 超過利潤の地代への転化/ 宅地地代の源泉/ 宅地と生活利便性/ 住宅需要の増大と地代騰貴/ 地代と地価/ 地価の波及現象/ 宅地の使用価値と交換価値/ 地代と土地所有/ 土地需要者側の条件/ 土地の利用価値判定/ 一般市場と不動産市場/ 不動産市場の客体/ 不動産市場の主体/ 不動産業界の展望/ 不動産取引の状態/ 一般的な土地価格の動向/ 地価高騰の原因/ 不動産鑑定評価基準/ 鑑定評価の対象の不動産/ 不動産の価格と特徴/ 不動産鑑定評価と主体/ 不動産の鑑定評価で求める価格/ 不動産の鑑定評価の基本/ 不動産鑑定評価の方式/

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