土地の利用価値判定

現代の地価形成の体系を考察するに当たって、見落とせない問題として、地価形成の基礎である土地の効用価値判定の体系は時代と立場によって異なるということであり、現在の地代形成は、利潤の追求を終極の目標とする資本制社会の経済法則のもとで生じている現象だという点です。土地はその時代時代に必要な用途でもって利用されてきました。例えば社会の主要な経済的基礎が農経生産におかれていた時代には国土の農地的利用が重視され、大きな価値をもってきました。しかし、やがて工業が社会の支配的な生産様式になると、工業生産に都合のよい土地は、工場用地へと、またそれに附随した道路、鉄道、港湾、労働者住宅の用地へと利用されます。こうしてその時代時代の要請に応える形で土地は利用され、そのような利用形態が高い価値を実現し、地価にも反映しているわけです。それでは現在の地価の体系をつくりあげている基礎は、土地の利用価値が貨幣価値に換算できる範囲内で成立しています。つまりそれは、利潤を追求するという立場のうえになりたっているのであり、貨幣に換算できない要素、利潤追求と関係ない要素は、たとえそれがいかに重要な効用価値をもつものであっても、地代形成の要因とはなってこないのです。したがって、土地がより高い地代を生む利用形熊へ利用更新されているからといって、資本主義の枠内での土地の利用価値の上昇にすぎないのです。

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土地

例えば緑樹は地下水を浄化し、土地と空気の湿潤を保ち、洪水を防ぎ、都市の空気を浄化するといった機能をもっています。美しい山や緑は、国土の自然景観を構成する重要な資源であり、国民生活にとって欠かすことのできないレクリエーション活動の場でもあります。このように山や緑というものは国土の構成という点からみても、国民生活にとっても、大変重要な要素をもつものですが、実際の地代形成に際しては、それらの要素はあがってきません。現在、日本のいたるところで新しい開発が行なわれ、工業用地の造成、大規模な宅地開発、高速道路の新設等々がすすんでいます。その過程で、史跡や文化財、自然景観が壊滅の危機にさらされています。そこで、古都保存法の成立をみるなどいくつかの手がうたれているわけですが、しかし、その過程で様々な問題が起こっています。例えば古都保存法で保存区域に指定されると地価が下がるというので指定区域の縮小を要求したり、指定前に売り急ぐといった現象が起きています。また、地主からは、史跡や風致として残したいのなら、公共機関その他が買いとるべきだと主張するものも現われています。たしかに風致や史跡は、その土地を所有しているからといってそこから直接利益があるわけではありません。しかし、いうまでもなくそれは大きな価値をもちます。四季こもごも移りかわる日本の自然は、日本人全体にとって誇ることのできる財産であり、そのような風物は、人間性の陶治や美しいものに対する感受性、自然愛護の精神を育むこよない場であり、生活環境を美しく形づくるために欠かせない要素としてこれまで大切にされてきました。文化財は、民族の歴史的遺産として一国の文化を形成するばかりでなく、歴史教育に果たす役割は他をもってかえることができないものだとされてきました。
現在の土地利用価値評価と地価形成の体系には、このような国民生活の福祉や、文化の維持、発展という立場にたった要素は、全く無視されています。それでは、実際にこれらの要素に対する価値評価が全然行なわれていないのかといえば決してそうではありません。東海道新幹線の開通に伴う景観補償事件は、その例です。東海道新幹線が琵琶湖沿いに通るに際して、近江鉄道湖東線は、新幹線の高架によって観光路線としての風致を害され、乗客が滅少すると主張され、補償金1億円が国鉄から近江鉄道に支払われました。これはのちに会計検査院によって不当支出であると指摘され、国会でもとりあげられて新聞記事を賑わしたのでよく知られています。他にも類似の現象が起きています。東京都が高潮対策事業の一つとして隅田川沿いに防潮壁をつくろうとしたところ、大川情緒を売り物にしてきた柳橋の料理組合が反対し、これができると隅田川がすっぽりかくれてしまう。隅田川あっての柳橋であり、防潮壁の高さだけ料亭もカサ上げしたい。その費用を補償せよ。と要求しました。これも景観が金額に換算されようとした例です。
このように、自然景観や風致でも、お金と結びつき、それが利潤追求の手段となっている場合には、現実的な経済価値をもつものとして意識されます。このことは景観が価値をもっていることのきわめて身近な例であり、証明です。そして、このような価値は営利の対象として利用されている場合には、全額に換算されますが、そうでない場合にはまったく評価されないのです。つまり、現実の土地の利用転換に当たっては、こうした評価項目の入らない地代形成ならびに評価体系に基礎をおいた価額によって地価が左右され、低い地価の土地から高い評価を下す土地利用へと売り渡されてしまっているのです。
現在進行している自然や国土の破壌、虫食い的な開発は、このような利潤追求の立場にたって成立している地価評価の体系を経済的背景として進行しているのであり、もし、土地の利用価値が国民の生活福社や文化といった立場から評価されておれば、地価形成の性格と士地利用転換は、もっとちがった形で進んでいるであろうと予想されます。
現在、住宅地の地価は、商業地が実現する地価よりも低く、より高い地価を実現しうる商業的利用によって、住宅は都心から郊外へと追い出されています。これは、住宅地の地価を実現する源である労働者の賃金が、相対的に低いためです。労働者の賃金が上昇し、より高い地代、地価負担力をもってくれば、商業的利用にも対抗できます。地価の体系もまた変わってきます。マンション等建築の高層化は、地代負担能力を高めるための一手段であり、高級住宅地が市街地内部に存在し続けることができるのは、経済力の高さによって商業地的地価に対抗できるからです。現在の地価形成の体系は、現代日本資本主義の発展段階の経済的表現形態だといえます。

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