土地需要者側の条件

立地上選択の余地が大きい場合、例えば全国的視点で工場用地を選択することのできる大企業、コンビナートのための用地取得は有利に、安く買えます。昭和30年代に地方自治体は競って工業用地を造成しましたが、その立地は工場の都合で決められています。雑草が生えたまま放置されている場合もあります。このような場合、土地は買い叩かれ、安くならざるをえません。立地上選択の余地が少ない場合、同じ工業用地でも下請企業は、入手すべき土地の立地条件を大企業の進出する地域に限定されるため、選択の自由度が少ない。土地は所有者の言い値で買わされるということが起きる可能性が強く、住宅地についても同様で、住宅の場所を決めるのに比較的自由度の大きいホワイトカラーは、時間距離を廷長しても地値の安い場所を選べるのに対して、住居の位置が制限されているブルーカラー、サービス業徒事者は地価の高い場所に住まざるをえません。その経済的負担能力がない場合には、居住状態を悪化させてもそのような場所を選択せざるをえないのです。このように、土地所有側、土地需要側の経済基盤の強さ、両者の力関係が地価形成を左右します。したがって、両者の経済基盤に影響を与える要素を抽出することが、地価形成の解明には必要になってきます。

スポンサーリンク
土地

日本の農業政策は、零細農業を縮小し、なるべく離農を促進し、大規模近代農業へと再編成すべく動いています。このことは、ある種の階層の農民の、農業によって生活を維持するという行きかたを困難にさせ、そのような方向での経済的基盤を弱いものにしています。それは、農地に対する執着を弱体化し、全体として農地価格を引き下げる役割を果たすことになります。外国の安い農産物の輸入によって、国内で生産される農産物の価格が下がり、農民が農業で食っていけなくなればなるほど、価格が低落すればするほど、そして出稼ぎと離農が進めば進むほど、農業地代のとり分も小さくなり、地価は安くなっていくはずです。
土地税制も、土地所有側の経済基盤に大きな影響を与えます。例えば現在の固定資産税は一種の土地維持費となっています。固定資産税の現状は、一般にその評価および税率において、土地所有者の経済基盤を著しく圧追するという場合は少ない。しかし、もし評価額が時価に近づいていくと、その支出に耐えることのできない住宅地や零細商業経営は、土地を手放し、その地代負担に耐えるものに売り渡さざるをえなくなります。反対に地租が金利よりも低く、あるいは地価の上昇率が金利よりも大きい場合には、その負担に耐えうるものであれば、売却の経済的必然性は永久に起きないことになります。
これらのことがらは、地価形成が政治によって左右されることを示しています。例えば現在見きわめのつかなくなった地価形成を前にして、なんとかその安定がはかれないものかと腐心されています。しかし、すでにみたように、一般的で、客観的で、適正な土地価格というものは存在しません。土地の価格は土地の利用方法に従属しているからです。現在注目を浴びている合理的な地価評価方法を確立するという課題は、基本的には自由に土地を入手し設備投資をはじめとする各種の資本活動の自由を保障すること、道路、港湾などの産業基盤、住宅建設を中心とする生活基盤強化のための公共没資の効率をあげることが直接の動機であり、これは資本主義体制において資本と土地の対抗関係がたどる必然的方向です。生産力の急上昇、巨大な投資活動、経済成長、社会的資産の膨張、都市構造の変化、土地需要の増大と利用更新の活発化などが起こっている時代、つまり社会的総労働の成果が発展している時代には、土地所有の能力、自己の土地独占を媒介としてこの剰余価値のますます増大させる部分を横取りし、したがって自己の地代および土地そのものの価格を増加させる能力が発展します。そして資本活動を円滑に行なうためには、このような土地所有が主張する地価を抑制することが必要です。土地所有権を近代化し、土地所有権の土地用益権への従属が図られる必要があります。それには、用益権に対応した適正な価格であることが必要となります。所有者の主張する価格ではなく、適正な価格であることが必要となるのです。
土地増加税、空閉地税、地価公示制度といった土地に対する税金のかけ方の論理は、地価形成の過程に高度の政治が関与していることの証左です。公共用地収用価格の計画時点での凍結、公共機関によって造成された工業用地、住宅用地の分譲価格の評値方法などをみても、決して時価でも適正価格でもない政治的地価決走の方法がとられています。
地方財政を動員して造成された工業用地はほとんどが原価方式によって評価売却されています。公共住宅地の分譲にしても同じであり、農地、山林などの素地買収費と造成費などを加えた原価で分譲されています。しかしもともと土地の価格に原価という概念は存在しません。これらは国民の負担においてある種の階層に利益を与える結果となっています。計画時点での地価凍結という発想は土地を利用する側の論理であり、また、地価が社会、公共投資の結果上昇しているからそれを社会還元する必要があるという論理を貫徹するためには、高速道路や地下鉄をつくることによって地価の上昇を生じている都心部をどうするかという問題を避けて通れません。都心部においては、計画時点での買収とか土地増加税といった概念は現われていません。およそ資本主義の都市はもともとこうした集積利益、外部経済の内部化を通じて生成発展しているものだからです。
現在の地価評価方法は、地倍の形成に一定の影響を与えていますが、それらはいずれも資本主義のもとでの評価方法であり、現存する様々な評価方法はすべて土地利用の立場に都合のよい方法をとっているのです。しかし、資本制社会においてはこのことは一向に不都合ではありません。必要に応じて必要な評価方法がつくり出され適応されてきたのです。ただ問題はこのような評価方法が、現在まったく別の論理、土地所有者の生存ないしは生活の論理と対立していることであり、土地が売買され、利用更新されていくという資本主義的都市の発展、変化が抵抗をうけていることです。農民にしても、都市住民にしても、どのような価格であれ、土地を手放すことによって生活基盤を失うと考えると土地の売却自体に反対します。これは、もはや資本主義社会における差額地代的な地価形成論理からはずれ、その範囲内での問題ではなくなっています。資本主義の論理と生存の論理の対立といえます。

土地
土地の利用面積と宅地/ 住宅需要の増大/ 悪性スプロール/ 宅地基準/ 宅地政策/ 諸外国の宅地政策/ 土地贈課税制度/ 開発負担金/ 先買権と土地収用/ 市街地の地価/ 都市の人口規模と地価/ 超過利潤の地代への転化/ 宅地地代の源泉/ 宅地と生活利便性/ 住宅需要の増大と地代騰貴/ 地代と地価/ 地価の波及現象/ 宅地の使用価値と交換価値/ 地代と土地所有/ 土地需要者側の条件/ 土地の利用価値判定/ 一般市場と不動産市場/ 不動産市場の客体/ 不動産市場の主体/ 不動産業界の展望/ 不動産取引の状態/ 一般的な土地価格の動向/ 地価高騰の原因/ 不動産鑑定評価基準/ 鑑定評価の対象の不動産/ 不動産の価格と特徴/ 不動産鑑定評価と主体/ 不動産の鑑定評価で求める価格/ 不動産の鑑定評価の基本/ 不動産鑑定評価の方式/

       copyrght(c).土地の買い方ガイド.all rights reserved

スポンサーリンク

プライバシーポリシー