地価の波及現象

土地に対してある投資が行なわれるとその周辺の地価は騰貴します。これは、その投資によって周辺地域の土地利用効率が高くなったと考えられるからです。田園に住宅団地ができたとたんにまわりの地価がはね上がります。次に周辺地を買取しようとしても手の出ない価格になっています。このような現象は、一般に地価の波及現象として受けとめられています。土地利用転換の可能性が大きく、投資活動が活発であり、土地の売買が頻繁であるときは、波及の度合いは大きく、範囲は広い。反対の場合は波及の度合い、範囲は小さい。つまり、商業地化、住宅地化などのスピードが早ければ早いほど波及現象は強く現われます。経済の高度成長政策がとられ、全国的に巨大な投資活動が行なわれていると、たんに新産都市に指定されたというだけで、波及効果が生じます。これは都市間の波及です。波及の方向は、遠距離宅地と劣悪地の利用がすすむほど優良宅地の地価は、逆及効果によって上昇します。これはすでにみたとおりです。それがさらに差額地代の増加要因となり、ふたたび郊外に波及し、宅地の離心傾向を強めます。

スポンサーリンク
土地

都市の内部では、商業地と住宅地が連続しているため、元来商業地としての価値と住宅地としての価値は本質的に違うものであるにもかかわらず、住宅地の地価は商業地の地価の波及をうけて、商業地の地価にかわってしまいます。つまり地価の波及現象は、隣接土地所有者によってすでに投資された土地と類似の利用形態を期待する現象です。
実際には、同種の土地利用が短期間のうちに成立するようになる場合もあれば、成立しない場合もあります。あるいはその可能性があったにしても、土地を買収し建築するためには、大きな資金を必要とし、そのような企業家がそこに現われる場合もあれば、現われない場合もあります。どちらの場合でもその土地は旧用途より低い次元の商業地として、あるいは住宅地のまま維持されることになります。土地が農地である場合は、この現象は空洞化現象として際だちますが、これは市街地内部についても同じことであり、商業地のなかに住宅地や空地が残ることも一種の空洞化現象にほかなりません。
同じ現象は、計画的土地利用の場合、開発利益の先どりという形で起こります。マスタープランがつくられて、その地域一帯の新しい開発計画が発表されると、とたんに地価が上昇します。公団などの土地調査係が足を踏み入れただけで地価騰貴がはじまります。この現象は、開発によって生じる超過利潤を先どりしようとするものです。山村のダム開発のような場合と違って、都市近郊の住宅団地などにこの傾向は強く現われます。その際漠然と買収にかかるよりも、その地域の将来の発展を正しく見通した計画であればあるほど、土地所有者は思惑を強め、高価格を期待するのです。
これらの現象は、都市の発展が急テンポの時代には避けがたい現象のように見えます。しかし、これを静的にみれば、土地の最有効利用に対する虚像現象といえます。つまりここでは、波及現象といった地価の運動法則が、商業施設、住宅などの合理的な立地をゆがめてしまうのです。合理的な土地利用、国土と都市の計画とは、最もふさわしい用途でもって、その土地を利用することです。すべての土地が、その位置的、自然的条件に応じて最有効に利用されるならば、合理的な土地利用が成立し、その場所の地代は最大になるはずです。すぐれた土地利用計画とは、いわば差額地代を最大にする土地利用といえます。しかし、土地私有制度のもとでは、それぞれの土地が互いに関係なく、最大限の利潤をあげうる利用の方法を期待し、主張します。ある地域に一つの施設ができると、もう同じ施設はなりたたないにもかかわらず、そのような土地利用を前提とした地価を形成します。つまり、土地所有者はその土地の最有効利用について虚像を描くのであり、地価の総和は、このような土地利用の虚像をもとにしてつくられます。世上いわれるところの地価は、実際に成立しうる土地利用と、それを基礎として形成される地代の資本還元としてではなく、土地利用の虚像のうえに戊り立っているといわなければなりません。したがって地価の総和は、実際に成立しうる地代の総和よりも大幅にふくれあがったものとならざるをえません。戦前に比べて何倍に上がったといわれる地価水準は、このような性格をもつものといってよいでしょう。
都心部においては、商業地としての利用価値がなく商業地代を発生させえない場所でも、それが期侍されます。その場所の本当の有効な利用方法は、都心に近くなるほどより高い地代を形成する住宅地でなければなりません。また郊外においても、空洞地の存在は、全住宅需要をはるかに上回る住宅地代を形成してしまうのです。このような土地の利用に対する虚像と地価の膨張という現象は、現実の土地税制、評価制度等にも反映しています。
例えば土地の固定資産評価は、売買実例を標準地点にとる路線価評価法を採用しています。しかし実際は、市場価格よりもはるかに低く評価されています。これはある意味で賢明な方法です。もし評価額を時価に近づけたならばそれは、現実に成立しえない土地利用と、それに基づく収益に対して税金をかけていることになります。固定資産評価において、地価形成と評価方法の矛盾が大きくあらわれ、社会問題化しないのは、評価水準が時価を大きく下まわることにより、結果として、以上の矛盾の顕在化を免れているからにすぎません。しかし最近は、それを次第に時価に近づける方向に向かっています。

土地
土地の利用面積と宅地/ 住宅需要の増大/ 悪性スプロール/ 宅地基準/ 宅地政策/ 諸外国の宅地政策/ 土地贈課税制度/ 開発負担金/ 先買権と土地収用/ 市街地の地価/ 都市の人口規模と地価/ 超過利潤の地代への転化/ 宅地地代の源泉/ 宅地と生活利便性/ 住宅需要の増大と地代騰貴/ 地代と地価/ 地価の波及現象/ 宅地の使用価値と交換価値/ 地代と土地所有/ 土地需要者側の条件/ 土地の利用価値判定/ 一般市場と不動産市場/ 不動産市場の客体/ 不動産市場の主体/ 不動産業界の展望/ 不動産取引の状態/ 一般的な土地価格の動向/ 地価高騰の原因/ 不動産鑑定評価基準/ 鑑定評価の対象の不動産/ 不動産の価格と特徴/ 不動産鑑定評価と主体/ 不動産の鑑定評価で求める価格/ 不動産の鑑定評価の基本/ 不動産鑑定評価の方式/

       copyrght(c).土地の買い方ガイド.all rights reserved

スポンサーリンク

プライバシーポリシー