住宅需要の増大と地代騰貴

資本主義社会においては、農村人口のたえざる都市への移動によって、都市は膨脹し発展します。それは必然的に住宅需要の増大をもたらします。都市における住宅需要は住宅地の新規供給をひき起こし、大都市においては、住宅地の限界は都心からの時間距離によって支配されていますが、住宅需要はこの限界地をさらに外延化させます。この場合、限界地の住宅地代は、その土地の既存の農業地代と宅地化のための開発投資に対する利潤の和が下限です。家賃の中の土地のとり分が、この数値を上回るのでなければ住宅地の新規供給は行なわれません。それは必然的に、既存の都心に近い住宅地の地代を上昇させます。資本主義社会においては土地もまた商品であるため、その価格は需要と供給の関係による影響をうけることになります。しかし土地はすべて位置的に固定しており、価格が上昇したからといってそれがすぐ供給の増大に結びつくわけではありません。地価はすでにみてきたように、商業地であれば収益、住宅地であれば住宅地としての効用価値を源とする差額地代を基礎として決まります。位置的要素を離れて地価は論じられません。もし地価が需給関係のみによって決まるものならば、都心から郊外へ向かうにしたがって下がる地価曲線は生じないといえます。住宅地の需要増大は、より遠隔の、より条件の悪い位置的、自然的条件の土地を住宅地に組込みます。その場合、農地、山林等が住宅地に転化するのは、住宅地としての地価が、農地価格に開発費用を加えた額を上回るときであるため、需 要の増大による地価上昇が、新現宅地供給の前提です。いわゆる宅地の大量供給による地価引下げ論は、この点を見落としています。

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住宅限界地の拡大は、職場への通勤時間距離のより劣等な場所の開発という方向でのみ行なわれるわけではありません。住宅地の新規供給は、これまでは住宅地として不適であるとして避けられた低湿地、災害危険地帯、騒音や空気汚染の激しい場所をも住宅地の中に組込みます。遠距離通勤の困難な住民は、このような場所であっても、立地せざるをえないからです。都市の膨張は、住宅地の距離的遠隔化、環境不良地域の開発という二つの方向で進行するといえます。
より遠隔の住宅地の開発が、都心に近い住宅地の地代を上昇させると同じように、環境の悪い住宅地の出現は、それよりも居住環境の優れた住宅地の地代、を押しあげます。いかなる不良地といえども、その場所が住宅地として開発されるということは、住宅経営を可能ならしめる最低限の家賃の収入が保証されるまでに住宅需要が増え、既存住宅の家賃が高騰していることを意味しているからです。位置的に、環境的に、あるいは都市施設の不備な劣等住宅地が開発されるときは、その住宅地は常にその都市における最低限の地代水準を示し、他の住宅地代上昇のテコあげの役割を果たすのです。
以上は、新規に供給された位置的、環境的に最劣等の住宅地との差によって生じる地代上昇ですが、他の要素によっても地代は上昇していく傾向をもっています。
都市の膨張とともに都市近郊農地の宅地化が進行し、近郊農産物価格は需要の増大、供給量の不足という関係の中でたえず上昇していきます。同時に農業経営の集約化、近代化は、土地の集約的利用による農業地代の上昇をもたらします。日本においては、明治維新ならびに戦後の農地改革の不徹底によって超集約的経営と高小作料が温存され、限界地地代の基底となる農業地代の高さを招いてきました。
宅地化のための開発費は、一般の物価高騰の中で年々上昇しています。新規開発費の増大は、既成住宅地の地代をこの面でも上昇させる作用を果たします。
都市住民の地代負担能力が一定である場合には、住宅建築の高層化、建て込みという居住形式の変化をひき起こします。建築技術が中層、高層の住宅を可能にし、アパート住まいが生活様式の一つとして定着し、通勤のための時間的、経済的、肉体的負担が一定の限度をこえてくると、中、高層形式の住宅建築は一般的な住様式となります。そして、いわゆるマンション形式の住宅に対する需要が大きくなり、家賃ないしは分譲価格が高騰してくると、マンション住宅の成立可能性をもった場所の注宅地代をさらに上昇させます。住宅建築の高層化のほか、住宅敷地の零細化とそれによる過密居住も、一世帯当り地代を凝集させることによって、住宅地代を上昇させる大きな要因となります。
全体として地価が上昇していっても、これを負担する能力、つまり賃金水準が上昇していけば、これに耐えることができます。しかし、資本主義の高度化が進むほど名目賃金の上昇にもかかわらず労働力再生産のための生活資料の多様化による必要費用、予弟の教育費、耐久消費財、交通、通勤費、労働の過酷さを癒すための誤楽、レジャー費、疲労回復のための飲酒代等の増大をもたらします。それらは、いずれも支出弾力性の小さい要素であり、その結果、地代、家賃負担能力はさらに押し下げられます。しかも一方、都市の巨大化は限界地地代の先端を都心からはいよいよ遠くへと追いやっているので、住宅を郊外に持ち、地代負担を圧縮するという方向にも限界を生じます。その結果、地代、家賃の負担は他の支出とのバランスをこわしてまで行なわれます。その支出弾力性はきわめて小さく、所得が少々増えても他の圧迫されている品目の支出にまわされます。それでも必要な地代、家賃を賄うことはできず、住居の質はさらに落とされます。これが現在の居住状態の悪化を招く背景ともなっています。

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