宅地と生活利便性

都心から郊外へ行くにしたがって下がる住宅地価のカーブの中でも、ところどころ突出した場所があります。このような町は、経験的にみて、一定規模以上の人口を有し各種の生活利便施設の設けられている町か、町のたたずまい、自然環境、風格などの優れた町です。歴史的にみた農耕社会と都市型居住地における住居の成りたちかたの本質的な違いは、前者が生活資料の入手と生活行為の場の多くを自己完結的に住居の中に求め、住宅は人間生活の基本的行為、労働、睡眠、食事、出産、育児、体養、療養から冠婚葬祭まで行なう場としてつくられているのに対し、後者は人間の集団的居住という定住様式を通じて、家族生活に不可欠の要素を除く大部分の生活機能を住居から分離し、それぞれを共同の施設として成立させている点にあります。それは、各人の住居において全生活行為のための場を持つよりも経済的で便利だからです。いいかえると共同施設を利用できる住宅地は、生活に必要な施設を自分で準備する必要がなく、経済的です。そこで、そのような住宅地は経済的にも高い価値をもってくるのです。一般に居住地の人口集積規模が大きく、人口密度が密である住宅地の地価が高い理由は、少ない負担で各種の都市施設を利用できるからです。

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土地

空気、日照、通風、景観、緑、高燥、静寂、温援および地質、地盤などの良し悪しは、住宅地の価値に影響を与えます。これらの要素は、土地の資質によって、一義的に決まってくる要素です。人間は、いつもこうした点の優れた場所を住宅地として選んで住もうとしてきましたが、産業革命によって都市に工業が起こり、都市内部の自然が汚染されるに及んで、ブルジョアジーはいち早く田園へと逃避しました。都市郊外においてこれらの要素の優れた、ないしは計画的にまちの整備、造成の行なわれた住宅地の地価の高さは、このようなことと関連しています。東北方面の地価が低いのは、自然環境、土地柄の住宅地価への影響を表わしているといえます。
自然的要素に加え、住宅地としての整備の度合いもまたその価値を左右する大きな要素です。宅地造成の程度、排水施設の整備状況、歩道、街灯、並木の有無、道路配置の長し悪し、道路と住宅地の関係、交通事故、騒音、排気ガスをまともにうけないかどうか、といった要素は居住地の品位を規定していきます。このように住宅地は、職場に近く、日常生活が便利であると同時に環境の優れていることが望ましい。それは、人間の労働力回復に不可欠であるばかりでなく、健康、保健衛生、精神的、肉体的安定、災害からの安全など、住居の備うべき重要な因子です。不良住宅の判定がしばしば環境的要素の良し悪しでなされるのは、意味のあることです。その点からも、現在の住宅地は様々の公害をうけることによって、明らかに住宅地としての価値を下げているといわねばなりません。
住宅地の効用価値の評価として、日本では大勢として通勤時間が大きな比重を占めています。もしも居住者の多くが、住宅地の効用価値として、通勤時間よりも居住環境により高い価値を認めているとするならば、住宅地価格の曲線はまた違った形になるはずです。このことは経験上の平凡な事柄のようですが、重要な一つの事柄を表わしています。つまり住宅地の効用価値の通勤時間距離への依存度が強いということは、住居の平均的状態が、居住環境、住宅地としての住み心地の良さといったものを余り評価させていないことを示しています。労働条件が過酷で所得水準の低い場合、居住地の案件として、自然環境や住宅地としてのたたずまいよりも、職場への時間、物価の安さ、銭湯など共同施設の利用、居住地の地縁性などを重んじざるをえません。さらに都市の巨大化と地価の高騰は、労働者の住宅地の外延的拡大をひき起こしていますが、遠距離郊外地からの通勤労働という一般的形態は、労働者のうえに償われることのない肉体的、精神的、経済的、時間的負担となっています。このような条件のもとでは、職場までの時間距離が住宅地選択の強い制約条件となるのは当然です。
大都市の住宅地価分有は、日本の歴史的低住居永準、都市の巨大化、住宅難、労働様式等がつくりだした現代の住宅地に対する平均的価値観の経済的反映です。
これに対して例えばアメリカでは、一般に距離的要素よりも住宅地そのものの環境、コミュニティとしての快適性を重視する面が強いといわれます。これは自動車交通の発達も影響していますが、やはり住生活を大切にする意識が一般に高いからです。コミュニティの快通さを損なうことに対して神経質であるのも、それが住宅地の地価を下げるからにほかなりません。

土地
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