先買権と土地収用

道路や公園のような公共施設を都市計画として建設する場合は、もちろん、土地の収用権が与えられていますが、収用は最後の切札であっていつもいつも用いるべき手法ではありません。そこで、土地収用を補足する手段として、市町村に法定先買権が与えられています。市町村は、公共施設用地、土地区画整理区域、市町村が規則で定める未建築地および市街地内の再開発地区が都市計画で決定された場合に、その区域内で先買権を行使することができます。つまり、市町村は当該計画区域内の土地をブローカーその他の第三者が値上りを期待して地主から買っても、法定先買権の行使によって、その土地を第三者が地主から買った値段で第三者から買い取ることができるという制度です。この制度は、計画決定された区域の地価が、ブローカーなどの転々売買によって次第に釣り上げられることを防止するとともに、土地収用の際に、計画区域内に値段の高い売買実例を残すことを防ぐ制度です。この先買権の制度は、フランスなどでも行なわれていますが、日本では住宅市街地開発法の中にはじめてとり入れられ、さらに昭和43年の都市計画法では新住宅市街地開発事業のほか、土地区画整理事業、工業団地造成事業、市街地再開発事業にもとり入れられました。

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土地

土地区画整理はアデイケス博士がこの制度を発明して以来、ドイツなどの大陸系の国々では盛んに使われていました。また、日本でも戦前から今日まで市街地の整備に盛んに使用されてきた制度です。この制度は、市街地整備による開発利益を土地の滅歩という形で、土地所有者から徴収するもので、減歩の範囲は、ドイツの連邦建築法によると、はじめて開発された区域においては30/100以内、その他の区域では10/100以内と規定されています。この制度は現物納付による受益者負担制度と考えられます。この制度は、市街地内部またはそれに近い周辺部で適用する場合は非常に有効ですが、単位面積当りの造成費が土地買収費よりも高いような山岳や山林の開発には適しません。そういう場合は、開発負担金制度を適用した方が筋がとおるわけです。
ヨーロッパの新都市開発などを調査して感じることは、公有地を沢山もっていて、市町村は、これを核に新しい開発を行なっていることです。ヨーロッパにおける土地公有制はいつの時代から行なわれたのでしょうか。ドイツに例をとると、都市の拡大発展にそなえて、土地公有のための土地基金を設けた最初の都市は、1858年のブレスラウ、1874年のベルリン、1881年のケルン、1894年のミュンヘン、1897年のフランクフルト、1901年のデュセンドルフなどの比較的大都市で、その後1913年の統計では、すでに64の都市が土地基金をもっていたと記録されています。したがって、ヨーロッパにおける土地基金制度は、近代都市計画の未発達の時代にすでに存在していたことになります。
土地基金は別名、土地金庫、土地事業基金、土地事業金庫または都市拡大基金といわれ、基金の設定は、多くは借入金および市有地の譲渡金によっていますが、一般経常費から支出している都市もあります。基金に対する補助は、経常負担の場合もあるし、市の余剰金をあてる場合もあります。この制度の目的は、土地市場の経済的状況を巧みにとらえて土地を適宜に構入し、土地財産を増し、都市問題の解決に必要となる土地を無目的に公有しておいて、都市化による地価の上昇を公共に吸収しようとするものです。イギリスの田園都市学者エベネザー・ハワードの田園都市の経営も、日本の住宅公団や地方公共団体による団地経営も土地公有制にはちがいはありませんが、土地基金による公有制は、ほとんど事業目的なしに土地を買って保有しておくところが異なるわけです。しかしながら、近代都市計画法によって、弾力的にして、かつ精密な都市計画が確立されている現在のドイツなどにおいては、こういう方法よりも、開発負担金制度や先買権制度などの宅地政策を総合的に実施した方が合理的であるということになっています。近代的な都市計画では、土地をいかに利用するかをコントロールし、その利用権に応じて、受益者負担をとるシステムが合理的ですが、都市計画が精密でない時代は、公有化方式はかなり有効な方法といえます。要するに、土地公有制は、精密な近代都市計画の発達する以前に、ヨーロッパ諸国で盛んに行なわれたものです。日本の場合は、都市計画そのものが、まだ、未発達の段階にあったため、基金さえセットできれば、この制度をうまく活用することは、非常に有効です。

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