宅地政策

国土面積の狭い山国で、可住地の人口密度は他の国に比べてけたはずれに高い日本でも、宅地面積は国土全体の2%しかありません。まして、日本よりかなり人口密度の低い諸外国においてはなおさらのことにちがいありません。しかし、歴史的に考えれば,国の工業化の進むに比例して、都市化の速度が速くなるときには、いずれの先進国も宅地難に悩まされ宅地政策なるものが行なわれています。そこで宅地政策とは何かということを基本的に考えてみる必要があります。いくら宅地難であるといってみても、どの都市の周辺にもほとんど無尽蔵に近い山林原野という名の土地があり、また、すでに市街化している既成市街地の中にも、介在農地という名の土地が、あちこちに転がっている現状です。ところが、こんなに土地があるのに宅地難が生じているのはなぜでしょうか。宅地政策へのアプローチは、このようなところから出発しなければなりません。土地はあるが宅地が不足し、宅地が不足しているから地価が上がり、地価が上がるから地主は土地を売らない、地主が土地を売らないから、ますます地価は上がる。この悪循環をたち切ることが宅地政策のカギです。

スポンサーリンク
土地

宅地需要と地価の悪循環を切る方策を考えないで、宅地を大量に供給すればこと足りるとする政策をたてると、最初に道路や下水を造って開発した本ものの宅地の値段だけが上昇するのは当然の結果ですが、開発された周辺の土地、山林原野や農地の値段もつられて上昇し、山林原野や農地という偽の宅地が、本物の宅地のような顔をしてわがものがおに横行することになります。そこで宅地政策の基本は、本物の宅地と偽の宅地が、はっきりわかるような政策をうち出すことです。つまり、良貨と悪貨の見分けがつくようにすることです。そのためには、宅地の価値判断を組織的に分析してみる必要があります。地価の上昇してゆく原因を科学的に類別し、その結果、本当に宅地の価値が上昇したのか、みかけの上昇なのかを区別する目をもたなければなりません。
ある都市の任意の地点の土地の価値を測定するにあたって、近代経済学の分析方法として、巨視的視角(マクロ)と徴視的視角(ミクロ)の二つの視角から考察してみることにします。まず、巨視的視角というのは、国家的立場、地域的立場または都市的立場から考えることをいい、例えば新幹線、高速道路、国土縦貫道路をはじめとして、都市間交通道路、地域的な幹線道路、広域的な河川改修、広域生活圏全般に便益を与える公共建築物やリクリエーション施設などがどんどん建設されてゆけば、それらの影響圏内にある土地の価値は、それらの社会資本の充実によって、それだけ単位面積当りの価値の増加があったものと考えることができます。もっとも大きく考えた場合は,日本の国土そのものの価値が、国家的な投資の集積によって上昇していると考えるべきです。さらに地域的な公共投資に多少の差があるとすれば、日本列島の中でも、東京圏、近畿圏、中部圏などの地域別または大都市、地方都市などの都市別に土地の価値は相当差がでてくるかもしれません。いずれにしても、このような大きなオーダーの公共投資による社会資本の充実は、私達が直接肌に感じないまでも、私達の生活している土地の価値をマクロ的に増加させているわけです。
次に、徴視的視角からみた土地の増加価値というのは、公共投資の優先順位によって局所的に開発が行なわれるときに生じるものです。例えば新しい住宅団地ができるとか、新しい鉄道の駅ができる場合のように、広い地域の中に、局部的に集約的に地価の上昇が起こる場合です。つまり、同じ広域社会の中で、A地区になされた公共投資による影響がB地区の価値増加と無関係な場合です。別の表現をすれば、幹線的な公共投資に対し、支線的な枝葉に相当する部分の公共投資の場合です。国家的、地域的および都市的な影響力をもつ公共投資をマクロ的な投資と仮定すると、徴視的(ミクロ的)な公共投資というのは、ミモニュティまたは近憐住区内の投資ということができます。したがって、ミクロ的な公共投資というものは、おおむねせまい近隣社会の人々にだけ使益を与えるものであって、マクロ的公共投資のように広範囲の不特定多数の人々を対象としません。
同じ公共投資であっても、マクロ的公共投資とミクロ的公共投資とでは、公共性の度合が違うわけです。つまりマクロ的公共投資の公共性を100とすれば、ミクロ的公共投資の公共性は10から50ぐらいと考えるべきです。というのは、幹線的な通過交通路は、その住区内の住民ばかりでなく、不特定多数のあらゆる人々によって利用されますが、住区内の細街路のようなものは、同じ街路であっても、これを利用する人々は、ほとんど住区内の住民であるからです。この関係は、街路だけについていえるのではなく、都市公園や近隣公園などについてもいえるわけです。したがって、新しく開発された地域における宅地の増加価値は、マクロ的な公共投資によるものとミクロ的な公共投資によるものとが合成されたものであるということができます。このような分析を考えないで、現在の固定資産税や都市計画税のように、総花的な税制度だけでは、地価上昇に対する課税方法が極めて悪平等となり、悪質ブローカーや投機家の活動する温床をつくることになります。日本において、公共投資に対してこのような分析ができにくいのは、都市計画上の土地利用計画が大まかすぎて、詳細計画が確立されていないことが原因です。

土地
土地の利用面積と宅地/ 住宅需要の増大/ 悪性スプロール/ 宅地基準/ 宅地政策/ 諸外国の宅地政策/ 土地贈課税制度/ 開発負担金/ 先買権と土地収用/ 市街地の地価/ 都市の人口規模と地価/ 超過利潤の地代への転化/ 宅地地代の源泉/ 宅地と生活利便性/ 住宅需要の増大と地代騰貴/ 地代と地価/ 地価の波及現象/ 宅地の使用価値と交換価値/ 地代と土地所有/ 土地需要者側の条件/ 土地の利用価値判定/ 一般市場と不動産市場/ 不動産市場の客体/ 不動産市場の主体/ 不動産業界の展望/ 不動産取引の状態/ 一般的な土地価格の動向/ 地価高騰の原因/ 不動産鑑定評価基準/ 鑑定評価の対象の不動産/ 不動産の価格と特徴/ 不動産鑑定評価と主体/ 不動産の鑑定評価で求める価格/ 不動産の鑑定評価の基本/ 不動産鑑定評価の方式/

       copyrght(c).土地の買い方ガイド.all rights reserved

スポンサーリンク

プライバシーポリシー