悪性スプロール

日本の地価の高騰は世界でも珍しく、昭和30年から42年までに、卸売物価指数の8倍にもはね上っています。このような急激な地価の上昇は、一体どのような事情によるものなのでしょうか。それは日本列島の風土的特徴、国の近代化に伴う都市化のスピードが極めて速いことなどのために、都市地域において非常に膨大な宅地需要が生じているということが根本の原因ですが、現実に地値が上昇してゆくメカニズムの過程を分析していくと、土地利用計画の貧困に基づくスプロールが大きな動機になっていることを見のがすわけにはゆきません。経済成長によって次第に新しい社会資本が充実してくれば、当然、巨視的視角からみた土地の価値が上昇してゆくのは、経済法用にかなった当然の結果ですが、土地利用の原用を無視した悪性スプロールを徴視的視角から観察した場合、きわめて不合埋な地価急騰の種をまいていることは明らかです。ある地点の地価が急に2倍とか3倍にはね上がるときは、必ず土地の利用形態が低次なものから高次なものに転換したときです。農地が農地のまま、住宅地が住宅地に、商業地が商業地にというふうに、同じ次元の利用相互間の土地取引では、緩慢な上昇はあるとしても、急激な上昇は考えられません。つまり、土地利用計画の貧困が、用途的利用次元を異にする土地取引をきわめて多くし、都市周辺における悪性スプロールによる地価高騰の温床をつくっています。

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土地

地価高騰のさいたるものは、用地に無第1次利用である農地や山林が、第2次、第3次の利用である工場用地や住宅計画に転用されていることです。土地利用計画に基づいて、開発負担金なり、転用税のようなものを徴収するという案件のうえでの計画的なスプロールであれば、利用に適した経済価値を与えることになるので、合理的な経済性をもった地価上昇で不当な上昇とはいいがたいのですが、日本の場合は、急速な都市化によって、土地利用に基づく秩序が準備される前にスプロールが進行しているところに地価問題の悲劇があります。
地価の高騰をまねいているもう一つの原因は、木造市街地の中高層化スプロールです。この現象は、石や煉瓦やコンクリートで形成されているヨーロッパやアメリカの既成市街地には比較的少ないもので、木造都市日本におこっている独特の現象です。欧米の都市の旧市街地は、一般に4階程度の耐火建築物で構成されている関係上、特別な再開発事業を行なわないかぎり、これらを破壊して建てなおすということは、経費も労力も莫大なものになってしまいます。よって、旧市街地の内部においては、土地を主体にした取引というものは活発には行なわれません。特にアメリカの諸都市のように自動車交通が特別に発達してくると、そういう古い街に対する資本投下はほとんど行なわれなくなり、新しい資本はどんどん郊外の新開地に逃避していきます。だから旧市街地に対する土地取引は停滞ぎみとなり、地価は日本とは逆に低下していきます。ところが、日本の場合は、東京の環状線の中でも、現在の平均階は1.7階程度であるうえに、ほとんどが木と紙で作られた木造家屋で占められているので、旧市街地内部のいたるところで、新しい資本が、旧い低利用の木造市街を高い値段で権利を取得して、中高層耐火建築物のビルやマンションを建てるという現象が生じています。しかも、日本の市街地は、木造建築向きの敷地に分割されているため、都市内部においては、30坪とか、45坪ぐらいの敷地が多いために、このままの敷地に鉄筋コンクリートの建築物が建築されると、非常に利用効率の悪い建築物ができることになりきわめて無秩序な市街地になるとともに、地価も それだけ割高になってしまいます。
日本の都市は、旧市街地の内部も、郊外も、急激に自律的な更新が進行しています。郊外では用途的な土地利用の転換が進行し、内部では容積的な土地利用の更新が進んでいます。内部と外部で同時に起こっているこれら二つの思性スプロールは、お互いに共鳴して、予想外の地価の高値を誘発しています。これが、諸外国には見られない日本の地価高騰のメカニズムの一つの特徴だとすれば、もっと実情に合った土地利用計画の樹立を促進することが地価対策の墓本問題といえます。

土地
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