任意買収

任意買収の概念は、実定法上用いられているものではなく、また学説上も確定した意味をもっているものでもありませんが、広義には、強制買収つまり収用との対比においてとらえることができます。この場合、土地を対象とし、相手方たる土地所有者の任意にもとづいて行なわれる収用適格事業のための買収と理解されることになります。この意味での任意買収の形態は、一様なものではなく、その本来的な形態は、一般私人間において行なわれるのと同様に、相手方たる土地所有者の任意にもとづき、私法の規律の下で行なわれるものですが、収用法は任意買収についても特用を設けています。つまり斡旋委員による斡旋、協議の確認および和解調書の作成に関する諸規定です。斡旋委員の斡旋とは、収用法三条に掲げられた事業の用に供するための土地の取得に関する関係当事者間の合意が成立するにいたらなかったとき、関係当事者の双方または一方の申請にもとづいて行なわれるものです。この申請は事業の認定の告示があった後には認められず、また、斡旋委員の斡旋は、事業の認定の告示があった場合には打ち切られます。

スポンサーリンク
土地

協議の確認とは、起業地の全部または一部について起業者と土地所有者および関係人の全員との間に、権利を取得しまたは消滅させるための協議が成立したときに、起業者が当該土地所有者および関係人の同意を得て行なう申請にもとづき、収用委員会によって行なわれるものです。起業者の申請は、事業の認定の告示があった日以後収用の裁決の申講の前にかぎられ、確認があったときは、収用法の適用については、同時に権利取得裁決と明渡裁決とがあったものとみなされます。
第三に、和解調書の作成とは、収用しようとする土地の全部または一部について起業者と土地所有者およぴ関係人の全員との間に権利取得裁決または明渡裁決において裁決されなければならない事項について和解がととのった場合において、起業者、土地所有者および関係人の申請により、収用委員会によって作成されるものです。和解調書が作成されたときは、その内容に応じ、収用法の適用については、権利取得裁決または明渡裁決があったものとみなされます。この和解調書の作成は、収用委員会の審理の途中において認められるものです。
以上のようにして、任意買収には、斡旋委員の斡旋にもとづいて行なわれるもの、協議の確認を経るもの、和解調書の作成を経るもの、および形式上は収用法の特則とは無関係に行なわれるものの四種があることになります。
任意買収の法的性格をめぐる問題は、その具体的な法的取扱いの問題を意味します。この問題については、まず立法的に解決されている場合がありますが、他の場合には、事業の認定の告示の前後を区別して検討することが有益であると思われます。
収用適格事業のための土地の取得が、任意買収または収用のいずれの形式で行なわれるかを問うことなく法律の特則が設けられていることがあります。例えば都市計画法によれば、都市計画事業に必要な土地を提供した者に対し、施行者は、その生活の再建のための措置を講じるよう努めるものとされており、また地価公示法によれば、収用適格事業を行なうものが土地の取得価格を定めるときは、同法にもとづく公示価格を基準としなければならないものとされています。さらに、法律ではありませんが、公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱も、任意買収と収用の間に区別を設けていません。
事業認定前の任意買取の段階においては、本来の形態の任意買収のほか、斡旋委員の斡旋にもとづいて行なわれる任意買収もありえます。斡旋の内容について収用法に特別の規定は存在しません。そこで、これらの任意買収についてどこまで収用に準じる扱いをするかが問題となりますが、一般には、斡旋にもとづくか否かを問わず、事業の認定の告示の前の任意買収は私法上のもの、つまり収用法の定める収用制度上の特則の適用はないものと考えられています。
事業の認定の告示ののちの任意買収の段階において行なわれる任意買収のうち、協議の確認または和解調書の作成があったものについては、それらがあると権利取得裁決および明渡裁決があったものとみなされるので、その法的取扱いについては立法的解決が与えられています。そこで問題となるのは、これらの手続きを経ない任意買収の法的取扱いです。まず、収用法が協議の確認または和解調書の作成を経た任意買収についてのみ特則を定めているところから、他の任意買収については特則の適用を認めない考え方があります。しかし、このような考え方に対しては、事業の認定があると、当該事業のために収用の行なわれうることが確定的となり、さらに起業地の形質の変更に対する制限が生じることによって、土地所有者は、買収に応じることを事実上強制されていること、任意買収に応じた者を、応じなかった者よりも不利に扱うぺき理由は存在しないこと、などを理由に、収用制度上の特則のうちのいわば権利保護的なものについては、他の任意買収にも適用すべしとの考え方もありえます。この考え方にたてば、立法政策論としては、収用法が、協議の確認または和解調書の作成の要件をかなり制限しつつ、これらの手続を経た任意買収とそうでないものとを画然と区別し、これらの手続を経ることによって任意買収の法的性格が一変するかのごとき取扱いをしていることがそもそも問題となります。また、解釈論的には、協議の確認や和解調書の作成は任意買収の法的性格を変更するものではなく、これらの制度における要件の限定の趣旨は、収用制度におけるいわば権力的側面を任意買収にまで拡張することを制約する点にあると解し、そこにおける権利保護的側面を、他の任意買収についても認めてゆくという方向が検討されることになります。

土地
国土利用計画と土地利用基本計画/ 都市計画と農村計画/ 都市計画/ 土地利用計画の策定の権限配分/ 住居地域内の青空駐車場の規制/ 公用収用/ 公共的私用収用/ 任意買収/ 土地収用における事業認定/ 収用委員会の裁決/ 土地収用における損失補償/ 土地区画整理/ 土地区画整理事業と借地権者/ 換地計画/ 換地処分/ 保留地/ 土地区画整理審議会/ 市街地再開発事業/ 土地を所有する法人の種類/

       copyrght(c).土地の買い方ガイド.all rights reserved

スポンサーリンク

プライバシーポリシー