借地人が底地を買う場合

借地上に家を持っていますが、地主から借地を買い取ってもらいたいといわれ、三年間の分割払いで買うことに話をきめました。ところが、地主は分割払いのときは、全部の支払が済むまで登記をしないと言います。地主は他に相当の借金があるようで、その土地が他から差し押えられる危険もあるようです。このような場合、すぐ登記はできないのでしょうか。
すぐ登記をしないと危険だという話は、まさにそのとおりです。なぜなら、一つの不動産が二重売りされたような場合には、原則として、早く登記を得たほうが優先するからです。すなわち、もし地主が他人に二重売りしてそちらへの移転登記をしてしまったり、地主の債権者がこの土地を差し押えたりしますと、この土地を自分に確保できなくなります。
そこで、自分のものとして登記をする方法ですが、理想は、地主を説得して即刻あなたへの所有権移転登記をさせ、ただ、残代金の支払について地主が不安がるようでしたら、残代金債権を担保するために、すでにあなたの所有名義となった土地の上に地主のために抵当権の設定をしてやり、その登記をすることです。しかし、地主がこれに応じない場合には、次善の方法としては、いまの地主から買い取って所有権を取得した、あるいは分割払いで代金を完済した時に所有権を取得するはずだということを、仮登記することです。すなわち、所有権移転の仮登記ないしは所有権移転請求権保全の仮登記をすることです。
仮登記をしておけば、やがてはそれに基づいて本登記にすることができます。もっとも、仮登記がまだ仮登記のままでいる間には、売主である地主は他人たとえばAへ二重売りして所有権移転登記の本登記をすることはできます。しかし、代金完済のあかつきにはあなたは自分の登記を本登記にしてもらい同時にAの登記を抹消してもらうことができます。つまり、仮登記は、将来なされるであろう本登記のために順位を保全し確保しておくという力をもっています。したがって、誰かへの所有権移転の仮登記がすでに付いている不動産であれば、普通の人なら、買おうなどという気をそもそもおこさないわけです。

スポンサーリンク
土地

仮登記も、原則として登記権利者と登記義務者の共同申請があるか、少なくとも登記義務者の承諾書がなければ、実行されません。しかし、このほか、仮登記にかぎっては、裁判所で仮登記権利者が仮登記原因の存在を疎明することによって、仮登記権利者だけの単独申請で、これをしてもらうことができます。これは、仮登記仮処分とよばれているもので、あなたのような立場にある人にとって、特に土地売買契約は締結してしまい、手付金その他代金の一部を支払ってしまったのに、売主のほうは登記や仮登記に自発的に協力してくれないというような場合に自己の権利を保全する方法としては便利なものです。そして、あなたの場合のこの仮登記原因の疎明のためには、売主との間で取りかわされた売買契約書があれば、おそらく大丈夫だと思われます。いずれにせよ、実際の手続についでは弁護士に依頼してやってもらうのがよいでしょう。
もし土地売買契約を締結してしまっているとして、さらに、前項で申したような登記または仮登記をしない間に、地主が他人に土地を二重売りして移転登記をしてしまったとしたらどうなるかということを、一応考えておきましょう。
第一の問題は、土地所有権取得の点ではあとの買主Aがあなたに優先するとして、あなたの土地利用権も否認されるかどうか、という点です。この点については、まず、あなたが土地売買契約を締結しても、代金の分割支払を完了するまでは従来どおり借地契約関係を切らずにおいたという場合なら、仮に所有権譲渡についてはあとの買主Aに優先されて土地所有権自体は手に入らなくなっても、これについての損害賠償は、もちろん売主である地主に対して請求することができますが、借地権登記か建物登記かがあれば、借地権はなお新地主Aに対抗できることは、地主の交替の場合の借地権の対抗力の問題として説明したところです。
しかし、土地売買契約と同時に従来の借地契約関係は消滅してしまったとみられる場合が普通でしょう。すなわち、あなたの借地権は混同によって消滅したとみられそうです。そして、こうなりますと、ことは少し厄介です。なぜなら、形式的にいいますと、あなたは借地権者ではなくなり、ただ土地の売買契約を結んでその引渡しだけを受けて土地所有権移転登記はまだえていない状態の人ということになりますから、Aに対しては、所有権取得という点て負けるだけではなくて、土地の利用権をも対抗できずに、これをAに明け渡さなくてはならないのではないか、とも考えられるからです。しかし、実質的に考えれば、あなたとしては従来保有してきた借地権者という地位から土地所有権者の地位へいわば昇格しようとして昇格しそこなっただけで、元の地位より悪くなるということはないというのが、常識にかなった考え方でしょう。法律的にいえば、さきの借地権の混同は、買取りのほうがうまく行かない場合には自動的に初めにさかのぼって失効するという条件付のものないしは相対的なものである、と説明することもできるでしょう。要するに、あなたの土地利用後は従来どおり大丈夫といってよいと思います。現に、このような結論を示した最近の最高裁の判例もあります。
第二の問題としては、第一で述べたところは、あくまで原則だということです。つまり、あとの買主Aが、あなたの借地権の存在について悪意者ないし背信的悪意者である場合なら、あなたの借地権は、法定の対抗要件を備えなくても、これをAに対抗できるという可能性があること、同じく、あなたが土地を買ったことについてAが背信的悪意者等であれば、土地所有権そのものの取得についても、あなたは登記ないし仮登記なしにAに勝てる可能性があるということを申しそえておきます。

土地
土地を貸すための事前調査/ 土地を借りるときの調査/ 農地を宅地にして借りる/ 借地契約の内容/ 借地契約の特約の効力/ 市販の借地契約書での契約/ 借地契約の保証人/ 契約書のない借地契約/ 借地契約と公正証書/ 社寺の所有地の借地/ 土地管理人との借地契約/ 借地上の建物の利用に関する特約/ 借地契約用途に関する特約/ 罹災借家人の権利/ 区分地上権の設定/ 土地の使用賃借/ 親族間での土地の貸借り/ 地代の値上げと値下げ/ 環境の変化と地代の変更/ 地代支払の相手方/ 借地人の妻の地代支払義務/ 地代の支払方法/ 地主の修繕義務と地代の支払/ 地代の受取証/ 地代滞納に関する特約の効力/ 借地人が地代を滞納した場合の措置/ 催告期間の従過と契約解除/ 建物区分所有と借地権/ 地代の供託/ 借地の権利金/ 造成地の賃借と権利金の前払い/ 借地権の譲渡/ 権利金の取戻し/ 地代の滞納と敷金による充当/ 地主の変更と敷金/ 借地の立退料/ 借地権の登記/ 建物のない借地権の対抗力/ 建物未登記の借地人と新地主/ 新地主と立退料、買取請求/ 借地人のいる土地の購入/ 抵当権付の土地の借地/ 借地権設定後の抵当権設定/ 土地の二重賃貸/ 敷地地番の違った建物登記/ 建物登記による対抗力の及ぶ範囲/ 借地上所有建物の名義人/ 借地の転貸借と借地権の登記/ 借地人が底地を買う場合/

       copyrght(c).土地の買い方ガイド.all rights reserved

スポンサーリンク

プライバシーポリシー