建物登記による対抗力の及ぶ範囲

土地990平方メートルを買いました。この土地には、前からAという賃借人がいて、土地の片隅に66平方メートルほどの建物を建てて住んでおり、その周囲165平方メートルぐらいは、庭、物置、物干に使っていますが、他の部分は、池や水槽があって、養魚場をやって暮しています。建物には保存登記があるようです。私としては、建物の部分は、このままAに貸しておいてもよいと思いますが、それ以外の部分は明け渡してもらって、貸家でも建てたいと思います。明け渡させることは可能でしょうか。
この土地についてはAの借地権の登記はないものと思われます。そこで、Aが建てて住んでいる建物の保存登記がしてあるとしますと、Aの借地権は建物保護法によって新地主であるあなたにも対抗できるか、ということが問題になります。すなわち、Aは990平方メートル全体についての借地権を対抗できるのか、建物を中心にした約165平方メートルの部分についてだけ対抗できるのか、それとも990平方メートル全体について全然対抗できないのか、ということです。
建物保護法が第三者対抗力という点で保護している借地権というのは、借地権一般ではなくて、建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権にかぎります。そしてこれは、借地法の保護を受けられる借地権についても同様です。ですから、建物は一切作りません。更地のままで材木置場とか駐車場に使いますという約束での借地なら、ここにいう建物所有を目的とする借他権とはみられません。そもそも建物がないのですから建物保護法の定める対抗要件を備える余地がありませんし、もし勝手に建物を建てれば、借地目的の変更についての地主の明示もしくは黙示の同意がないかぎりは、借地人側の義務違反として借地権は消滅させられるわけです。
ところで、それなら逆に、建物を建てることが契約上許されているような借地権なら、すべて当然にここにいう建物所有を目的とする借地権といえるかといいますと、必ずしもそうではありません。すなわち、借地法や建物保護法による保護を受けるためには、ともかく建物を建てることが借地契約上許されている、つまり建物所有ということが土地利用目的の中に含まれているというだけでは不十分であって、建物を建て所有することが土地利用の主要な目的と了解されているような借地権でなければならない、かつ、このように借地の主要目的であるとされる建物の所有率利用にとって必要な範囲の土地にかぎって借地権の保護が与えられる、と考えられています。

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本問の場合のAの借地権はどうでしょうか。まず、旧地主とAとの間の借地契約では、かなりの規模の建物を作ってAが住むことは当然予定され承認されていたと思われ、またそのとおりの建物が立っているわけです。つまり990平方メートル全体について借地権は駄目になるとみることは、おそらく不当でしょう。
そうすると、残る問題は、(1)990平方メートルの借地は、実質的には、建物所有目的の部分と、他の目的の部分との二口の借地に分かれているものと考えて、前者つまり建物とその周辺の165平方メートルについてはAは建物保護法によって借地権をあなたに対抗できるが、後者については駄目だと考えるか(2)建物のあるところをふくめて990平方メートル全体が建物所有目的の借地権の対象であり、したがってAの借地権は全面的にあなたに対抗できる、と考えるかです。
AAの借地についてはここていう(1)の結論が妥当かとも思われます。法律的には、建物保護法は、一定の要伴のもとで建物の無意味で不経済な取壊しという事態を避けることを主たる狙いとするものであって、建物以外の地上施設や工作物の維持や保存を、正面から目指すものではありません。
次に、それでは逆に(2)の結論がよいかということになりますと、やはり、ここでも、本工場事件の場合と事情がいくぶん違うことに気づきます。すなわち、本工場の場合には、その主要な事業活動は屋内で行なわれるものですから、このような事業用の建物の所有や利用、つまりそのような事業の運営に必要な原材料の飯場や処理場として、かなり広い面積の空地が使用されましても、全体としての土地が建物所有を主要目的とする借地であるという認定は、一般には無理のないものと感じられます。しかし、養魚場という事業は、大体限外のものですから、おそらく事業の性質上たえず人開か近くにいなければならないという事情はあるにしましても、そこで建物というものが占める意味は、本工場などの場合に比すればはるかに小さいものでしょう。したがって、Aの借地権を前述の(2)と考えることには、かなりの躊躇を感じないわけにはいきません。
以上のところをまとめますと、もし裁判になり、とくに最高裁までいったという場合の予測はかなり微妙で困難ですが、前述の(1)、つまり、165平方メートルを除いたほかの部分についてはAの借地権はあなたに対抗できない、という結論になる公算のほうがいくぶん大きいといえましょう。ただし、あなたがこの990平方メートルを買ったときの状況のいかんによっては、あなたがこのように主張してAに一部明渡しを請求することでさえ、背信的悪意者だからとか、権利濫用とかいう理由で法律土認められなくなるという危険もないわけではありません。
地主から土地を買い受けた新地主などに対して、借地人がその借地権を対抗できるかどうかということは、その土地の範囲については前項までで述べたような問題がありますが、そこできまった範囲の土地に関するかぎりでは、法律上は、無条件での「イエス」か、無条件での「ノー」ということになります。つまり、建物のある165平方メートルを除いた825平方メートルの部分についてAの借地権には対抗力がないと判定される場合なら、Aは、池、水槽、水管など、彼が設置したものを除去して 土地を明け渡す義務があります。あなたとしては、これら設備を特価で買い取らなければならないといった義務を負うものではありません。ただ、この825平方メートルの部分の明渡しを請求できるということ自体が、前述のように、場合によっては必ずしも確実とは断言できませんし、それは最終的には訴訟によって確定されるわけです。したがって、Aが簡単にはこの部分を諦めないようで、話がもつれそうであれば、設備買取り、立退料など、名目はどうであれ、ほどほどのお金で妥協するというのが、あなたとしては賢明な策かと思われます。

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