敷地地番の違った建物登記

所有者から土地を借り、建物を建て保存登記もしました。ところが、この土地を買い受けたという者が明渡しを要求してきました。こちらは、保存登記がしてあれば地主が変わっても大丈夫だということを聞いていたので、法務局へ行って調べたところ、登記はたしかにあるのですが、その所在地番が違う番地となっています。どうしてまちがったのかは分かりませんが、明け渡さなければならないのでしょうか。
借地人は、借地上に登記した建物を所有すれば、その借地権を、地主から土地を買い受けた人その他の第三者に対抗することができます。ところで、ここでいう建物登記というのは、その建物を表示する有効な登記でなければなりません。およそ建物登記簿のどこかに借地人の所有だと登記した建物があるというだけでは足りないので、現地現物にあてはめればこの建物を告示する建物登記であると客観的にいえるほどの登記でなければいけません。つまり、建物の同一性を認識できるようなものでなければならない、ということです。
このように、現物である建物を正確に表 示した建物登記であることが必要ですが、そこでの正確というのは、一分一厘も現物と違わないのが理想ではありますが、建物の同一性を認識できる程度かどうかということが法律の趣旨ですから、細部の点について多少の違いがあっても、その建物を表示する登記としては有効だとみられる場合が少なくおりません。建物は、「居宅、木造瓦葺、○○坪」というふうに、その種類、構造、大きさなどの記載によって、その同一性を示しますが、例えば大きさが「○○坪××」と記載されていたとしても、その程度の誤差なら、普通は、その建物の登記としては有効とみられましょう。もちろん、より正確に訂正する更正登記をしてもらうことはできますが更正をしなくても、そのままで、対抗要件として通用するということです。
ところで、建物は動かない不動産ですから、その同一性の認識、判定においては、それ自体の構造や形や大きさのほかに、それの所在位置つまり建物所在の市町村及び地番ということが重要な要素のひとつになります。そこで、建物の実際の所在地番とは異なる地番に所在するものとして記載されている建物のような場合には、借地権の対抗要件としての建物登記といえるかどうか、ということが問題になります。

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土地

これについては、考え方は二つの極に分かれます。第一は、建物保護法によって建物登記が対抗要件とされているのは、本来は土地自体についての借地権登記であるべきところを、いねばその代用品として例外的に認められるものである、ゆえに、土地について取引に入ろうとする第三者としては、その地番の土地登記簿を見るほかには、その地番を所在地と表示した建物登記だけを検索すればよいはずで、誤って他地番所在と書かれた建物登記はないだろうか ということまで調査する必要はない、と考えるものです。これだと、あなたの建物の所在地番の表示が実際の地番と一番違いであっても、あなたの借地権はAに対抗できないという結論になります。
第二は、土地を買う者などは当然現地を見てから取引に入るというのが常識であり、そうすれば実際にそこに建物が建っているのは分かるわけです。したがって、立法論としては借地人所有の建物があるというだけで、それが未登記建物でも、借地権に対抗力ありといってもよいくらいではあるが、現在の建物保護法を前提としての解釈論としては、建物が現存しかつその建物登記がともかく存在すれば、その所在地番の表示が実際とはひどくかけはなれていても、借地権の対抗要件としては十分である、という考え方です。これだと、あなたの借地権は文句なくAに対抗できるという結論になります。
この点についての従来の裁判所の見解はかなり微妙です。ただ、最近の最高裁の判決には、79番地にある建物が隣りの80番地所在として登記されていたという事件で、79番地の借地権の対抗要件として有効な建物登記であると判定したものがあります。この判決では、所在地番の表示が実際と多少相違するだけで登記の表示全体としてはなお当該建物の同一性を認識せしめうる程度の軽微な過誤であること、土地を買おうとする者は現地検分によって建物の存在を知り、ひいては他人の借地権の存在を推知できるのが通常であるから、土地の買主などにとって不当に苛酷な解釈ではないこと、などが理由として強調されましたが、一五人中三人の裁判官は反対意見でした。
本問の場合は、一番ちがいの隣地という右の最高裁のケースと当然同じ扱いを受けられるとはかぎりませんし、また遂に、絶対勝ち目がないとも断言できません。結局は、裁判官がさきに述べた二つの極にある考え方のうちのどちらに近い考えをとるかによってきまるわけで、その予測は微妙で難しいところです。
建物登記が借地権の対抗要件として十分だと判定されるならば問題はありませんが、不幸にして対抗要件としては駄目だと判定された場合について、関連する問題を若干申し上げておきます。
その一は、建物保護法等による法定の対抗要件が備わっていなくても、新地主があなたの借地権の存在を知って取引に入った、つまり悪意の第三者である場合、特にいわゆる背信的な悪意者である場合であれば、あなたの借地権はAに対抗できるとされる可能性があるということです。
その二は、あなたに土地を貸してくれた地主に対する責任の追及です。つまり、彼が勝手に土地を売りあなたの土地利用を不可能にしたことは、当然あなたに対する関係では借地契約上の債務不履行ですから、あたたはこれに対して損害賠償を請求することができます。
その三は、番地が間違って登記されたことについての責任者に対する関係です。すなわち、あなた自身が建物登記の申請において思いちがいや書き違いをしたのなら致し方ありませんが、あなたから登記申請手続を委託された人、例えば司法書士の落ち度によるのなら、その人に対して損害賠償の請求をすることができます。また、登記の申請書にはちゃんと書いてあったのに登記所の職員の過ちで違う番地となったものなら、国家に対して損害賠償を請求することができます。

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