借地人のいる土地の購入

新居を建てたいと思い土地を探していたところ、とても奸条件で値の安い土地に出あいました。もっとも、その土地は前から老人夫妻が借りて小さな家を建てて住んでいるようですが、仲介の不動産屋の話ですと、この老人たちは建物の登記もしていないことだから、明け渡させるのは簡単というのですが、この場合はどうなのでしょうか。
この老人は借地権の登記などもちろんしていないでしょうし、また建物の登記もしていないという話が本当なら、この老人の借地権は、地主から権利を取得した第三者にむかって対抗できないものです。つまり、この土地を買って所有権移転登記を受ければ、老人に対して建物を取り壊して土地を明けろと無条件で要求できるわけです。
しかし、このように家を建てて住んでいる借地人がいることを知ってしまった場合、先方が法律上の対抗要件を備えていないからといって、ただちに土地を買ってこのように明渡請求をするということは、おそらく寝ざめの悪いことだろうと思います。そして、これは単なる道義上の問題にとどまらず、法律上も問題になりうるところです。すなわち、新地主などの第三者が悪意ないしは背信的悪意者といわれるような者である場合には、法定の対抗要件を備えていない借地権であっても、これら第三者には対抗することができる、という考え方であり、これは裁判所によってもある程度まで採用されています。したがって、最初に述べた、買えばこちらが勝つという結論自体が、実は絶対的なものではなくて、例外ないし留保を伴ったものであるわけです。

スポンサーリンク
土地

次に、悪意とか背信的悪意とかいわれることなしに、仮に土地を買った方が完全に法律的には勝つという場合であったとしても、なお問題はあります。つまり、法律上の言い分がとおるとはいいましても、借地人が自発的に土地を明け渡してくれなければ、結局は訴訟をおこし、勝訴の確定判決にもとづいて国家機関による強制執行をしてもらって、はじめて目的が達成されるわけです。個人的な実力で皆他人を追い出すというようなことは法律上許されません。あえてやれば、民事上不法行為の責任を問われますし、さらに、不動産侵奪として刑事責任をも負わなければなりません。
このように、法律上必ずしも100%の勝ち目があるとはかぎらず、また、仮に勝つはずだとしても、借地人が訴訟覚悟で頑張ったような場合の経費や時間の無駄ということを考えなければなりません。したがって、実際問題としては、すぐ土地をお買いなさいと勧められるものではありません。
結局、買主も借地人も我慢できる程度の立退料を払ったりして円満に借地人に出てもらうょうにもっていくのが賢明な策でしょう。もちろん、こうした話合いは、土地を買ってしまってからでもょいわけですが、もし円満解決に達しなかった場合を考えると、やはり前述のようなやっかいな問題が残ります。ですから、借地人と話をつけることは、買う前に少なくとも、代金を払う前にすべきでしょう。理想は、借地人の円満退去という状態まで、現在の地主にやってもらってから買うことです。
とはいえ、円満に借地人に出てもらうためには相応のお金が要るでしょうし、現在の地主にその持ちあわせがないということも考えられます。その場合には、買主がこれを出さなければ話は進まないでしょう。一方、借地人としては、金と引きかえでなければ土地を明け渡さないでしょうし、逆に金を出す立場からいえば、立退料を払ったが事実上立ち退いてくれないために訴訟をしなくてぱならないということになったのでは、つまらないことです。さらには、このように金を出させておきながら、借地人が出たところで今の地主が万一悪い気を起こして他人に二重売りするようなことにでもなれば大変です。
のようなトラブルが起こらないように確実に事を処理するには、地主、借地人、買主の三人で十分の取決めをし、それも調停とか即決和解とかいう、万一の場合には公的執行力を発揮できる約束にしておくとか、また、土地売買契約について仮登記をするとかいうことが必要になります。そして、これらの手続については、専門的知識が必要ですから、弁護士に依頼することが、まちがいのないやり方です。

土地
土地を貸すための事前調査/ 土地を借りるときの調査/ 農地を宅地にして借りる/ 借地契約の内容/ 借地契約の特約の効力/ 市販の借地契約書での契約/ 借地契約の保証人/ 契約書のない借地契約/ 借地契約と公正証書/ 社寺の所有地の借地/ 土地管理人との借地契約/ 借地上の建物の利用に関する特約/ 借地契約用途に関する特約/ 罹災借家人の権利/ 区分地上権の設定/ 土地の使用賃借/ 親族間での土地の貸借り/ 地代の値上げと値下げ/ 環境の変化と地代の変更/ 地代支払の相手方/ 借地人の妻の地代支払義務/ 地代の支払方法/ 地主の修繕義務と地代の支払/ 地代の受取証/ 地代滞納に関する特約の効力/ 借地人が地代を滞納した場合の措置/ 催告期間の従過と契約解除/ 建物区分所有と借地権/ 地代の供託/ 借地の権利金/ 造成地の賃借と権利金の前払い/ 借地権の譲渡/ 権利金の取戻し/ 地代の滞納と敷金による充当/ 地主の変更と敷金/ 借地の立退料/ 借地権の登記/ 建物のない借地権の対抗力/ 建物未登記の借地人と新地主/ 新地主と立退料、買取請求/ 借地人のいる土地の購入/ 抵当権付の土地の借地/ 借地権設定後の抵当権設定/ 土地の二重賃貸/ 敷地地番の違った建物登記/ 建物登記による対抗力の及ぶ範囲/ 借地上所有建物の名義人/ 借地の転貸借と借地権の登記/ 借地人が底地を買う場合/

       copyrght(c).土地の買い方ガイド.all rights reserved

スポンサーリンク

プライバシーポリシー