借地権の譲渡

地主から土地を借りるとき、権利金として一坪当り100万円を払っています。こういうときは、地主の承諾がなくとも、借地のまた貸しをしたり、借地権を譲渡したりすることができるのでしょうか。
権利金を提供したという事実だけで、将来地主の承諾なしに借地の転貸や借地権の譲渡が自由にできるときまっているわけではありませんし、反対に、権利金を提供していなかったから、地主の承諾なしに転貸や譲渡がまったくできない、というわけでもないのです。
その権利金を要求したとき、地主はどういう法律上の利益を借地人に提供する代償と考えていたか、また、反対に、借地人は、その権利金を提供したとき、それによって、どういう法律上の利益が特別に与えられるつもりであったか、という事実が、まず決定的な基準になるのです。いいかえると、権利金の受渡しをした本人の目的がなんだったか、ということなのです。もし、承諾なしに譲渡、転貸を認めるというのであれば、設定の対価としての権利金ということになります。借地権の譲渡、転貸などという重要な項目は、まず契約の際話題になっていると考えますので、なにかの形で結論がでて、文書にでも残っていないか、調べてみる必要があります。しかし、比較的多くの例では、契約書ではっきり借地権の譲渡、転貸に地主の承諾を要する旨の条項が記入されているのがふつうです。また仮に、そのような条項がなくとも、民法の規定でそうなっていますから、特別に譲渡、転貸は自由だという取決めがないかぎり、地主の承諾が必要というたてまえになります。以上が原則です。

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地価のハ割にも達する権利金をとっておきながら、借他人が譲渡、転貸をするときに承諾を拒否するようなことは、公平の原則に反し許されないとか、承諾権という権利の濫用であるとか、あるいは、信義誠実の原則に反する、という有力な学説があります。これらの学説は、仮に、承諾を要する旨の特約があった場合でも、譲渡、転貸の承諾を免除すべきだという考え方なのです。たしかに、地価のハ割にも達する権利金では、前述のように、地代の一部前払いであるとか、場所的利益であるとかいっても、あまり説得力がなく、借地人に譲渡、転貸の自由があることを認めざるをえないかもしれません。最高裁判所の判例は、まだそういう見地にたっていませんが、下級審判例のなかには、そのような見地にたったものもあるのです。そこで、つぎのように、昭和四二年六月から実施されるに至った改正借地法の新しい原則が関係してくるわけです。
改正借地法では、借地権を譲渡しても地主に不利益となるおそれがないのに、地主が承諾を拒否すると、借地人は裁判所に申し立て、裁判所の許可によって譲渡権を認めてもらうことができるようになりました。ところが、この許可の裁判のとき、裁判所の判断で、権利金のようなものの支払や地代の値上げなどが認められることがありうるとされています。借地契約の締結のときに提供した権利金の意味がいかされるとしたら、この ときなのです。支払われた権利金が、正面から譲渡、転貸の自由を認めることの対価ではなかったとしても、この権利金によってほかにとりたてていうほどの特別な利益を借地人が得ていないときには、けっきょく譲渡、転貸自由の承認の対価に準じて取り扱うほかはないからなのです。その意味では、高い権利金は、明示の合意がどうあれ、潜在的には、すべて譲渡、転貸の自由の承認の対価たる性質をもっているともいえます。しかし理論的なことになりますが、一般に借地権の力が高まってきているのは、けっして権利金という金銭による代償の結果ばかりとはいえず、むしろ、時代の要請なのかもしれません。仮に、このように考えますと、なにも権利金を払ったから借地権が強まったのだということではなくなりますから、権利金の意味をやかましくせんさくする必要もうすらぐにちがいありません。そうしてまた、権利金を全然提供していなかった借地人人も、必ずしも常に、あらためて権利金を提供しなければ借地権の譲渡、転貸の許可の裁判がえられないわけではない、ということになります。
借地人が変わったときに、新旧どちらかの借地人から地主が名義書換料をとる慣行があります。名義書換料は割合低額であるために、あまり社会問題とならずにすんでいるようです。しかし、そのもっとも重要な点は、借地人の交替、つまり借地権の譲渡を地主が承諾したことの代償、という意味のあることです。したがって、名義書換料を要求され、それを支払ったら、借地権の譲渡は地主によって承認されたものと考えてよいのです。
ともと名義書換料は、新しい借地人の、 いねばあいさつ料のようなもので、手みやげに毛のはえたようなものだったのです。しかし、一方では、借地権の財産としての価値が増え、その価格が地価のハ割にも九割に達するするというのが現実の経済状態なのに、他方で民法の建前では、土地賃借権の自由な譲渡は許されず、地主の承諾がないとダメだという矛盾から、名義書換料の慣行が次第にはっきりしてき、その額も借地権価格のおよそ何%ぐらいというふうに、固まってきたのです。つまり、例えば1000万円する土地で借地権率がハ割とすれば、借地人人は社会的経済的には800万円の財産を払っているわけですが、法律的には地主を無視してこの借地権を処分して800万円の金を入手するわけにはいきません。無断譲渡を強行して地主から借地契約を解除されることにでもなれば、元も子もなくなるから、たとえ若干の名義書換斜を払っても地主の承諾をえておいた方が得策だというので、名義書換斜を払うのが普通になっていったわけです。他方、地主の方も、借地権の譲渡がなければ、定期の地代しか取れないものが、いねば臨時収入として名義書狭斜をもらえるのですから、特に新しい借地人が気に入らないとでもいう事情がないかぎり、むしろ喜んで借地権譲渡を認める、ということになるわけです。

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