建物区分所有と借地権

友人のAと相談し、Bの土地を賃借し、Aと半分ずつ金を出しあって五階建のビルを建て、一階、二階はAの所有とし、Aが商売に使い、三階以上は私の所有として、貸事務所にして、地代は、別々に、Aと私とが支払ってきました。最近、Aが営業不振で、地代の支払を怠っているようですが、そのために、Aが立ち退けといわれることになったら、私はどういうことになるのでしょうか。私はきちんと地代を払っていますが、それでも建物を壊せなどといわれてはたまりません。また、場合によっては、Aから一、二階を買い取ってもよいと考えていますが、それは可能でしょうか。
外観的、建築学的には一棟の建物であっても、それが構造上、利用上いくつかに仕切られていて、各区画が別々の所有者のものである場合は少なくありません。旧来の日本式家屋でも、いわゆる長屋の各戸がそれぞれそこの住人の所有である場合などには、一種の建物区分所有の状態が生ずるといえます。しかし、このようないわば縦割りの区分所有の場合には、せいぜい戸と戸のあいだの壁の修理はどうするかとか、共通の棟木が腐ってきたらどうするかとかいう問題が起こるぐらいで、あまり特別な法律問題は起こってこないのです。
ところが、洋式建築が発達してくると、本問の場合のように、建物の各所ごとに、別々の所有者に属するという形の、いわば横割りの区分所有がでてきますし、さらには、縦割りと横割りのまざった形もでてきます。特に最近多くみられる共同利用ビルや分譲アパートなどでは、このような形の区分所有が成立することが多く、この場合には、いわゆる共用部分の所有関係や管理関係をはじめ、各種の複雑な法律関係が起こってくるわけです。このような問題を処理するために昭和三七年に判定されたのが、建物の区分所有等に関する法律です。

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土地

建物の区分所有を建物の立っている敷地の所有権との関係でみると、じつに多様な組合せが考えられます。いちばん典型的なのは、甲乙共有の土地上に甲と乙との区分所有建物が建っている場合ですが、甲所有の土地上に甲と乙との区分所有建物が建っている場合や、甲所有の土地上に乙と丙との区分所有建物が建っている場合もあり、さらに、以上の場合の亜種や混合にあたる各種の形がありうるわけです。いずれの形の場合にも、区分所有建物が地上に存立しうるためには、各区分所有者がなんらかの形で敷地を利用することのできる権限をもっていなければならないわけで、区分所有建物と敷地利用の権限との問題は仔細に検討すると、いろいろ厄介な問題が起こってきます。ところが、建物の区分所有等に関する法律中には、この敷地利用権限の問題については、同七条の規定一ヵ条しかなく、起こる可能性のある各種の複雑な問題については、もっぱら解釈に委ねている状態です。
本問の場合には、はじめは本人であるCとAが一緒に土地を借り建物を建てたというのですが、いまは建物の一部ずつを別々に所有し、地代もそれぞれ分けて支払っているようですから、AとCとはそれぞれBの所有地上に建物所有を目的とする借地権を別々にもっているのだ、と考えることもできます。もっとも、そう考えた場合にも、Cの借地権は、普通の借地権が土地の地表上に建物を所有しうる権利であるのとはちがって、ちょうどこの建物の三階以上の存する空中の空間に建物を所有しうる権利だということになり、この権利は、空中の空間のみを利用するための区分地上権と似たようなものだ、ということになるでしょう。
以上のような考えから出発して本問の場合を考えると次のようになります。Aが地代の滞納をし、地主Bが催告をしてもなお支払わないときはBはAとの土地賃貸借契約を解除できることになり、そうなるとAは所有の建物をなんの権限もなしにBの所有地上に設置していることになりますから、BはAに対して建物を取り壊して土地を明け渡せといえることになるはずです。他方、Cはちゃんと地代を払っているのですから、彼の借地権は安泰で、彼の所有建物は指一本ふれられないことになるはずです。
ところが困ったことに、もしAの建物つまり建物の一、二階を取り壊せば、Cの建物つまり建物の三階以上も壊れることはもちろんです。ですから、Aの賃料滞納を理由に、Bが一、二階取壊しの権利を行使できるとすれば、罪のないCが被害を受けますし、さりとて、Cを保護するために、例えばBが一、二階を壊せとAに要求するのは権利濫用だというような理論を用いてBの権利をおさえれば、Bは地代はちっともとれないのに土地はAに貸したままでいなければならない、という不合理な状態になります。このような現象を解消する一つの方法は、BがAからこの建物 の、一、二階を買い取ることです、本問のような場合には、Bは地代不払いを理由としてAとの借地契約を解除したうえで、Aの意思いかんにかかわらず、一方的にA所有の建物部分を時価で買い取ることができます。この買取りが行なわれれば、B所有地上にBとCとの区分所有建物が存在する形になり、BとCとの賃貸借関係のみがあとに残ることになって、ことは合理的に解決されます。しかし、このような場合につき前述の七条が認めているのは、Bに建物を買い取る権利があることだけで、Bに建物を買い取る義務を課しているわけではありませんし、また、普通の借地について借地権消滅の場合に借地人が所有建物を地主に買い取らせる権利があるものとした借地法の規定は、借地人の義務不履行による契約解除の場合には適用がない、と解されています。それゆえ、Bが建物を買い取ろうとしない場合には、前述の現象はいぜん解消されないで残ることになるのです。
以上のような不都合の原因は、そもそもCとAとの借地権がそれぞれ別の独立のものであるとする出発点にあるのではないでしょうか。特に本問のような場合には、要するにAとCとが一緒に土地を借りそのうえに建物を建てているので、たとえ建物を上下に分けて所有していても、それは地主のBに対する関係ではAとCといういわば仲間うちのことで、借地権は一本であり地代を別々に支払っているのは単なる便宜上のことだと考える方が、実情に適しているのではないでしょうか。これを法律学的に表現すれば、ACはB所有地上の一つの借地権を準共有しており、その対価である地代をBに支払う義務もACの不可分債務であるということになります。この考え方を前提にすれば、例えばAがBに支払う地代が年600万円、Cが支払う地代が年400万円となっていたとしても、これは実は、いねばAC二人の内部だけでの取決めのようなもので、AもCもともに年1000万円の地代をBに支払うべき債務を負い、ただどちらかが支払 えば他方の債務も消滅するという関係であり、また、BがAに催告して支払を求めたのにAが支払わなくても、それだけではBはACとの賃貸借契約を解除することはできず、AC両方に催告したのにどちらも支払わない場合に、はじめて解除が可能だということになります。
そうだとすると、本問の場合には、たとえAが60万円の地代支払を怠っても、それだけでBから土地賃貸借契約を解除されるおそれはないことになり、ただ、BからCへも催告があったときに、Cが自分の分400万円だけでなくAの分の600万円も併せてBに払いさえすればよい、ということになります。この場合には、ACの内部関係では、Aの負債600万円をCが代わって払ってやった形ですから、CはAに600万円を返せと請求できます。もっとも、AはそもそもBに地代を払わなかったくらいですから、Cに返済する資力はないかもしれません。けれども、CがAに600万円を返せという債権は、区分所有者が建物の敷地につき他の区分所有者に対して有する債権に当たりますから、建物の区分所有等に関する法律六条一項によって、Aの区分所有権つまり建物の一、二階についてCは先取特権をもつことになり、しかもこの先取特権はほぼ最後先に近い順位のものですので      Cが代払いした600万円の回収の見込はかなり確実だといえます。
そして、この先取特権の実行によりAの区分所有権が競売された場合に、もしCが自ら競落人になれば、Cは希望どおり建物全部の所有者になれるわけです。この場合のCは、競落によってAの区分所有権のほかに、敷地の賃借権の準共有持分をも取得し、従来からの自分の準共有持分とあわせて単独の賃借人になるわけです。この土地賃借権準共有持分の取得については、理論的には、土地賃借権の取得の場合と同様に、地主Bの承諾が必要であり、もしBが承諾しないときは、借地法九条の三によって、裁判所に承諾に代わる許可の裁判を求めなければならないことになります。しかし、事実は従来からすでに共同賃借人の一人であったCが単独の賃借人になるだけのことですから、普通はBも承諾を与えるでしょうし、少なくともCが許可の裁判をうることは、特別の事情がないかぎり、まず困難はないといえるでしょう。

土地
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