借地人が地代を滞納した場合の措置

土地を貸していた会社の資産状態が悪化し、毎月10万円の地代を三ヵ月分も払ってくれません。滞納した地代をうまく取り立てる方法はあるでしょうか。そして、これ以上滞納するようなら、契約を解除したいと思います。その手続はどうすればよいのでしょうか。
民法三一三条では、土地の賃貸人は、地代債権や貸借から生ずる損害賠償債権について、借地または借地上の建物に備け付けた動産、例えば、機械、机、タンス、金庫、書架、陳列棚などから他の一般債権者より先に支払ってもらえる権利、先取特権を有するものと定めました。さらに、借地法一三条は、地主は、賃借権または地上権が登記されているときには、借地人の建てた建物につき、弁済期にある地代債権の最後の二年分のために先取特権を有すると定めています。ただし、この先取特権は建物の保存や工事の先取特権や賃借権または地上権の登記前に登記した抵当権などには優先することができません。もっとも、土地の賃借権の登記がなされることは少ないので、地主が借地法一三条の先取特権の保護を受けられる場合は実際は多くないかもしれません。しかし、たとえ土他賃借権の登記がなくても、借地人は借地上に建てた建物につき自分で保存登記をすれば、建物保護法一条により、その借地権は対抗力を有するにいたるのですから、地主は賃借人の賃借権の登記に進んで協力してやり、自分の方でも借地法一三条の先取特権の利益を受けられるようにしておく方が得なのです。
以上のとおりですから、地主は、他の債権者が借地人の備付動産や建物を差し押えたら、地代債権で配当加入を申し込むなり、別の物に競売手続を進めるなりして、競売代金の中から、他の一般債権者に優先して地代を払ってもらうことができます。地代債権はそれだけ優遇されているわけです。

スポンサーリンク
土地

地代を支払ってもらうには、まず、督促手続すなわち支払命令を受けるのがいちばん簡単です。支払命令を受けるには、請求の趣旨と請求の原因その他を書いた支払命令申立言をつくり、借地人の住所地の簡易裁判所に提出します。これは証拠もいらないので簡単にできますし、費用も、少なくてすみます。この申立があれば、裁判所は債務者たる借地人を審脈しないで支払命令を発します。借地人は命令の送達を受けた日から二週間以内に異議の申立をすることができます。その期間内に債務者、借地人が異議を申し立てないと、裁判所は地主の申立によって支払命令に仮執行宣言をなし、仮執行宣言を行した支払命令の正本をさらに借地人に送達します。これに対して借地人が異議の申立をしなかったときは、支払命令は確定判決と同一の効力を有するようになります。したがって、この仮執行宣言付支払命令に執行文を付記してもらえば、強制執行ができるわけです。なお、借地人が仮執行宣言前に異議を申し立てたときは、支払命令はその効力を失い、事件は当然に訴訟に移ります。
支払命令によることなく、最初から訴を起こして確定判決をえて、差押、競売をすることもできますが、これは面倒です。なお、地代の金額その他で相手方が争っている場合は、和解または調停の申立をし、和解調書または調停調書をもらっておきますと、これらも確定判決と同一の効力を有しますから、それらにもとづいて所定の手続をへて差押、競売ができるのですが、本問の場合は、借地人は地代債務の存在その他について争っているのではありませんから、この方法も適切とはいえません。
なお、借地契約を公正証書にしておき、それに借地人は、地代を毎月末までに支払うものとする。その時までに支払わないときは、借地人は、地主から直ちに強制執行を受けても異議がない旨を、認諾したという内容の条項を記載しておきますと、公正証書は、裁判手続を経ないで、確定判決に認められているような執行力という強い効力を与えられ、借地人が地代支払を怠ると、地主は直ちに強制執行手続を開始することができます。
地主が借地を明け渡させるには、正当事由による更新拒絶合意解除契約の解除などによってなすことができます。合意解除は、更新拒絶をするに必要な正当の事由があってもなくても、また期間の途中でも、当事者の合意で賃貸借契約を終了せしめる場合のことです。これに反して、契約の解除は、相手方に契約上の義務違反があった場合に、一方的に契約を終了せしめる行為のことです。したがって、これは単独行為です。そして、解除権は形威権ですから、契約を解除しますという意思表示が相手方に到達しさえすれば、それだけで効力は生じ、両者の間の賃貸借関係は消滅することになります。ですから、解除をするには、解除の理由となる相手方の債務不履行をのべ、解除をする旨の通知をしさえすればよいのですが賃料不払いの場合などでは、解除に先立って、相当の猶予期間を与えて滞納賃料を支払えという催告を必要としています。また催告と契約解除の意思表示を合せて、むこう何日までの間にお支払いがない場合は、改めて催告することなく賃貸借契約を解除致します。というような催告期間内の不履行を停止条件とする契約解除の意思表示でもよいわけです。ただし、地代の滞納が、少なくとも四、五回分以上の長期にわたっていたり、厳しく催告されたら払うがすぐに滞納をくり返すような悪質な滞納のときには、信頼関係が破談されているとみることができますから、催告をしないで即時解除することができます。
ところで、契約解除の意思表示に応じて、借地人が土地を明け渡してくれるとよいのですが、なかなか簡単に応じてくれないのが普通です。この場合は、契約解除の結果、借地権は消滅したことの確認と、建物収去土地明渡しとを請求する訴訟を提起するか、それとも、調停の申立をし、明渡しの調停 調書をもらうかするほかはありません。調停でうまく片づけばそれに越したことはないし、うまくいかないときには訴訟にもちこめばよいのですから、本問のような場合は調停を先にした方がいいでしょう。なお、債務不履行による借地権の消滅の場合は、反対の学説も強いのですが、判例は、建物買取請求権は認められないといっています。

土地
土地を貸すための事前調査/ 土地を借りるときの調査/ 農地を宅地にして借りる/ 借地契約の内容/ 借地契約の特約の効力/ 市販の借地契約書での契約/ 借地契約の保証人/ 契約書のない借地契約/ 借地契約と公正証書/ 社寺の所有地の借地/ 土地管理人との借地契約/ 借地上の建物の利用に関する特約/ 借地契約用途に関する特約/ 罹災借家人の権利/ 区分地上権の設定/ 土地の使用賃借/ 親族間での土地の貸借り/ 地代の値上げと値下げ/ 環境の変化と地代の変更/ 地代支払の相手方/ 借地人の妻の地代支払義務/ 地代の支払方法/ 地主の修繕義務と地代の支払/ 地代の受取証/ 地代滞納に関する特約の効力/ 借地人が地代を滞納した場合の措置/ 催告期間の従過と契約解除/ 建物区分所有と借地権/ 地代の供託/ 借地の権利金/ 造成地の賃借と権利金の前払い/ 借地権の譲渡/ 権利金の取戻し/ 地代の滞納と敷金による充当/ 地主の変更と敷金/ 借地の立退料/ 借地権の登記/ 建物のない借地権の対抗力/ 建物未登記の借地人と新地主/ 新地主と立退料、買取請求/ 借地人のいる土地の購入/ 抵当権付の土地の借地/ 借地権設定後の抵当権設定/ 土地の二重賃貸/ 敷地地番の違った建物登記/ 建物登記による対抗力の及ぶ範囲/ 借地上所有建物の名義人/ 借地の転貸借と借地権の登記/ 借地人が底地を買う場合/

       copyrght(c).土地の買い方ガイド.all rights reserved

スポンサーリンク

プライバシーポリシー