地代の受取証

地主に地代を支払ったので、その受取証をくれるように要求したのですが、地主は、受取証をくれません。この場合はどうしたらよいのでしょうか。
受取証は弁済の受領を証明する書面です。その形式には制限はなく、取引観念上適当なものであればよいのです。受取証には収入印紙を貼用して債権者が消印すべきものとされていてこれに違反すれば罰金または科料に処せられることがあります。しかし、受取証の民事的効力には影響はありません。債権者が、受領のつど作って渡したり、ガスや電気や水道や放送局の料金のように、あらかじめ固有に印刷された様式のものに書いて渡したりします。後者のような場合には、偽の集金人が料金を集めたりする、といった問題が生ずることもあります。この場合は、債務者は真の債権者でない者に弁済することになりますから、法律的には無効な弁済ということになるはずです。しかし、それでは善意の債務者は困りますから、民法四八〇条は、善意、無過失の弁済者にとっては受取証書の持参人は弁済受領の権限あるものと看倣すと規定して、受取証が本物であるかぎり、債務者を保護しています。
民法四八六条は、弁済者は弁済受領者に対して受取証書の交付を請求することを得と規定して、受取証の交付請求権を認めています。そこで問題となるのは、受取証の交付を請求しても相手方が交付してくれない場合に、弁済と引換えにその交付を請求することがでぎるかどうか、つまり弁済と受取証の交付とは同時履行の関係に立つと解すべきかどうかということです。ドイツ民法は同時履行を明言していますが、日本の民法には明文がありません。
正確にいえば、同時履行の関係というのは、売買契約の場合に典型的に現われるように、売主の代金支払と買主の目的物引渡しは、原則として、同時に行なうことが公平の観念に合するというような関係を予想しているのですが、契約の履行上、同時履行の関係は広く認めてしかるべしというのが判例、学説の傾向です。受取証の交付は、双務契約における一方の側の本来の給付そのものではないのですが、その者の一連の給付の一面として、信義則上も、相手方のなす弁済と牽連関係をもたせてもよいわけです。ですから、通説も、また判例も受取証の交付と弁済との間に同時履行の関係を認めています。債権者が受取証の交付を拒絶したときは、債務者は弁済を拒否できますし、その場合は債務者は履行遅滞の責を負うことはないわけです。したがって、本問の場合は、借地人は、他主に 対し、受取証をくれるまでは地代を支払いませんといって、がんばればよいことになります。
問題となるのは、一定の弁済期において地主が受取証をくれなかった場合に、それを理由として、次期の弁済期に弁済を拒む抗弁権があるかどうかということです。そこまでは許されないと解すべきではないかと思われます。同時履行の抗弁権が生ずるのは一箇の双務契約から生じた対立する債務の間の関係においてですが、前の時期の受取証と後の時期の弁済とは対立する債務関係にあるとはいえないからであり、対立するのは、同一時期における弁済とそれに対する受取証であると、解すべきでしょう。

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