地主の修繕義務と地代の支払

土地会社から、同社が造成した宅地を地代1ヵ月10万円で借り、家を建てましたが、先日の台風で、庭先の土止め施設が壊され、その近くに建てた車庫も倒れてしまいました。さっそく地主である土地会社に、その土地を完全に使えるよう復旧工事をすることを要求したのですが、なかなか応じてくれません。復旧工事をするには、100万円以上かかるとのことです。もし、当方で復旧工事をしたら、それに要した費用に見合う地代を払わなくてもよいでしょうか。また、復旧工事をしないままにしておいたときは、地代の支払はどうなるのでしょうか。
賃貸借は双務契約ですから、賃貸人および賃借人はともに債権債務を負担します。賃貸人の中心的な債務は目的物を使用収益させることです。そして、この使用収益させる債務の内容の一つとして、賃貸人は、特約のないかぎり、目的物の使用収益に必要な修繕義務を負うことになります。この修繕義務は、いうまでもなく、借家の場合に作用することが多いのですが、借地の場合でも、変わりはないのです。
修繕を必要とする事情は、賃貸人の責に帰すべき事由によって生ずることを必要としません。天災や不可抗力によって生じた場合でもよいのです。のみならず、通説は、賃借人の責に帰すべき事由によって生じたときでも、修繕義務を生じ、賃貸人は別に賃借人の保管義務違反を理由とする損害賠償請求権を行使すべきであると解しています。
極めて稀ですが、借地権が物権であるところの地上権である場合もあります。土地が地上権の目的となっている場合の修理義務については規定は存在しません。しかし、地主は、地上権者に対し、土地の使用を妨げてはならないという消極的な義務を負いますが、特約のないかぎり、賃貸人のように土地を使用に通する状態にしておくという積極的な義務はなく、したがって、土地の修理義務を負わないと解されています。だからといって地上権者が負うというわけでもないのです。
借地権のことを、世間で俗に、地上権といっている場合もありますが、契約の内容を調べてみると、ほとんど賃貸借契約ですから、契約書でたとえ地上権という語句が使用されていても、借地権は賃借権であることに変わりはないのです。ですから、普通は、借地の場合も借家の場合と同じように、貸主たる地主の方に修理義務があるといってよいわけです。

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土地

第一に借地人は、借地が修理されないために使用ができない割合に応じて、地主が修理をするまで、地代の全部または一部の支払を拒む権利、つまり同時履行の抗弁権を取得します。
第二に、修理義務不履行も服務不履行に変わりはないのですから、借地人は損害賠償を請求することができます。そして、修理すべき旨を催告し、相当の猶予期間がすぎても修理しなかったら、借地契約を解除することができますし、土地の損壊の程度が甚大で借地の目的を達することができないときには、催告しないで直ちに借地契約を解除することができます。そして解除のために生ずる損害賠償も請求することができます。
第三に、借地人が借地の使用ができない割合に応じて地代の減額を請求しうるかどうかについては問題があります。民法六一一条は賃借物の一部が賃借人の過失に困らずして消滅したるときは賃借人は其滅失したる部分の割合に応じて借賃の減額を請求することを得と規定していますが、一部の学説は、この規定を類推して、賃借人は、使用の不完全な割合に応じて地代の減額請求権を取得すると解すべきだと主張します。判例には、当然に減額されるとしているものもありますが、同時履行の抗弁だけを認め、それ以上の積極的な減額請求を認めないかのようにみえるものもあります。多数の学説は、減額請求の規定はないのだから、減額請求はできないとしています。しかし、多数説をとっても、少教説をとっても、結果はそう変わりありません。少数説に従って減額請求権を生ずるとすれば、減額請求権は形威権と解されますから、借地人から地主に対して一方的に減額請求の意思表示が到達した時に減額の効力を生ずることになります。一方多数説によっても、修理義務不履行に基づく損害賠償請求権をもって地代債務と相殺すればよいのですが、相殺もその意思表示が相手方に到着した時に一方的に効力を生じますし、相殺の効果はさらに相殺適状の時に遡りますから、そう不利でないのです。
本問の場合、借地人は、まず、地代を支払わないで、他主たる土地会社から支払えという催促があれば、同時履行の抗弁権を援用し、修理するまでは支払わないといって地代支払を拒否することです。拒否して支払わないでいても債務不履行となるのではありません。
次に、それでもなお相手が復旧工事をしてくれないときには、借地人が自分で費用を出して復旧工事をすれば、借地人は、その工事費の償還請求権を取得しますから、それと、復旧工事が完成するまでに受けた損害による賠償請求権との合計額を自働債権とし、相手方が有する地代請求権を受働債権として、相殺をすればよいのです。相殺は相殺する旨の意思表示をなせばよいのですが、毎月の地代の弁済期に相殺する旨の通知をして10万円ずつ減らしていってもよいし、自働債権の合計額と同額までの地代額、例えば自働債権の合計額が110万円あるとすれば、向う11ヵ月分の地代と相殺するという通知をしてもよいのです。
相殺については、自働債権の弁済期と受働債権の弁済期との関係がいろいろ問題となるのですが、本問の場合は、復旧工事がすめば、相殺時に受働債権のうちには弁済期がまだ到来していないものもあるとはいえ、自働債権の弁済期は到来していますから、まとめて11ヵ月分の地代と相殺することも適法なのです。

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