地代の支払方法

土地を貸していますが、その近くに住んでいた関係で、地代は毎月末に取りにいっていました。しかし転居することにななったため、地代は、そちらへ送ってもらうことにしたいと思います。それにはどうすればよいのでしょうか。
債務者が弁済すべき場所は債権者と債務者との間で自由に決めることができます。しかし、その取決めのない取引も多いのです。そこで、民法四八四条は、特定物の引渡しの場合は債権発生の当時その物が存在した場所とし、その他の弁済の場合は債権者の現時の住所としました。ですから、例えば東京で特定の物品の売買契約が成立した場合にも、売買契約成立の当時その物品が大阪にあったのであれば、別段の意思表示がないかぎり、引渡場所は大阪ということになります。したがって、買主が東京で受け取りたいと思えば、送料を負担するから送ってくれるように承諾を求めるほかはありません。これに反して、特定物の引渡以外の給付を目的とする場合、たとえば金銭債務の弁済の場合は債権者の現時の住所ということになります。そして、債権者の住所で弁済すべき債務を持参債務といいます。遂に、債務者の住所で弁済する債務を取立債務といいます。日本の民法は持参債務の原則を採用したわけです。地代の支払も金銭債務が普通ですから、地主と借他人の間で地主が取りにいくという契約がないかぎり、持参債務、すなわち借地人が地主の家に地代の金銭を持っていくか、確実な方法で送るかしなければならないことになります。

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地代をどれだけの期間ごとに支払うか、例えば、月ぎめにするか、年ぎめにするか、また先払いにするか後払いにするかは、地主と借地人との間の自由な契約によって、決められます。しかし、なんらの取決めも行なわない場合もしばしば生じます。その場合のために、民法六一四条は建物および宅地の賃借については毎月末に支払うべきことを定めています。したがって、何も契約でふれていない場合には地代は月ぎめ、後払いということになります。また、地代を借地人が地主の前に持参すべきか、地主が借地人の所へ取立てにいくべきかという点については、前述のとおり、自由な契約で決めることができますが、特約のない場合は、持参債務ということになります。本問の場合は、地主が月末に取りにいっていたということですから、取立債務とする黙示の合意が地主と借他人との間に成立していたことになります。
債務者にとっては持参債務より取立債務の方が有利であるといえます。したがって、具体的なケースの場合に、持参債務の原則によらずに、取立債務になっているということは、旅権者と旅務者との間に取立債務とすることの明示または黙示の合意が存在するとみなければなりません。したがって、債権者は債務者の同意をえずに、単独でこれを持参債務に切り換えることは、契約違反となりますからできません。ですから、地代債権についての債権者たる地主が、借地人と多少のトラブルがあって感情を害し、債務者たる借他人の家まで取りにいくのは面白くないと思って、来月から自分のところへ持って来いと通告しても、その意思表示は無効です。その場合に、借地人は地主が取りにくるまで地代を支払わないでいたからといって、別に債務不履行になることはありません。
しかし、本問の場合は、地主が遠隔地へ転居する結果、地代を取立てにいくことが、社会常識上、不可能となるのですが、このような場合は、不可能となることがやむをえない事情によってもたらされるのですから、借他人は、信義誠実の原則上持参債務に変更されることを承諾しなければならないと考えられます。したがって、地主は借他人に対して、事情をのべて、送金してもらいたい旨を意思表示すればよいわけです。そして、その意思表示が借地人に到達し、借他人が意思表示の内容を了知すれば、この場合は到達主義でなく了知主義に立つべきものと思われます。この意思表示は効力を生ずるとみるべきです。
一般に、契約費用、例えば、土地建物の売買の時に、目的物の評価、証書の作成などに要する費用は、特約がなければ、契約の両当事者が平分して負担します。しかし、 弁済費用、例えば、運送費、荷造費、登録税、関税、為替料などは、特約がなければ、弁済者すなわち債務者がこれを負担することになっています。判例には、登録税を契約費用と解するものがありますが、これは正当ではありません。
ただし、債権者が住所の移転その他の行為によって弁済の費用が増加したときにはその増加順は債権者がこれを負担することになります。ですから、本問の場合、取立債務から持参債務への変更が効力を生じ、借地人が地代を送金することになれば、為替料などの送金手数料は、地主が負担することになります。借地人は、地代額から送金手数料を差し引いて転居した地主に送金すればよいわけです。
一般に、弁済者は弁済受領者に対して、受取証書の交付を請求することができます。そして、金銭債務の弁済のような場合には、普通は、弁済と受取証書の交付は同時履行の関係に立つと解するのが、判例、通説です。しかし、本問のように、送金しなければならなくなったときには、借地人に同時履行の抗弁権はなく、借地人は先履行義務を負担することになります。借地人が先履行したら、当然に受取証書の交付を請求することができるのですが、地主が逆ってくれない場合もあるでしょう。その場合、借地人はその月の受取証書を送らなければ、翌月の地代を払わないといえるかどうかが問題ですが、これはいえないとみるべきでしょう。なお、受領証書は弁済の証拠となる文書ですが、送金のときには郵便局や銀行の受領書が一応の代わりの証拠として役に立ちますから、これを保存して、弁済の証拠に使用することができます。

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